【福山雅治 インタビュー】“記録”ではなく“美しき記憶”へ――故郷・長崎での奇跡の一夜を映像化した、ライブフィルム『月光』の舞台裏を語る
Photo:板橋淳一
Text:川上きくえPhoto:板橋淳一
月に見守られた一夜の出来事が、ひとつの映画になる。
2024年10月、長崎スタジアムシティのこけら落としとして開催された福山雅治のフリーライブ『Great Freedom』。故郷・長崎で、チケットという境界線を越え、街全体と音楽が呼応したライブが、福山雅治の監督によって映画化された。本作『FUKUYAMA MASAHARU LIVE FILM@NAGASAKI月光 ずっとこの光につながっていたんだ』には、感動の渦だらけとなったライブの模様だけじゃなく、福山自身が少年時代に感じたエンターテインメントの衝撃、自由への渇望、そして時代の変化を正面から受けてきた長崎への想いが綴られている。福山の脳内にある“理想のライブサウンド”“理想のライブ映像”を追求し、記録ではなく“美しき記憶”として再構築された今作はこれからのライブフィルムの在るべき形を象徴しているように思う。
── 故郷・長崎で、広大な野外会場にて、チケット制ではなくフリーライブとして行われた『Great Freedom』。このライブは、どのような想いから生まれたのでしょうか。
このライブは、フリーライブとして開催できたことが何より大きかったですね。
1980年代、僕が中学生の頃、長崎の街に『ザ・ベストテン』の生中継がやってきたことがありました。有料ではなく、当選すれば会場でステージを観られるというものでした。
思春期だった僕は、それまで自分の街をどこか「つまらない」と感じていた。ところが、『ザ・ベストテン』がやってくるというだけで街が一気に盛り上がり、熱量が高まっていった。エンターテインメントの力で街がこんなにも変わるのかと、強烈な衝撃を受けたんです。
今回、新しくできたスタジアムシティのこけら落としライブのお話をいただいたとき、「可能であればフリーライブにしたい」と提案させていただきました。
── 音楽番組の生中継と同じように、エンターテインメントの力で街を動かしてみたい、と。
はい。
中学生の頃に見たあの景色を起点に、同じように街全体が高揚する瞬間をつくりたいと思いました。行政を含め、多くの方が賛同してくださり、フリーライブとして実現できました。
── その瞬間をDVDなどのソフトではなく、映画にしようと決めたのはなぜですか?
以前、武道館公演のライブフィルムを制作していて、今回は2作目です。
正直、武道館公演のときはあまり乗り気ではなかったんです。「ライブフィルムって、どれくらい需要があるんだろう?」と。
でも制作してみて気づきました。ライブフィルムの本質は、単なる記録や、ライブをそのままパッケージすることではなく、自分の頭の中にある理想を映像化・音源化することなんだと。
「こういうサウンドで届けたい」「こう見えてほしい」「こういう演出がオーディエンスに届くといいな」——その理想を再構築できる。
現場で撮れたものは素材でしかない。それを元に、「映画」という作品へと昇華させ、映画館という空間で体験してもらう。それが僕にとってのライブフィルムです。
── 確かに、映画ならではの“空間”と“音”にこだわった作りだと感じました。
今回でいうと、音のこだわりは、ドルビーアトモス(※三次元的で臨場感あふれる音響空間をつくる立体音響技術)ですね。自分がいかに「現実には存在しない臨場感」を表現できるか。
ライブの会場では、座る位置によって音の聴こえ方が全く違います。でも映画では、僕の頭の中にある“理想の聴こえ方”をシステムを使って立体的に再現できる。
楽器の音やファンの皆さんの歓声を多方向から配置して、“音の海の中にいる”ような、自分がどこにいるのか一瞬わからなくなるような空間を作ることに非常にこだわりました。
── 映像には長崎の街並みも挟み込まれています。映像を通して、長崎のどんな魅力を届けたいと考えていましたか?
ライブタイトル『Great Freedom』にも通じますが、僕は13歳でギターと出会い、思春期の閉塞感や苛立ちから解放されるような精神的な自由を感じました。そして大人になり、NHK大河ドラマ『龍馬伝』で坂本龍馬さんを演じた際に学んだのは、長崎が西洋の“自由”という概念が日本に流入した場所だったということ。
自分が感じた自分自身の精神の自由と、長崎が体現してきた歴史的な自由。それを重ね合わせられたらと思いました。時代の変化を受け止め続けてきた長崎の街のエネルギーが伝わればうれしいです。
── 映画のタイトル『月光 ずっとこの光につながっていたんだ』は、どのような発想から誕生した言葉なのでしょうか?
