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ついに開幕! タケットの振付が夢の世界を実現 新国立劇場バレエ団『くるみ割り人形』新制作開幕レポート

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ついに開幕! タケットの振付が夢の世界を実現 新国立劇場バレエ団『くるみ割り人形』新制作開幕レポート

(撮影:鹿摩隆司)



2025年12月19日、東京・新国立劇場 オペラパレスにて、新国立劇場バレエ団による全幕バレエ『くるみ割り人形』が開幕した。クリスマスシーズンから新年にかけて、世界各地の劇場でさまざまな演出が上演される古典の人気作。その新制作、しかも英国の振付家ウィル・タケットによる新国立劇場オリジナルの舞台とあって、多くのファンが開幕を心待ちに。その全容が明らかになった初日の舞台は、天皇皇后両陛下と敬宮愛子さまも鑑賞され、会場は晴れやかな雰囲気に包まれた。

さまざまな趣向をちりばめ、劇場を夢の世界へ

ついに開幕! タケットの振付が夢の世界を実現 新国立劇場バレエ団『くるみ割り人形』新制作開幕レポート

新国立劇場バレエ団『くるみ割り人形』(撮影:鹿摩隆司)
E.T.A.ホフマンの童話をもとに作られたバレエ『くるみ割り人形』は、クリスマスの夜、主人公の少女が憧れの王子とともに旅する夢物語だ。今回、振付を手がけたタケットは、吉田都芸術監督にとっては英国ロイヤル・バレエ時代の同僚。演劇作品の演出、先鋭的な表現でも才能を発揮しているが、本作では古典バレエらしい伝統的なスタイルでの舞台を実現させるという。プログラムノートで「私にとって絶え間ない喜びはチャイコフスキーの音楽にあります」と明かすタケットだが、指揮者のマーティン・イエーツの力を得て音楽に新たな工夫を加えたり、チャイコフスキー自身が楽譜に書き込んだ、動きにまつわるさまざまな指示を活かしたりもしたそう。
同時に、あっと驚くような新たな趣向、現代的な感覚もちりばめて、観客に退屈する暇を与えない。

第1幕、シュタルバウム家のクリスマスパーティーから見どころは山盛りだ。美術・衣裳はコリン・リッチモンド。舞台はチャイコフスキーが生きた1900年代初頭に近い時代設定というが、その壮麗な美術、パーティーに集う人々が纏う上品な色合いの衣裳がため息を誘う。そんな中でひときわ明るく朗らかなオーラを放つ少女が、ヒロインのクララ。初日に演じたのは、プリンシパルの米沢唯だ。本作のクララは15、16歳の少女と少し年長の設定、年下の少女たちとの微笑ましいやりとりや、激しくやんちゃな弟のフリッツ(小野寺雄)との喧嘩と、ころころと表情を変えて目が離せないが、どんなときも品の良さと純粋さを失わない、魅力的なクララに。
ついに開幕! タケットの振付が夢の世界を実現 新国立劇場バレエ団『くるみ割り人形』新制作開幕レポート

新国立劇場バレエ団『くるみ割り人形』(撮影:鹿摩隆司)
彼女にくるみ割り人形をプレゼントするドロッセルマイヤーは、客人たちを前に余興のマジックを次々とクールに決める。
この日演じたのは、シーズン・ゲスト・プリンシパルとして活躍する福岡雄大。その技のレベルは徐々にエスカレート、「こんなものまで出す!?」という驚きの奇術で皆を夢中に。もちろんコロンビーヌ人形(五月女遥)やハーレキン人形(森本亮介)、兵士人形(上中佑樹)の踊りも、子どもたちを大いに喜ばす。

その助手として登場するのが、もうひとりの主役。のちにくるみ割り人形の王子となる青年だ。壊れたくるみ割り人形に応急処置を施す、優しくてハンサムな好青年を演じたのは、さまざまな作品で米沢と組んできたプリンシパルの渡邊峻郁。クララに恋心を芽生えさせ、夢の中で彼女とともに旅をする美しいパートナーを、持ち前の表現力で自然に演じ、観客を魅了した。

子どもたちのダンスに目を光らす、憎まれ役の雰囲気漂うダンス教師(根岸祐衣)とその夫(水井駿介)にも注目。
クララの夢の中では恐ろしいねずみの女王とその夫として再登場、現実と夢の繋がりを印象付ける。ハウスキーパー(関晶帆)、執事(小柴富久修)も、第2幕で大いに活躍するのでお見逃しなく。

