年末年始に行きたい!首都圏のおすすめ美術展
年末年始の休暇を使って、見逃している展覧会に出かけてみては?ここでは、年末年始の休館日が少ない首都圏の展覧会をご紹介。なお休館日等は変更の可能性もあるので、最新情報を確認してから出かけよう。
『六本木クロッシング2022展:往来オーライ!』森美術館
会期:2022年12月1日(木)~2023年3月26日(日)
※会期中無休
六本木の森美術館は年末年始も無休でオープン。現在開催中の展覧会は、2004年よりスタートし、3年に1度、共同キュレーション形式で行われてきた『六本木クロッシング』。日本の現代アートシーンを総覧する、同館の定点観測的な展覧会の第7回目となる今回は『六本木クロッシング2022展:往来オーライ!』と題し、全22組のアーティストの作品を紹介。今年のサブタイトル「往来オーライ!」には、異文化との交流や人の往来が繰り返されることにより形成されてきた日本の多文化性を再認識するとともに、コロナ禍で途絶えてしまった人々の往来を再び取り戻したいという思いが込められているという。
展示は、「新たな視点で身近な事象や生活環境を考える」「さまざまな隣人と共に生きる」「日本の中の多文化性に光をあてる」という、現在の社会状況から考察すべき3つのトピックスによって構成。ただし展示会場内には特に章立てなどはなく、市原えつこ、SIDECORE / EVERYDAY HOLIDAY SQUAD、石内都、やんツーなど、幅広い世代のアーティストたちの作品が呼応し合い、「交差」する展示空間となっている。
『京都・智積院の名宝』サントリー美術館
会期:2022年11月30日(水)~2023年1月22日(日)
※火曜日、12月30日(金)~1月1日(日) は休館
長谷川等伯国宝《楓図》桃山時代16世紀智積院
京都・東山に建つ、弘法大師空海から始まる真言宗智山派の総本山である智積院。その長い歴史なかで守り受け継がれてきた名宝の数々が、六本木のサントリー美術館で一堂に紹介されている。同展の大きな見どころは、桃山時代の絢爛豪華にして抒情性豊かな智積院の障壁画群を存分に堪能できること。長谷川等伯(はせがわとうはく)・久蔵(きゅうぞう)親子がそれぞれ描いた国宝《楓図》《桜図》が寺外で初めて同時展示されるほか、高さ3.3mにおよぶ大作である長谷川等伯作の国宝《松に黄蜀葵図(まつにとろろあおいず)》も同展が寺外初展示となっている。
ほかにも、国宝《金剛経(こんごうきょう)》や重要文化財《孔雀明王像(くじゃくみょうおうぞう)》など仏教美術の貴重な優品や、近代京都画壇を代表する堂本印象(どうもといんしょう)の障壁画に至るまで、智積院が秘蔵する多彩な名宝を東京でまとめてみることができる貴重な機会だ。
『ピカソとその時代ベルリン国立ベルクグリューン美術館展』国立西洋美術館
会期:2022年10月8日(土)~2023年1月22日(日)
※月曜、12月30日(金)~1月1日(日)、1月10日(火) は休館(1月2日(月)、1月9日(月) は開館)
4章「両大戦間のピカソ──女性のイメージ」展示風景
上野の国立西洋美術館では、ピカソを中心に、ベルリン国立ベルクグリューン美術館が所蔵する20世紀美術の名品を紹介する展覧会が開催中。97点の作品が来日しているが、そのうちの実に76点もが日本初公開の作品だ。
ドイツ生まれの美術商、ハインツ・ベルクグリューンが収集したコレクションを収蔵・展示し、第一級のピカソコレクションを誇るベルリン国立ベルクグリューン美術館。
ベルクグリューンはピカソ本人とも交流を深め、コレクションを形成したというが、同展出品作も約半数がピカソの作品で、そのうちの35点が日本初公開。展覧会は全7章構成で、そのうちの3章がピカソ作品を紹介するものだ。
ほかにもベルクグリューンが敬愛したピカソと同時代の画家たち、クレー、マティス、ジャコメッティ、さらに彼らが共通して師と仰いだセザンヌらの作品が紹介される。ベルクグリューン美術館の設立以来、館外でまとめてコレクションが紹介されるのは初めてのこと。巨匠たちのまだ見ぬ作品に出会うことができる貴重な機会だ。
『日中国交正常化50周年記念兵馬俑と古代中国~秦漢文明の遺産~』上野の森美術館
会期:2022年11月22日(火)~2023年2月5日(日)
※12月31日(土)、1月1日(日) は休館
「第Ⅱ章 統一王朝の誕生―始皇帝の時代」展示風景
紀元前221年、始皇帝により史上初めて中国大陸に統一王朝を打ち立てた秦と、紀元前202年、劉邦によって再び中国を統一した漢。中国の基礎を確立したと言われるこの秦漢両王朝の中心地域であった陝西省の出土品を中心に、日本初公開となる貴重な文物を含む約200点で悠久の歴史を紐解く展覧会が上野の森美術館で開催されている。
一番の見どころとなるのは、兵士や馬をかたどった像で、陵墓に収められた兵馬俑の展示だ。
約8000体が埋蔵されていた秦の始皇帝陵の兵馬俑のうち、高位の武官をかたどった高さ196cmの「将軍俑」をはじめ、「騎兵俑」「武士俑」など等身大の兵馬俑がずらりと並ぶ展示空間は圧巻。顔の表情や身に着けた鎧にいたるまで驚くほどにリアルに再現された「俑」は1体ずつリアケースに収められており、180度、どの角度からもじっくりと鑑賞できるのもうれしい。
同展では始皇帝陵の兵馬俑だけでなく、戦国時代、秦、漢とそれぞれの時代の兵馬俑に注目。なぜ戦国時代は極小だった騎馬俑が、始皇帝陵の等身大の兵馬俑となり、漢代では再び小さくなったのか。その知られざる理由についても紐解いていく。
