2023年6月8日 12:00
クリープハイプの最新シングル「青梅」に秘められた創作の根本的アティチュードとは?
どうにも周りに馴染めない者同士が何かの拍子に出逢ってしまった物語なのだ。
ものすごく単純に言えば、彼らの価値基準とそれ以外(世間とか社会とか)の価値基準は、恐ろしくかけ離れたものなのではないかと想像する。しかし、どちらが正しいか正しくないか、という判断をいったいどうやってできるというのだろうか?法だ道徳だ云々の話ではなく、基準は曖昧なのだ。けれど絶対的なのだ。我々はそれをコロナというもので否が応でも認識させられたはずである。
そこのギャップに尾崎世界観は鋭い眼差しを向ける。
“ねえ、それって正しいの?”
“本当なの?”
“他にはないの?”
バンドであって、バンドっぽさを排除したようなサウンドの秘密がそこにある。それはつまり、クリープハイプというバンドに対する絶対的な価値基準への自らの信頼があるからこそ可能なチャレンジだったと思う。
そしてその価値基準は常に曖昧なものであるというもう一方の真実を常に意識することで、バンドの革新性に変えていくというエンジンになるのだ。これは、自らを信じ、疑う、という創作の根本的アティチュードに貫かれたマスターピースである。そうであるからこそ、切実な恋愛ソングとしての輝きがある。