夢の中でクリスマスツリーがどんどん大きくなるシーンは工夫のしどころだが、目の前で魔法の力が働くのを実感させるアイデアで、劇場全体を夢の世界へと引き込む。ねずみたちとの熾烈な戦いで負傷したくるみ割り人形は、ドロッセルマイヤーの魔法で王子に変身、クララとともに雪の国へ。雪の結晶がデザインされた幻想的な空間で展開される雪の結晶の踊りは、サラサラとした雪片が風に舞う様子を女性ダンサーたちがスピード感ある振付で体現、7月の『ジゼル』ロンドン公演でも高い評価を得たコール・ド・バレエの力が、大いに発揮される。

ピンクが可愛い!夢のようなお菓子の世界

ついに開幕! タケットの振付が夢の世界を実現 新国立劇場バレエ団『くるみ割り人形』新制作開幕レポート

新国立劇場バレエ団『くるみ割り人形』(撮影:鹿摩隆司)
第2幕でもさらに新鮮な驚きが。クララと王子がたどり着いたお菓子の国は、ピンクを基調としたポップでカラフルな夢の空間。ステッキの形のキャンディケインやふわふわのわたあめをあしらった可愛らしいお菓子の王国は、まさに夢に出てきそうな空想の世界だ。
祝祭ムードあふれる中、ドロッセルマイヤーが次々と招き入れるのは、個性豊かな踊り手たち。伝統的な“各国の踊り”に見られる国や人種にまつわる偏った表現は避ける、と伝えられていたが、ピンクのふんわり衣裳がキュートなわたあめ(花形悠月)に斬新な着ぐるみキャラが炸裂するゼリー(宇賀大将、菊岡優舞)、お馴染みの赤と白の縞がキャッチーなキャンディ(飯野萌子)、ダイナミックに飛び跳ねるポップコーン(上中佑樹、山田悠貴、樋口響)、さらに花のワルツの音楽で魅せるフォンダンローズ(直塚美穂、木下嘉人)まで、新鮮味あふれる設定が印象的。が、チャイコフスキーの音楽にぴったりと寄り添う振付が次々と踊られるひと時は、まぎれもない古典全幕ならではの愉しさだ。

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新国立劇場バレエ団『くるみ割り人形』(撮影:鹿摩隆司)
もちろん、クララが金平糖の精となって王子と踊るグラン・パ・ド・ドゥは、古典バレエの真骨頂、夢の高揚感はピークに。上品なスミレ色のチュチュをまとった米沢の、丁寧かつ躍動感にあふれた金平糖の精は、ハッピーな時間を心の底から楽しむクララの気持ちも乗せて、劇場を幸福感でいっぱいに。渡邊の王子の美しいリードにもうっとりだ。2日目以降も、木村優里と速水渉悟、小野絢子と李明賢、池田理沙子と水井駿介、柴山紗帆と井澤駿、東真帆と奥村康祐と全6組の主役カップルが回替わりで競演、新年1月4日(日) まで全18公演を届ける。米沢と渡邊のペアは12月28日(日) のぴあスペシャルデーにも主演する。


ついに開幕! タケットの振付が夢の世界を実現 新国立劇場バレエ団『くるみ割り人形』新制作開幕レポート

新国立劇場バレエ団『くるみ割り人形』(撮影:鹿摩隆司)
随所にカラフルで現代的な要素をちりばめて、いまの観客の心をしっかりと捉えながら、古典バレエの魅力を最大限に打ち出した『くるみ割り人形』。新たな冬の風物詩として、これから長く、たくさんの人々を楽しませるだろう。

取材・文:加藤智子

<公演情報>
新国立劇場バレエ団 2025/2026シーズン『くるみ割り人形』<新制作>

振付:ウィル・タケット(レフ・イワーノフ原振付による)
音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
編曲:マーティン・イェーツ
美術・衣裳:コリン・リッチモンド
照明:佐藤啓
映像:ダグラス・オコンネル
芸術監督:吉田都

指揮:マーティン・イェーツ/冨田実里
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
合唱:東京少年少女合唱隊

出演:新国立劇場バレエ団

2025年12月19日(金)~2026年1月4日(日)
会場:東京・新国立劇場 オペラパレス


★12月28日(日) はぴあスペシャルデー(ぴあ貸切公演)!

①当日は、開演前・幕間にホワイエにて「くるみ割り人形」にちなんだ楽曲によるレガーロ東京ミニコンサートを開催!
②ダンサー直筆サイン入りプレゼント(新国立劇場2025/2026シーズンバレエプログラム/新国立劇場バレエ団卓上カレンダー2026)抽選あり!

関連リンク
チケット情報:
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2562429(https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2562429&afid=P66)

公式サイト:
https://www.nntt.jac.go.jp/ballet/nutcracker/

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