【ライブレポート】ルサンチマン、無限の伸びしろを感じさせるFEVERでの2ndシングルリリースライブ
Photo:Ryohey
東京発のオルタナティブ・ロックバンド、ルサンチマンが3月28日(月)、東京・LIVE HOUSE FEVERでワンマンライブを開催した。
2ndシングル『ギターを弾け 拙いコードで』のリリースライブとして行われたこの日のライブで彼らは、ギターロックの最新型と称すべき音楽性、そして、鬱屈とした思いを解き放つような歌を大音量で響かせた。
ルサンチマンは、2018年に結成。メンバーチェンジを経て、現在は北(Vo,G)、クーラーNAKANO(G)、清水(B)、もぎ(Ds)で活動している。
2019年に『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2019』に出演、翌年2020年10月にデモ音源「風穴あける」を発表。2021年3月にリリースした1stミニアルバム『memento』で10代のロックファンを中心に注目度を高めた。
クーラーNAKANO(G)
19時10分を過ぎた頃、会場が暗転。まずはクーラーNAKANOがステージに上がり、鋭利なギターをかき鳴らす。
さらに北、清水、もぎが登場し、凄みと気合いが入りまくった音を重ねると、フロアを埋めた観客(チケットはソールドアウト)が身体を揺らす。1曲目は「心配事」。直接的なビート、ラウドにして鋭いアンサンブルとともに、北が《辛くてたまらないなら 朝まで泣いてていいよ》というフレーズを叫ぶ。
そのまま音を止めることなく、「大団円」「アンチドベル」とアッパーチューンを続けざまに放ち、オーディンスが拳を上げて応える。マスク着用、声出し禁止といったルールを守りながらも、会場に熱気は一気に上がっていく。
北(Vo,G)
インストナンバー「not wrong」もインパクト十分。緻密なアレンジメントをハードコアパンクのような勢いで演奏する姿を目の当たりにして、心のなかで「おお、かっこいい」と呟いてしまった。
「ルサンチマンです。
……人、いっぱいいるな。いつも通り、がんばります」(北)という挨拶はあったものの、MCはほとんどなく、“言いたいこと、やりたいことはすべて曲に注ぎ込んだ”と言わんばかりに、とにかく曲をやりまくる。
清水(B)
爆音のなかに一瞬の静寂が訪れるような構成の楽曲が多いのだが、しっかりと歌詞が聴こえ、一つ一つの言葉が心に突き刺さってくる。たとえば、ニューシングルの収録曲「不信心」の《いつか僕を苦しめたあいつはさ、今じゃ出世街道を走ってて 「良いさ僕には僕の曲がある」って大切なあの子どこ行ったの?》という歌い出し。このフレーズだけで、主人公の“僕”が置かれている状況、どうしようもない感情が真っ直ぐに伝わり、胸を締め付けられるのだ。
個人的にもっとも心に残ったのは、やはりニューシングルの「収束する未明」。
おそらくコロナ禍を背景にしたこの曲は、“大切な物が減っていく”社会の現状や、離れていこうとする“君”の思いを綴っている。きわめてパーソナルな内容だが、この歌にはまちがいなく、聴く者の共感を呼び起こし、感情を揺さぶる力がある。
そのことをもっとも感じられるのは言うまでもなく、ライブという場所だ。
ここで強調しておきたいのは、ルサンチマンのライブは決して暗くもなければ、切なくもない。楽曲の中心にあるのは、葛藤や不満、憤りだが、それを生々しいバンドサウンドと歌によって解き放ち、圧倒的なカタルシスに結びつけているのだ。それこそがルサンチマンの真骨頂であり、急激に注目度を高めている理由なのだと思う。
実際、ステージにいる4人はずっと楽しそうで、無邪気に音を鳴らしまくっていた。この自然な姿もまた、このバンドの魅力なのだろう。
もぎ(Ds)
「卒業」を演奏した後(彼らは去年の春に高校を卒業したばかり)、「高校のときの思い出ってある?」(北)と話を振られたNAKANOが、「体育祭のリレー選手に選ばれて、他のクラスの陽キャのヤツらをゴボウ抜きにして優勝したんだけど、その後、好きな女の子にみんなの前で告白した」と語り、なぜか微妙な空気に。直後に「いやいやいやいや!」と北が叫び、ニューシングル収録曲の「いやいやいやいや!」からライブは突然、クライマックスに突入。
90年代のオルタナティブ直系のライブアンセム「荻窪」、“バイトがイヤだ”という思いを炸裂させた「ラル」で本編は終了。
鳴り止まない手拍子に導かれて再びステージに登場した4人。北が「去年の同じ時期に自主企画をここでやったんだけど、あのときより倍くらいの人が来てくれて。本当にいい景色です」と語ると、観客からこの日、いちばん大きな拍手が起きた。
上手くはいかない日々のなかで、それでも笑おうとする“君”への思いを込めた「たとえ下手でも」、《君の生きる理由はなんですかね》《僕の苦労は所詮ゴミなんですかね》というフレーズを刻んだ「ニヒリズム」などを演奏、ライブはエンディングを迎えた。
ギターロック、オルタナ、ポストロック、マスロック、フォークなどを自在に取り込み、エモーショナルなバンドサウンドに導く音楽性、そして、日々の生活の中で生まれる喜怒哀楽を増幅させながら、最後は解放的な気分に結びつけるパフォーマンス。ルサンチマンの良さが凝縮された、濃密なライブだった。まだまだ粗削りだし、伸びしろは無限にある。
だからこそ、「この時期にライブを観られてよかった」と心から思った。
Text:森朋之Photo:Ryohey
<公演情報>
ルサンチマン ワンマンライブ
3月28日(月) 東京・LIVE HOUSE FEVER