ライブ当日、とても美しい月が出ていたんです。
月が出ていなかったことを考えると、どうなっていたんだろうなって思うぐらい、あの日のライブの演出において重要なポジションを占めていたんですよね。
野外ライブの魅力はマジックアワーという時間だと言われますが、日中の時間からライブが始まり、夕暮れに空が染まり、やがて月が昇る。あの天空の変化は人力ではつくれない。なので、映画として詩的なタイトルを付けたいと思いました。『Great Freedom』というライブのテーマ自体は概念だとすれば、『月光〜』は物語の詩的表現だと思います。自分にとっての自由とは何か、どこから来たのかと自問自答する中で、自分の精神の自由が、あの日の月の光、月光に導かれていたかのように、つい「思っちゃった」っていう(笑)。
そうした詩的な感情に身を委ねられるのも、エンターテインメントの醍醐味ですよね。あの日のあの月明かりに導かれるように、これまでのことすべては繋がっていたんじゃないか、というような詩的な感じ方がこのタイトルになっていきました。
── はい、老若男女さまざまの胸に同じように響く音楽、それぞれ別の場所で同じライブ配信を見ている人、福山さんの子供時代と現在……など、あの月の光の下にたくさんの繋がりがあるのを感じました。ボーナストラックとしてスタジオ弾き語りの「Moon」を追加したのはどんな意図から?
ライブから公開まで1年以上経っているので、その間に感じた“現在地”を表現したかったんです。あのとき感じた即時性のあるものだけじゃなく、制作期間のこの1年の間で感じたこと、つまり公開に向けての一番近い“現在地”を音楽と映像で表現したいなと思いました。
「Moon」は僕の過去曲ですが、どんなに遠く離れていても同じ月を見ている、離れている君を想いながら月を見ているということを歌っていますが、「ああ、昔から同じ感覚でいたんだな」と、改めて、自分は昔から同じ感覚で歌っていたんだと再確認しました。
2024年に開催されたライブなので、最後にもうちょっとフレッシュなものを表現できたらなと思い、去年の11月後半の編集の終盤、ほぼギリギリのタイミングで一発録りしました。ボーナストラックで弾き語りをすることで、本でいう“あとがき”のような、読後感を残せたらうれしいです。
<作品情報>
『FUKUYAMA MASAHARU LIVE FILM@NAGASAKI月光 ずっとこの光につながっていたんだ』
2026年2月6日(金) 公開
予告編
映画公式サイト
https://www.fukuyamamasaharu-livefilm.com/gekko/
<公演情報>
全国アリーナツアー『WE’RE BROS. TOUR 2026 龍、雷乃発声』
※終了分は割愛
<前半公演>
2月28日(土)・3月1日(日) 広島・広島グリーンアリーナ
3月7日(土)・ 8日(日) 福岡・マリンメッセ福岡A館
3月14日(土)・15日(日) 宮城・宮城セキスイハイムスーパーアリーナ
4月11日(土)・12日(日) 新潟・朱鷺メッセ・新潟コンベンションセンター
<後半公演>
4月24日(金)・25日(土) 東京・日本武道館
5月9日(土)・10日(日) 徳島・アスティとくしま
5月16日(土)・17日(日) 三重・三重県営サンアリーナ
5月30日(土)・31日(日) 青森・青森 盛運輸アリーナ(青森県営スケート場)
6月6日(土)・7日(日) 北海道・真駒内セキスイハイムアイスアリーナ
6月13日(土)・14日(日) 東京・日本武道館
6月27日(土)・28日(日) 香川・あなぶきアリーナ香川
【チケット情報】
全席指定:12,500円(税込)
ステージサイド席:11,500円(税込)
https://w.pia.jp/t/fukuyamamasaharu-wbt2026/(https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2563621&afid=P66)
ツアー特設サイト
https://sp.fukuyamamasaharu.com/sp/tour2026/
福山雅治 公式サイト
https://www.fukuyamamasaharu.com