【ライブレポート】スペシャルゲストも登場したimase 1st Live『POP OVER』(追加公演)
Photo:Viola Kam (V’z Twinkle)
imaseの「1st Live『POP OVER』」追加公演が5月10日(水)、恵比寿LIQUIDROOMで行われた。国内2度目の有観客ライブでimaseは、リラックスした雰囲気のなか、アーティストとしてのポテンシャルと新たな音楽的な広がりをたっぷりと体現してみせた。
開演20分前に会場に入ると、フロアはすでに観客で埋め尽くされていた。中心は10代後半~20代前半。グッズのタオルを持って写真を撮っている高校生もいて、楽しそうなムードが広がっている。国内2度目の有観客ライブでLIQUIDROOMがソールドアウト。素直にすごい。
ライブのオープニングは、バンドメンバー(松本ジュン/Key・Manipulator、モリシー(Awesome City Club )/ Gt、林あぐり/Ba、BOBO/Ds)によるセッション。
軽快なバンドサウンドが鳴り響くなか、パーカー姿で登場したimaseはステージ中央に置かれたお立ち台に立ち、1曲目の「アナログライフ」へ。「LIQUIDROOM、よろしく!」と笑顔で語り掛けると、フロアから歓喜の声が上がった。さらにファルセット・ボイスが心地よくグルーヴする「あべこべ」、ラップを交えたボーカル、しなやかなファンクネスをたたえたバンドサウンドによって観客が体を揺らした「ピリオド」を披露。オーディエンスとの心の距離を縮めていく。
3月30日に渋谷WWWで行われた初の有観客ライブに比べると、imase自身が“生のライブ”を自然に楽しんでいることが伝わってきた。前回のライブは“ネット出身のimaseが、画面からひょっこり飛び出してやってくるというようなイメージ”というコンセプトがあったのだが、この日のライブではおそらく、そんな意図や狙いはなかったのではないだろうか。観客の前で音楽を奏でることの楽しさと喜びを体験したimase自身が、“音楽を介して、いい時間を作りたい”という思いだけを持ってステージに立ってるーーそんな雰囲気をはっきりと感じ取ることができた。
「「『POP OVER』へようこそ!WWWのときにきてくだった方、ご無沙汰してます。
初めて僕のライブに来てくれた人は?お、たくさんいる!」「みんなと楽しい時間を作っていきたいと思うので、よろしくお願いします」というMCのあとは、季節外れのクリスマスソング「Holy Light」。さらにステージにベンチを置き、ゆったりしたムードで「でもね、たまには」を歌い上げる。緊張はまったく感じられず、オーディエンスとリラックスして会話する姿も印象に残った。
ライブ中盤では、WWWでも披露された“ショート曲メドレー”。「N1ght」「ノスタルジー」から「ナツイアツ」「Repeat」まで15曲をノンストップでつなぐメドレーは、SNSに楽曲を投稿するところからはじまった彼のキャリアを追体験できると同時に、音楽的な幅広さ、バラエティの豊かさを改めて証明していた。ほとんどが30秒前後なのだが、1曲1曲が個性的でーーローファイ系ヒップホップ、オルタナR&Bからギターロックまでーー一瞬で記憶に残るキャッチ―なフレーズがある。
音楽活動をはじめてわずか1年でSNSで楽曲をバズらせ、メジャーデビューを果たしたimase。メロディメイクや言葉選びのバランス感覚、ファルセットを活かしたボーカルスタイルを含めて、やはり彼には天賦のセンスがあるようだ。
さらに特筆すべきは、幅広いリスナーの日常にフィットする親しみやすさ。大げさな仕掛けやギミックに頼らず、“気が付いたら、すぐそばで鳴っていた”というリスナー・フレンドリーな楽曲を作れることもimaseの魅力であり、だからこそ彼の音楽はこんなにも急速に広がり続けているのだろう。
「今回のライブのためにスペシャルなことを用意してます!」と呼びこまれたのは、大阪出身のシンガーソングライターasmi。2021年にMAISONdes「ヨワネハキfeat.和ぬか,asmi」に参加したことで注目を集めたasmiとimaseは同い年の22歳。“SNSをきっかけにバズった”“コロナ禍で知名度を上げた”といった共通点があるふたりは、新世代J-POPシーンを象徴する存在と言っても過言ではない。この日披露されたのは、音楽プロデューサー蔦谷好位置のプロジェクト・KERENMI名義の「boy feat. asmi & imase」。胸に秘めた夢や憧れ、現実と理想のギャップ、思うように物事が進まない焦燥をポップに昇華した楽曲をふたりが歌い上げるシーンは、間違いなくこの日のライブのハイライトのひとつ。特に〈重ねたいメロディ曝け出した/奏でたいハードが動き出した〉という最後のフレーズには強く惹きつけられた。
“ここではないどこかへ行きたい”という思いが滲む「逃避行」からライブは後半へ。シリアスな音像と切れ味のいいラップが響き合う「Pale Rain」、大人になっていく時期の葛藤を見つめながら、〈悪くないよ未来は僕らだ〉という前向きなフレーズへとつなげるアッパーチューンーン「僕らだ」など“カッコいい”imaseを体感できる楽曲が続いた。そして新曲「18」も披露。ピアノと歌ではじまり、しなやかなメロディが広がるこの曲は18歳の新成人に向けたポップチューン。〈楽しみはここから〉と未来へのメッセージを込めたこの曲は、すべてのオーディエンスの心と身体を気持ちよく引き上げたはずだ。
「思い返すと、感慨深くて。2回目のライブでLIQUIDROOM、しかもパンパンに人が入って。もっともっといろんな人にimaseを知ってもらえるように、もっと大きいところでライブができるようにがんばっていきたいと思います。
これからもたくさんの応援、よろしくお願いします」という言葉に導かれたのは、メジャーデビュー曲「Have a nice day」。さらに〈どうでもいいような 夜だけど〉というアカペラから代表曲「NIGHT DANCER」へ。オーディエンスは笑顔で体を揺らし、サビのフレーズを大合唱。会場はナチュラルな高揚感で包まれた。
ここでスクリーンに映されたのは、「韓国旅物語」。今年4月にプロモーションやショーケースで韓国を訪れたimase。「NIGHT DANCER」は、韓国の音楽プラットフォームMelOnでTOP20にランクインするなど、韓国で大ヒット。この先、アジアを中心にした海外での活動も期待できそうだ。
「韓国、楽しかったー。タッカンマリ美味しかった。みなさんもぜひ食べてください(笑)」というトークの後は、5月26日リリースの新曲「Nagisa」を初披露。80’sテイストを感じさせるサウンド、爽やかなメロディラインを含め、夏を彩るimase流のシティポップチューンだ。
最後はオーディエンスと一緒に撮影。「また会いましょう!」という言葉でライブはエンディングを迎えた。加速度的に広がる音楽性、ライブパフォーマーとしての向上をダイレクトに示したimaseは、10月に自身初の東名阪ツアー『imase 1st Live Tour 2023』を開催。本格的なブレイクはもう目の前。
2023年夏以降、imaseのさらなる飛躍をぜひ目撃してほしいと思う。
Text:森朋之Photo:Viola Kam (V’z Twinkle)
<公演情報>
imase 1st Live『POP OVER』
5月10日 東京・LIQUIDROOM