『フォールアウト』ジョナサン・ノーランが語る最も重要なこだわり 「カメラで撮ることでしか生まれないリアリティがある」
(C)Amazon MGM Studios
世界的な人気を誇るRPGゲームを実写化したPrime Videoのオリジナルドラマ『フォールアウト』は、その圧倒的なクオリティと原作愛に満ちた世界観で、配信開始直後から大きな話題を呼んだ。核戦争から200年後の荒廃した世界を背景に、アイロニカルな笑いと鮮烈なバイオレンスを描き出す本作は、世界中で1億人以上が視聴するなど、ドラマ界に新たな金字塔を打ち立てている。
昨年末、待望のシーズン2始動を前に、製作総指揮のジョナサン・ノーランがプロモーションのため来日。兄クリストファー・ノーランと共に培った「実写(プラクティカル)」へのこだわりや、黒澤明やセルジオ・レオーネに連なる映像表現、そして新キャストであるマコーレー・カルキン起用の背景まで、縦横無尽に語ってもらった。SFファンを自認する彼が、過酷な終末世界に託した真意とは。
『フォールアウト』シーズン2 OFFICIAL本予告
『フォールアウト』本予告動画
ノーラン兄弟にとって“プラクティカル”であることが最重要
――ゲームもバイオレントだそうですが、それに負けず劣らず過激な暴力描写の連続だと思いました。あなたがクリエーターのドラマシリーズ『ウェストワールド』(2016~22)も暴力度の高さでいうと負けていません。そういう部分はあなたの特徴ととらえていいのでしょうか。
ノーランやあ……最初に言っておくと、僕はどちらかというと『インターステラー』(14)タイプなんだよ。実は怖いのはダメな方なんだけどさ(笑)……暴力描写に関して言えば『フォールアウト』のゲーム自体がかなり過激で、それを映像化するならば暴力はマストだったというのがある。そもそもゲームの多くは暴力的だしね。
『ウエストワールド』のときは、あるレベルの暴力表現が必要だったからなんだ。そういう暴力を映像にする場合は誇張され、様式化された、いわばオペラチックなスタイルになる。『フォールアウト』の場合はクロサワ(黒澤明)だったり(セルジオ・)レオーネだったり(クエンティン・)タランティーノだったりという感じだろうか。
とりわけ、重なるのはレオーネの『続 夕陽のガンマン』(66)だろうね。というのも、その作品にはタイトル(英語タイトルは『The Good,the Bad and the Ugly』)どおり“善玉”“悪玉”“卑怯者”の3人が登場していて、それと同じようにこのドラマも3人の主人公がストーリーを引っ張っている。
果たして誰が“善玉”なのか、考える楽しみもあるだろ?俳優たちも、そういうグラデーションを見事に演じてくれていて、人間としての本質が伝わってくるようになっていると自負しているんだ。
そうそう、『夕陽のガンマン』シリーズのようなイタリア製作の西部劇のこと、アメリカでは「スパゲティウェスタン」と呼ぶんだけど、日本では「マカロニウェスタン」なんだって?この呼び方の方が絶対かっこいいよ(笑)。
――その『インターステラー』の監督でありあなたの実兄のクリストファーは、極力CGを使わないことで知られています。『フォールアウト』も実際にロケし、実際にパワーアーマーを作り、さらにクリーチャーも作っていますよね。これはノーラン兄弟の共通点なのでしょうか?