『ヴァロットンー黒と白』三菱一号館美術館
会期:2022年10月29日(土)〜2023年1月29日(日)
※月曜日、12月31日(土)、1月1日(日) は休館(1月2日(月)、1月9日(月)、1月23日(月)は開館)
フェリックス・ヴァロットン《お金(アンティミテⅤ)》1898 年三菱一号館美術館
丸の内の三菱一号館美術館で開催されているのは、19世紀末のパリで活躍した画家フェリックス・ヴァロットンの木版画に焦点をあてた展覧会。約180点に及ぶ世界有数のヴァロットン版画のコレクションを誇り、2014年に日本で初めてヴァロットンの回顧展を開催した同館ならではの企画だ。
ナビ派の画家としても知られるヴァロットンだが、彼が一世を風靡したのは当時の社会の暗部や群衆の姿を皮肉やユーモアたっぷりに描いた木版画だった。
ボナールやドニなど同時代の画家たちが色鮮やかなリトグラフ(石版画)を手掛けたのに対し、ヴァロットンは黒一色の木版画にこだわり、卓越したデザインセンスで色鮮やかなパリの風景をモノクロームの世界に描き出していったのだ。
同展では、希少性の高い連作〈アンティミテ〉〈これが戦争だ!〉の揃いも含む同館のコレクションを一挙公開し、ヴァロットンの画業を展観。さらにナビ派の画家たちやロートレックの版画作品も合わせて展示することで、ヴァロットンの版画作品の独自性を浮かび上がらせていく。
『マリー・クワント展』Bunkamuraザ・ミュージアム
会期:2022年11月26日(土)~2023年1月29日(日)
※1月1日(日) は休館
《マリー・クワントと、ヘアスタイリングを担当していたヴィダル・サスーン》1964年 (C)Ronald Dumont/Daily Express/Hulton Archive/Getty Images
2022年に92歳となり、今もなおイギリスで最も親しまれるファッションデザイナーの一人、マリー・クワント。若い女性のための革新的なファッションを打ち出し、1960年代イギリス発の若者文化「スウィンギング・ロンドン」を牽引した、その活動の軌跡を紹介する展覧会が渋谷のBunkamuraザ・ミュージアムで開催中だ。
1955年、25歳でブティック「バザー」を開店。自らが着たいと思うアイテムをデザインして若者たちから圧倒的な支持を得たマリー・クワント。1960年代には、ミニスカートやタイツの普及に貢献。
特にミニスカートは、ファッションとして広く世界中に受け入れられ、ロンドンの若者文化と女性解放の象徴ともなった。
この展覧会では、ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館が所蔵する約100点の衣服、小物、写真資料、映像などを一堂に展示。1950年代から70年代にかけてのマリー・クワントの業績と、時代を切り開いた起業家としての歩みを時系列で紹介していく。
『ピカソ青の時代を超えて』ポーラ美術館
会期:2022年9月17日(土)~2023年1月15日(日)
※会期中無休
『ピカソ 青の時代を超えて』展 展示風景(I. 青の時代 ―はじまりの絵画、 塗り重ねられた軌跡)
箱根のポーラ美術館は年末年始も休まず開館している。2023年1月15日(日) まで開催されているのは、『ピカソ青の時代を超えて』。20世紀を代表する芸術家、パブロ・ピカソの原点である「青の時代」から晩年までの画業を展観する展覧会だ。
ピカソは20歳から23歳の頃、青を主調色に貧しい人々の姿を描き、生や死、貧困といったテーマに向き合った。「青の時代」と呼ばれるこの時期は、自身も生活に困窮していたため、制作された絵画の多くは、同じカンバスに何度も書き直しがされている。
同展では、ピカソが初めてオリジナリティを確立した「青の時代」を画業の原点として捉え、さらに「青の時代」を超えた晩年までを国内外の選りすぐりの名作約70 点で展観。さらに「青の時代」の最重要作である《浜辺の母子像》などの作品の光学調査により新たに判明した塗り重ねのプロセスや下層の分析結果を映像で紹介する“青の時代ラボ”や、映画『ミステリアス・ピカソ 天才の秘密』(1956年公開)より《ラ・ガループの海水浴場》の制作場面を上映するコーナーもある。
『若冲と一村 ―時を越えてつながる―』岡田美術館
会期:2022年12月25日(日)~2023年6月4日(日)
※12月31日(土)、1月1日(日) は休館
2023年10月に開館10周年を迎える箱根の岡田美術館では、これを記念し、これまでの展覧会で特に人気の高かった画家4人に焦点をあて、ふたりずつ紹介する2部制の展覧会が開催される。その第1部として12月25日(日) より『若冲と一村 ―時を越えてつながるー』が開幕した。
活躍した時代は異なるものの、写生を徹底したことや、あでやかな彩色、画面に行き渡る緊張感など、作風において似通う点が認められる若冲と一村。その類似性から若冲研究の第一人者である同館館長の小林忠氏は一村を“昭和の若冲”と称しているという。同展では、若冲が精力的に描いた30代の終わり頃から40代の着色画と、奄美大島在住時代に岩絵具で描かれた一村の代表作、それぞれの墨絵、同じ種類の鳥を描いた絵など、2人の絵をさまざまに組み合わせて展示。さらにそれぞれの同時代の画家たちの作品や、伝統的な花鳥画の屏風絵などを併せ約40件の多彩な作品が紹介される。