2021年8月27日 12:00
みんな誰かとつながっている―劇団四季『はじまりの樹の神話~こそあどの森の物語~』観劇レポート
幕が上がると、その大きな樹が中央に立ち、やがて大地の鼓動のような打楽器の音が響いて、巫女を中心に、大昔の人々が聖なる樹に祈りを捧げるように歌い踊る。松島勇気の振付は、力強く迫力満点だ。そしてひとりの少女が、樹に棲みついたリュウの怒りを鎮めるため、いけにえとして樹に縛りつけられた。
演出の山下純輝は、神話と現実が融合したような古代の世界を、大樹の装置を左右に分けたり、また合わせたりしてテンポよく見せていく。作品のテーマである“つながること”を意識し、樹やリュウもいくつかのパーツをつなげることで造形した喜多川知己のデザインも、うまく生かされている。舞台美術は、間口の広さが各会場で異なる全国公演でも使用できるように、工夫が施されているという。
ひとりから「フタリ」へ。みんな誰かとつながっている
場面は一転、現代の“こそあどの森”に暮らす少年スキッパー(Wキャスト 権頭雄太朗 / 寺元健一郎)の家。
ひとりで本を読むことが好きな彼は、森の住人たちが誘いに来ても家に閉じこもってばかりいる。そこへ、光る尻尾を持ったホタルギツネ(Wキャスト斎藤洋一郎 / 田中宣宗)が現われた。この不思議なキツネは人間の言葉を話すのだが、なぜか関西弁。