【おとな向け映画ガイド】ロバート・デ・ニーロはじめ、レジェンド三俳優による爆笑コメディ『カムバック・トゥ・ハリウッド!!』と、難民から五輪へ『戦火のランナー』の2本をご紹介。
イラストレーション:高松啓二
【おとな向け映画ガイド】
ロバート・デ・ニーロはじめ、レジェンド三俳優による爆笑コメディ『カムバック・トゥ・ハリウッド!!』と、難民から五輪へ『戦火のランナー』の2本をご紹介。
ぴあ編集部 坂口英明
21/5/30(日)
https://bit.ly/34r8tDW
春日太一さん(映画史・時代劇研究家)
「……既に確固たる地位を築いたレジェンド級のベテランが過去の名声に胡座をかくことなく、“現役”として奮闘して新たな魅力を見せてくれる姿に出会うのは至極の喜びだ。」
https://bit.ly/3fsfdbh
植草信和さん(フリー編集者、元キネマ旬報編集長)
「……ドタバタ騒動の中に、出資者、製作者、主演者三人三様の屈折した“映画愛”をにじませて映画ファンの心をくすぐる。……」
https://bit.ly/3uxXhzX
高松啓二さん(イラストレーター)
「……メル・ブルックスの『プロデューサーズ』に似ているが、本作の最大のギャグはキャスティングにある。……」
https://bit.ly/3oYkzhn
ひたすら走って、生き延びる
『戦火のランナー』
本来なら、公開はドンピシャのタイミングなのですが、今やビミューな雰囲気です。内戦を生き延び、マラソンランナーとして東京オリンピックを目指している、グオル・マリアルという青年を追ったドキュメンタリー。監督はアメリカのビル・ギャラガーです。
彼の母国は、北アフリカの南スーダン共和国。2011年に、23年に及ぶ内戦を経てスーダンから独立した「世界で最も新しい国」。国はできたものの、2016年には再び紛争が勃発しています。
その紛争に、日本の自衛隊が国連平和維持活動、いわゆるPKOに参加したこともあり、日本では比較的聞いたことのある国でしょう。
想像を絶する半生です。内戦の戦禍を避けるため、両親は8歳のグオル君をたった一人で村から逃がしました。頼る人はいません。途中で武装勢力に捕らえられてしまうのですが、なんとか逃げ延び、難民としてアメリカに渡ります。高校はアメリカ。ここで陸上選手、マラソンランナーとしての天分に気づきます。少年にとって戦場の攻撃から生き延びる手段は“ひたすら走って逃げる”しかなく、彼は皮肉にも辛い戦場でランナーとしての基礎を築いていたのです。
目指すはオリンピック、です。となると気になるのは、兄弟をはじめ多くの犠牲の上で独立した母国のこと。彼がランナーとして活躍をはじめたころ、南スーダンが独立します。
国のために走る…、我々にとっては、今や、やや時代遅れのように感じますが、母国が大変な苦難のうえ誕生したばかりとなれば、その気持ち、わからなくはありません。建国1年後の2012年に行われたロンドン五輪や2016年のリオ五輪で、彼の参加が実現するまでの騒ぎと結末、同郷人たちの応援、映画で語られるすべてがドラマチックです。
が、ドラマはまだ終わりとはなりません。さて、グオル君は東京五輪の舞台に立てる、のでしょうか?
【ぴあ水先案内から】
池上彰さん(ジャーナリスト)
「……「南スーダンの選手たちは東京オリンピックを目指して走り続けます」という最後の字幕を見ると、開催が危ぶまれているだけに涙腺が緩みます。」
https://bit.ly/3wISihF
村山匡一郎さん(映画評論家、大学講師)
「……内戦下で彼は敵側の兵士に捕らえられるが、走って逃げることで生き延びる。その思い出は、マリアル選手にとって、走ることが生きることにつながるまさに象徴といえる。
……」
https://bit.ly/3p1VdiD
堀晃和さん(ライター、エディター)
「……独立後も貧しく紛争が絶えない祖国の環境を少しでも変えようと、走り続けるグオルの姿が胸を打つ。」
https://bit.ly/3p5lhJW
首都圏は、6/5(土) から渋谷 シアター・イメージフォーラムで公開。中部は、6/19(土)から名古屋シネマテークで公開。関西は、6/11(金)からアップリンク京都で公開。