Galileo Galileiワンマンライブ『あおにもどる』レポート 活動休止期間を経て帰ってきた彼らの物語とそこで作られてきた音楽とは
Text:小川智宏Photo:Masato Yokoyama
3月5日にニュー・アルバム『BLUE』をデジタルリリースしたGalileo Galileiが、3月15日、東京ガーデンシアターでワンマンライブ『あおにもどる』を開催した。バンドがこれまで生み出してきた楽曲を再レコーディングし、新曲「あおにもどる」を加える形で制作された『BLUE』は、Galileo Galileiにとって「過去と未来をつなぐ特別なアルバム」。活動休止期間を経て帰ってきた彼らだが、その物語と、そこで作られてきた音楽はつながっていて、今も続いているということを、そのみずみずしい音の手触りは物語っていた。この日のライブでも、尾崎雄貴(vo/g)は「(過去の楽曲を)改めてやったときに『地続きだなあ』って」「『変わってないよね』と言いに来た」とオーディエンスに語りかけていた。さまざまな思いを抱えて活動し一度はその歩みを止めたバンド。そのバンドがこうして再び歩き出した今だからこそ、彼らはこれまで積み重ねてきたものすべてを肯定的に、そして新鮮に見返すことができたのだろう。トータル3時間に及んだこの日のステージからは、とてもフレッシュで、心からバンドで音楽を鳴らすことを楽しんでいるのが伝わってきた。
尾崎雄貴(vo/g)
『BLUE』に収録された楽曲はもちろん、バンドの全キャリアからセレクトされたセットリストで展開したライブは、セカンドアルバム『PORTAL』収録の「スワン」から始まった。
ステージに置かれたランプに明かりが灯り、真ん中に立った雄貴がリズムを刻み出すと、オーディエンスが手拍子を重ねていく。この日のGalileo Galileiは尾崎雄貴、岩井郁人(g)、尾崎和樹(ds)、岡崎真輝(b)の4人に加え、サポートギターにBBHFのメンバーでもあるDAIKI、サックスに大久保淳也というおなじみの面々も参加しての6人編成。メンバーどうしアイコンタクトを交わしながら、ふくよかなサウンドを奏でていく。その中心で、雄貴も飛び跳ねながらテンション高くパフォーマンスを繰り広げる。この日の雄貴は自ら楽器を演奏することはなく、ほぼボーカルに専念。それもあってか、いつも以上に自由にのびのびと歌っているように見えた。続いての「ロンリーボーイ」では、青い花束を手に歌う雄貴。バンドサウンドがはじけ、フロアに広がっていく。
歌い終えた雄貴が持っていた花束を客席に投げ入れると大きな歓声が巻き起こった。そしてストロボが瞬くなか「Jonathan」へ。ソリッドなアンサンブルに乗せて力強い歌が広がり、東京ガーデンシアターに漂う空気もどんどん熱くなっていく。
いつものライブならきっとこのあたりでMCの時間だろう。だが、この日のGalileo Galileiはそうではなかった。雄貴の「ありがとう、Galileo Galileiです。今日はよろしく!」という短い挨拶だけでバンドはすぐに次の曲に入っていく。大久保のサックスが楽曲をリードするように鳴り響くのは「バナナフィッシュの浜辺と黒い虹」だ。
明るいライトがステージと客席を照らし出し、幸福なムードが溢れ出す。岩井は和樹と視線を合わせながらリズムを刻み、雄貴はステップを踏みながらノリノリで歌っている。その楽しげな空気は次の「老人と海」でも同様。〈I love youを見つけた見つけた〉――雄貴の歌う言葉が躍っている。だが、楽しげとはいえ、決してリラックスしているだけではない。6人で鳴らすサウンドは力強さがあり、単に昔を懐かしんでいるような感覚はまったくないのだ。そんな音の感触に、彼らが『BLUE』というアルバムに込めたものが透けて見えるような気がした。
その後もライブはノンストップで進んでいく。
ひときわ大きな歓声が沸いた「サークルゲーム」を経て、岩井のブルージーなギターが冴え渡る「管制塔」では雄貴の「ヘイ!」という声にオーディエンスの手が上がる。岩井とDAIKIがかき鳴らすギターが、この初期の名曲に鮮やかな色を塗り重ねていく。続く「ウェンズデイ」と「ブルース」という4thアルバム『Sea and The Darkness』からの楽曲のコンボでは切れ味鋭いサウンドが会場を揺らし、和樹のパワフルなビートが轟いた「kite」がさらにライブを加速。岩井のギターソロにも歓声が起きた。一転して3rdミニ・アルバム『See More Glass』からの「山賊と渡り鳥のうた」では雄貴が歌う切ないメロディがどこか懐かしさのような感情を伴って響き、「僕から君へ」ではダンサブルなビートが鳴り渡る。Galileo Galileiが生み出してきた楽曲の幅広さを証明するように畳み掛けられる楽曲に、フロアもさまざまなリアクションで応えていった。
