愛あるセレクトをしたいママのみかた

【編集後記・座談会】映画『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』 ~自分の踊りを踊れ!世代を超えた普遍のエール~

ぴあ
【編集後記・座談会】映画『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』 ~自分の踊りを踊れ!世代を超えた普遍のエール~

PR
映画『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』の公開を記念し、「ぴあ」で1カ月にわたり展開してきた総力特集。 「峯田和伸×若葉竜也」W主演コンビのインタビュー、「峯田和伸×地引雄一」主演と原作者の対談、監督・田口トモロヲ、脚本・宮藤官九郎へのインタビューをはじめ、イベントレポートやコラムなど、多彩なコンテンツをお届けしてきました。 本特集の締めくくりとして、インタビューを担当したライターの松田義人氏とイベントレポート等を担当したライターの兵庫慎司氏、編集担当の中尾による「編集後記」的座談会をお届けします。

映画の魅力と“あの時代”の熱量、そして自身の青春時代を赤裸々に語り尽くしました。

これは“自分の映画”だ。世代を超えて心を打つ理由


中尾(編集)1カ月にわたる特集、おつかれさまでした。今回は映画『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』特集の締めくくりとして、松田さんと、兵庫さん、そして進行役・中尾の3人で、取材の裏話や映画への思いを語り合いたいと思います。


松田よろしくお願いします。それにしても、僕と兵庫さんは昔から仕事の領域や好きな音楽が本当によくかぶるんですよね。日本語でちゃんとロックをやっているバンドが好きだっていう根本の好みが同じで。ウルフルズもそうだし、ピーズの復活の時も取材がかぶったりして、いつも「またもや!」って感じになるんですよ(笑)。

兵庫そうそう、完全にかぶってる(笑)。ウルフルズは、ブレイク前からずっと追っかけてましたしね。今回の『ストリート・キングダム』でも、また一緒にやることになりました。

中尾今回の総力特集は、松田さんと兵庫さんの熱量がきっかけになりました。
試写をご覧になったあと、「これは絶対にぴあで特集をやるべきだ!」「ぴあで何かやるならぜひ声をかけてくれ!」と熱量がすごくて。まず、おふたりがそこまで心を動かされたのは、どんな部分だったのでしょうか?

松田僕から話すと、まず自分の経験と重なる部分が大きかったんです。10代の頃にミニコミを作っていて、それを置いてもらうために三軒茶屋の「フジヤマ」というレコード屋さんに通っていました。映画にも出てくる場所です。そこの店主の渡辺さんに「君、おもしろいから遊びに来なよ」と言ってもらえて、お店に通うようになったんです。

【編集後記・座談会】映画『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』 ~自分の踊りを踊れ!世代を超えた普遍のエール~
1990年、36年前の三軒茶屋「フジヤマ」での写真。写真手前が店主・渡辺さん、奥が松田(18歳)。周囲にいるのは、当時ライブハウスによくパンクバンドを観に来ていた女の子たち
中尾まさに映画で描かれている世界ですね。


松田そうなんです。フジヤマには中村達也さん(ex. BLANKEY JET CITY、LOSALIOS、フリクション 等)など、錚々たる人たちが遊びに来ていて。渡辺さんがいないとき、達也さんが店番していることもあった(笑)。そんな中で、ある日出会ったのがこの映画の原作者の地引雄一さんでした。渡辺さんが紹介してくれて、ミニコミを渡したら、後日わざわざハガキで「熱量がすごいミニコミだね」と感想をくれたんです。ミニコミの感想をわざわざハガキで寄せてくれたのは、読者の方を除けば、地引さんとピーズのはるくん(大木温之)だけ。だから、映画を観ながら、出来上がったミニコミを手にしていた頃のことや、渡辺さんや地引さんのことを思い出して……もう、これは“自分の映画”だ、と。涙が止まらなくなってしまいました。


兵庫そのDIY感、アマチュアリズムの経験があるのは、すごく羨ましいですよ。僕はいきなり音楽業界に就職、という形で入ってしまったので、地引さんや松田さんのような、ムーブメントの中にいて、それを自身の仕事にしていくという経験がないんです。だから、あの時代の熱気をリアルタイムで体験できなかったことへの羨ましさと、あとからその歴史を追いかけた峯田くんたちのような熱量も自分にはなかったな、という憧れ。両方の気持ちで、「俺もこうありたかったな」と強く思いましたね。

中尾兵庫さんは、東京ロッカーズのシーンはリアルタイムではなかったんですよね?

兵庫はい。僕らの世代だと、ゼルダとJAGATARAとスターリンはリアルタイムでしたが、それ以前はまだ。だからフリクションは知っていても、LIZARDは後追いで、当時はよく分からなかった。地方だったこともあって、音源も手に入りにくかったですし。
だから、今回この映画を観て、田口トモロヲ監督がおっしゃっていた「あまりにも語られていないから、自分が語り継がなければ」という想いが、本当にその通りだなと実感しました。

リアリティの追求と、奇跡のキャスティング

【編集後記・座談会】映画『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』 ~自分の踊りを踊れ!世代を超えた普遍のエール~

中尾映画そのものの作りとして、どんな点に惹かれましたか?

