パーカーズ「あなたのナンバーワンになれますように!」 キラッキラなエネルギーで埋め尽くされたツアー初日をレポート
Text:高橋美穂Photo:若奈
7月10日に1stフルアルバム『POP STAR』をリリースしたパーカーズが、ワンマンツアー『POPS日本代表 VICTORY TOUR』を開催。今回は、その初日である8月3日の仙台enn 3rd公演のレポートをお届けする。
夏、真っ盛りの8月3日に『POPS日本代表 VICTORY TOUR』をスタートしたパーカーズ。記念すべき初日である仙台enn 3rdには、パーカーズのタオルやTシャツ、ラバーバンドを身にまとったアツいファンが集結した。パーカーズも1stフルアルバムをリリースしたばかりのフレッシュなバンドだが、ファンも負けないくらいフレッシュ。ソールドアウトした会場は、開演前からキラッキラなエネルギーで埋め尽くされていた。
客電が落ちると、ミラーボールが回る中、聞こえてきたのはメンバー自らによる注意事項のアナウンス。大事な注意事項の中に気の利いた言い回しを交えていて、オーディエンスも笑顔に。
「パーカーズと、ここにいるみんなで作り上げるワンマンライブ。みんなで最高の日にしましょう!みんな準備はいいですか!?」という呼びかけにも、オーディエンスは「イエ―!」とレスポンス。早くも、息の合った関係性が伝わってきた。
ハンドクラップに迎えられて、豊田賢一郎 (g/vo)、ねたろ (g/cho)、ナオキ (g)、フカツ (ds)、そしてサポートベーシストのたくおが登場。とにかくメンバーがニッコニコで、オーディエンスもニッコニコ。「勝ち負けのない平和な世界が好き」と言って始まった「あいこでしょ」が象徴しているように、終始ピースフルな雰囲気だった。
「Love is over」は「イエ―!」「フゥー!」と盛り上がり、「怪獣万歳!」では手の波が揺れ、パーティームードも全開。それが最高潮に達したのが「中華で満腹」。
中華料理のコール&レスポンスに加え、ナオキがオーディエンスに仙台名物を問いかけて返ってきた答えだった“ずんだ”のコール&レスポンスも巻き起こる。オーディエンスはタオルも回し、ステージもフロアも一体となって楽しんだ。
仙台のご当地的な和やかなやり取りは、MCでも登場。中でもねたろは、自身の先祖が仙台藩主・伊達政宗の家臣であることを明かし、フロアを大いに沸かせていた。
しかし、パーカーズの魅力は、ピースフルなパーティーバンドという枠には収まらない。その根っこにあるのは、シリアスなメッセージであることが、様々な楽曲やパフォーマンスには表れていた。
ねたろとナオキがイントロからお立ち台に立ってフロアを見渡した「おねがい神様」。そして、豊田がハンドマイクを持って動き回り「後ろまで見えてるよ」と呼び掛けた「SMASH」。
様々なバンドのライブでよく聞く言葉だが、パーカーズの場合、その言葉を本当に信じられるくらい、一人ひとりをよく見ているのが分かるのだ。実際に豊田が「顔を覚えて帰ろうと思って」と、じーっとフロアを見つめる一幕もあった。だからこそ「ナンバーワン」の演奏前に言った「あなたのナンバーワンになれますように!」という願いも真摯に響く。きっとオーディエンスにも伝わったんだろう。フロアには、たくさんの人差し指の“1”と「ありがとう」の声があふれた。
さらに「少年少女よ」の前に豊田が「あなたに歌ってるよ!」と叫んだときも、“あなた”は“私”だ、とドキッとしたほどだった。正直、何年も前に少年少女と呼ばれる時期を終えてしまった筆者でさえ、だ。そして豊田が「どこまでもついてきてください!」と叫んだ「地獄ランデブー」。
このピュアで猪突猛進な姿勢は、これからますます、たくさんの人たちに届いていくに違いないと確信できた。
そう、バンドは一曲一曲を隙間なく畳みかけていき、オーディエンスも楽曲を把握しピッタリとついていく様子は、まさにフレッシュそのものである。さらに、ねたろ&ナオキ&フカツによるグッズ紹介も、オーディエンスから「かわいい~」コールが連発する様子に、バンドもオーディエンスもみんなかわいいわ!とオカン目線で思ってしまうほどだった。一方で、もっと幅広い趣向や年齢層のリスナーを惹きつける可能性も感じたライブでもあった。その大きな理由のひとつが演奏だ。
パーカーズは“POPS日本代表”を掲げており、実際に楽曲のみならずキャラクターもポップそのものと言えるのだけれど、演奏はギターバンド然としていて、グルービー。歌やメロディだけに頼らず、アレンジでも魅せる気概を感じたのだ。
ナオキのギターソロが鳴り響いた「BERRY」。
イントロのギターから飛び跳ねずにはいられない「痛いの飛んでゆけ」。スローになるフレーズから渋さがにじみ出る「こんな夏がいい」。オーディエンスのハンドクラップも含めて、そのときならではのテンポ感で進んでいくような「君が好き」。起伏に富んだ展開は、様々なライブを観てきた大人も夢中にさせるトキメキがちりばめられていた。
バンドならでは、ライブならではの魅せ方に、豊田の「『VICTORY TOUR』の仙台公演は、今日しかありません」というMCを重ねた。“今、ここ”にしかないものを、MCなどのコミュニケーションだけではなく、演奏でも表現している。その、昔ながらとも言えるスタイルに、今こういったバンドが10代や20代に支持されていることがうれしくなったし、2024年のライブシーンにおける希望だと思えた。
そして、やはりその中心にいる豊田の歌心にも注目せずにはいられない。
特に、弾き語りからバンドになだれ込んでいく「ララバイ」の熱唱には、涙腺にトドメを刺された。ひと言ひと言、歌詞を手渡すように歌うような誠実さに、このバンドを背負う器を感じた。
「出会ってくれてありがとう」と感謝した「運命の人」では大きなシンガロングが響き、「ハッピーをちょうだい」では温かなハンドクラップに包まれた。一人ひとりのオーディエンスとギュッと握手するような体温を感じる繋がりのままで、名実ともに“POPS日本代表”になって欲しい......そんな願いを抱かずにはいられないライブだった。ぜひ、パーカーズが階段をかけのぼる瞬間を目撃してほしい。
パーカーズ『POPS日本代表 VICTORY TOUR』
8月3日(土)仙台enn 3rd