岩井郁人(g)
BBHFのナンバーである「ホームラン」を披露すると、ゆったりとしたサウンドとともに「嵐のあとで」へ。だがここで和樹の機材にトラブルが起き、演奏が一時中断してしまった。
その隙を見て岩井は「水飲んでいい?」と一言。それぐらい、メンバー自身も集中して演奏してきたのだろう。雄貴も一息ついて「ものすごい光景が見れて、テンションがぶち上がってます。そうは見えないかもしれないけど」とオーディエンスに話しかける。「そうは見えない」どころか、明らかに今日の彼はテンションが高い。先ほどの「ホームラン」でもフルスイングのジェスチャーを披露するなど、とても開放的な彼のムードが、バンド全体に、そして会場全体に波及しているようだ。ほどなくして機材も復活し、仕切り直しの「嵐のあとで」も、とてもあたたかく染み渡っていった。
岡崎真輝(b)
ここで、岩井がギターを手に雄貴の横へ。
彼の伴奏とともにアコースティックバージョンで演奏されるのは「くそったれども」だ。雄貴は紙を手に、手紙を読むように優しく歌を紡ぐ。この曲に込められた愛がいっそう丁寧に伝わってくるようなパフォーマンスに、オーディエンスもじっくりと聞き入っていた。そのままバンドが加わって「ありがとう、ごめんね」を届けると、ここから再びライブは盛り上がりを見せていく。ネオンサインのようなライトが煌めくなか手拍子が巻き起こった「カンフーボーイ」に続き、アルバム『PORTAL』のとおり、インストナンバー「Blue River Side Alone」から「青い栞」へ。もちろん押しも押されもせぬGalileo Galileiの代表曲だが、この日の「青い栞」はいつも以上に穏やかに、そして丁寧に響いてくるようだった。
尾崎和樹(ds)
「オフィーリア」「汐」という再始動後の楽曲を重ねると、ライブは終盤へ。パッと風景が開けるようなギターの音色とともに「青い血」を届けると、スケールの大きなサウンドが広がる「星を落とす」へ。
オーディエンスの振るペンライトがカラフルな光を放ち、美しい光景を描き出した。岩井やDAIKIのギターも、和樹のドラムも、大久保のサックスも、すべての楽器が力いっぱいに音を鳴らし、怒涛のような迫力を生み出し、ライブはクライマックスへと上り詰めていった。
そして「Sea and The Darkness II」を終え、雄貴が口を開いた。改めて挨拶をすると、「もし自分たちで2枚組をまた出すとしたらどうする?って考えて組んだセットリストになっていて。これっきゃないっしょって」とこのライブに込めた思いを語り始める。「(『あおにもどる』というのは)昔を懐かしむとかそういった意味ではなくて。改めてやったときに『地続きだなあ』って思ったんです。変わらなかったんですよね」。時間を重ねてきても変わらないまま続いてきたものを再確認する。Galileo Galileiにとって『BLUE』というアルバム、そしてこの「あおにもどる」というライブはそういうものだったのかもしれない。そして、そんな思いを込めて、バンドは『BLUE』に収められた新曲「あおにもどる」を鳴らし始めた。自分たちの歩みを振り返った先で、ステージ上で鳴らされる音がとても自由に躍動する。過去ではなくバンドの未来を照らすようなこの曲とともに、ライブ本編は幕を下ろした。
アンコールではアッパーなビートが華やかに広がる「SPIN!」を皮切りに、軽やかに「あそぼ」へ。再びの機材トラブルによる中断もありながら、ライブはまだまだ続いていった。オーディエンスも巻き込んで、本編以上に開放的に鳴らされていくサウンドは、Galileo Galileiの音楽とバンドへの愛そのものだ。「恋の寿命」を経て、雄貴の「一緒に『あおにもどりながら』進んでいくことができると思ってます。ついてきてくれたらうれしいです」という言葉とともに最後の曲「稚内」へ。故郷を思いながら〈パレード〉は続いていくと歌う雄貴のタンバリンに合わせて手拍子が広がる。最後までハッピーなムードを漂わせながら、「あおにもどる」はフィナーレを迎えたのだった。ライブ中には『アオのハコ』の原作展「アオのハコ展」に書き下ろした楽曲「とりあえず今は」を4月9日(水)にリリースすること、そして11月から大阪、東京、福岡を巡る『Galileo Galilei "TRITRAL TOUR"』を開催することが発表された。『BLUE』を経て進み続けていくGalileo Galileiの今後が楽しみだ。
<公演情報>
Galileo Galilei『あおにもどる』
3月15日 東京ガーデンシアター