ノーラン僕の幼い頃の映画の記憶といえば、ストーリーや役者というよりSFXのショットだったりしていたんだ。そういう趣向だったせいか、僕と兄のクリスは幼い頃から、地下室でおもちゃを使ってストップモーションアニメーションを撮ったりしていた。当時からプラクティカル(実際に使える)であるということは、僕たちにとって映画を撮る上での最重要な要素だったんだ。それは今でも変わってない。
僕たちふたりとも、可能な限りプラクティカルでありたいというアプローチは変わってないんだ。
もちろん、それには世代的なものもあるとは思っている。僕たちは実際に触れられるものを大切にしてきたけれど、次世代はまた違った価値観になっているかもしれないからね。
『フォールアウト』シリーズでは、実際にアーマーを作ったり、ユタ州やナミビアの砂漠でロケをしたりした。デジタルで済ませるのではなく、ちゃんとカメラを使って撮りたい。そうやって、自分が創造している世界のリアリティを作り込んでいきたい。それが映画を撮る醍醐味だと、僕は考えているんだ。
残忍なキャラクターにマコーレー・カルキンを起用した理由
――ファーストシーズンの終わりに、主人公のひとり、グール(放射能を浴びて変異した人間)のクーパーのかつての主演映画の巨大なビルボードが出てきます。
そのタイトルは『A Man and His Dog』となっていて、ハーラン・エリソンの終末SF小説『少年と犬(A Boy and His Dog』)』をもじっているのではと思ったんですが。
ノーランまさにそうだよ。ただ、そういうふうな遊びを入れたのは僕ではなくショーランナーのふたり(グレアム・ワグナー&ジェニーヴァ・ロバートソン=ドウォレット)なんだけど、僕もSFは大好きだから大賛成だった。エリソンの小説の影響も多少はあると思うね。
――自分のことを『インターステラー』派というくらいだから、やっぱりSFファンなんですね?
ノーランうん。リアルワールドを映像化することにまったく興味がないくらいで(笑)。しかもジャンル映画にしか興味ないってことも自覚している。好きなSF映画はやっぱり(スタンリー・)キューブリックの『2001年宇宙の旅』(68)だね。
小説でいうならイアン・M・バンクスのファンで、彼の『The Culture』というSFシリーズが大好きなんだ。このシリーズは銀河系にあるユートピア的な社会、“カルチャー”を描くシリーズで、SFは何になりえるかという題材としてはとても興味深い。ちなみに次回作は、既成の小説などではなくオリジナルのストーリーを使いたいと思っている……今の映画界の状況でオリジナルというのは難しいけれどね。
――先日始まったセカンドシーズンにマコーレー・カルキンが出演していて驚きました。彼が演じるのは過激かつ残忍な勢力、リージョンの一員です。彼をこの役で起用した理由を教えて下さい。
ノーラン『フォールアウト』のゲームの特徴のひとつに“コミックヴァイオレンス”というのがある。その表現を担っているキャラクターがリージョンのメンバーで、マコーレーにその中のひとりを演じてもらうのは最高に面白いんじゃないかと思ったんだ。
で、声をかけてみたら、彼はこのドラマシリーズのファンだったからスムーズに運んだんだよ。
言うまでもなく、マコーレーは『ホーム・アローン』シリーズの2本(90~92)で知られる俳優だけど、この映画、コミックヴァイオレンスをすでにやっていただろ?クリスマスのファミリームービーという位置づけのわりにはかなり暴力的だったと思わない?だから僕たちは、そういうトーンの先駆者的存在の映画の主人公を起用したことになるよね(笑)。
――最後の質問です。ゲームをプレイしていなくても十分楽しめるシリーズになっています。映像化するとき、絶対に死守しようと決めた要素はなんでしょうか?
ノーラントーンだよ。僕たちは、まずはゲームがもっているユニークなトーンを死守しなきゃいけないと決めるところから始めたんだ。それが今の世界情勢と合致していたのは皮肉でもあり幸運でもあった。本シリーズの終末後の世界のコメディ的な視点が、今のぐちゃぐちゃの世界情勢に驚くほど通じていたんだ。
終わってしまった文化や文明、風習をあたかも検視官が検分しているような側面ももったドラマシリーズだから、社会や宗教、企業や政治に対する批判的な視点を持つことができたんだと思っている。
取材・文:渡辺麻紀
<作品情報>
『フォールアウト』シーズン2
Prime Video にて独占配信中
作品ページ:
https://www.amazon.co.jp/dp/B0FLTBHVRS
https://www.aboutamazon.jp/news/entertainment/fallout-season-2-on-prime-video-only
(C)Amazon MGM Studios