兵庫まず、歴史を描く映画でありがちな、細かい部分で冷めてしまうことが一切なかったです。僕は、例えば、昭和の新宿の風景に、あるはずのないラミネート加工されたチラシが貼ってあるとか、そういうことが気になってしまうタイプなんですが、この映画にはそれが本当になかった。物語としてのドラマチックさよりも、リアリティを優先している感じがすごく良かったです。

【編集後記・座談会】映画『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』 ~自分の踊りを踊れ!世代を超えた普遍のエール~

松田わかります。

兵庫あとは、キャスティングが本当に素晴らしかった。もちろん、大森南朋さんが演じたS-KENさんは、ご本人が言うように少し年齢が上だったり、細かいことを言えば色々あるのかもしれないですが、あれだけの豪華なキャストが揃って、誰ひとりとして「違うな」と感じさせないのは奇跡的だと思いました。吉岡里帆さんが演じたZELDAのチホさんも、演奏シーンの目つきとか、すごく雰囲気がありましたね。


【編集後記・座談会】映画『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』 ~自分の踊りを踊れ!世代を超えた普遍のエール~

松田僕は世代が違うので、ディテールがどうこうというのは分からないんですが、だからこそ逆にすべてが良く見えました。吉岡里帆さんの少しアッパーな感じも、すごく魅力的に映りましたね。

中尾松田さんが涙が止まらなくなったというお話がありましたが、特にどのシーンが心に響きましたか?

松田自分の経験と重なる部分ももちろんですが、根っこにあるパンクのスピリットみたいなところに、やっぱり泣けてしまうんです。単なるアンチメジャーというわけではなくて、映画の中でモモ(TOKAGE)が言うように、メジャーをうまく利用しようとする、ちょっとずる賢い戦略的な部分。そういう部分も含めて、すごくお洒落でスマートな映画だなと感じました。悪者がほとんど出てこないのもいい。レコード会社の人でさえ、敵として描かれていないですよね。

【編集後記・座談会】映画『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』 ~自分の踊りを踊れ!世代を超えた普遍のエール~


記録者・地引雄一がいたという奇跡

【編集後記・座談会】映画『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』 ~自分の踊りを踊れ!世代を超えた普遍のエール~
中尾このムーブメントが映画として成立したのは、やはり地引さんという記録者がいたことが大きいですよね。


兵庫本当にそう思います。あらゆる音楽ムーブメントを見ても、ライターとかメディアとかみたいにその周囲にいたんじゃなくて、中にいて、プレイヤーとして関わりながら、すべてを記録していた人って、地引さん以外にいないんじゃないでしょうか。ナゴムレコードの歴史を映画に、という声もあるようですし、それは僕もぜひ観たいけど、ナゴムにも地引さんのような存在がいたか、というと、難しいんじゃないかな。ナゴムの渦中にいた人たちって、もっと若いと思うんですよ。ある程度、年を重ねた大人がパンクに目覚めて、あの場所にいた。それがたまたま地引雄一だった、というのが奇跡ですよね。

松田地引さんの著書『ストリート・キングダム』も、改めてすごい本ですよね。東京ロッカーズだけじゃなくて、それ以前のシーンから、インディーズ御三家(ラフィンノーズ、有頂天、THE WILLARD)に至るまでの歴史が濃厚に記録されている。

兵庫HMVのトークイベントで、脚本の宮藤(官九郎)さんが「この本をもっと早く、高校生の頃に読みたかった」と言っていましたが、本当にその通りだと思います。

世代やジャンルを超えて響く、普遍的なメッセージ

【編集後記・座談会】映画『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』 ~自分の踊りを踊れ!世代を超えた普遍のエール~

中尾当時を知らない若い世代は、この映画をどのように観ると思いますか?

松田僕は長いこと峯田くんの連載の構成をやらせてもらっています(「峯田和伸のどうたらこうたら」/ぴあ音楽)。その中で読者の方から人生相談をいただくのですが、「いつかこういうことをしたい」「自分にはこんな夢がある」といったものがよくあるんです。でも、厳しいようだけど、そうやって言っている人は多分やらない。やる人は、誰かに言う前にだいたい始めてるもの。あるいはすぐにはできないスケールのデカい夢であれば、誰にも言わないで秘密裏に準備しているものです。それで言うと、この映画は、まさに「言う前に始めちゃった」やる側の人たちの物語。だから、普段「やらない側」にいる人が観て、心をえぐられるような作品でもあると思います。

兵庫宮藤さんも、「やらない側が見て『うわー』ってなるように作った」と言っていましたよね。主人公を、バンドマンのモモヨではなく、記録者の地引さんにしたのも、観客が自分を投影しやすいように、という意図があったそうです。

中尾実際にトークイベントには16歳の男の子も来ていましたよね。

兵庫音楽が好きで、ライブを観るのが好きな人なら、世代やジャンルは関係なく響くはずです。普段アイドルのライブやK-POPのライブに行っている人でも、きっと分かると思う。メンバーがお金で揉めて辞めるとか、目の前で生身の人間が何かを表現していることの尊さとか、描かれていることはすごく普遍的ですから。若葉竜也さんもインタビューで「今の中高生が観ても絶対に分かるはず。その頃に自分が映画『アイデン&ティティ』(2003年上映)を観て、バンドのことは何も知らないのにすごく刺さったのと同じだから」と自信満々におっしゃっていました。

中尾私がグッときたのは、地引さんが初めてライブハウスで写真を撮るシーンです。ステージじゃなくて、フロアで勝手に踊り狂っているお客さんたちを撮っている。あの光景に、自分が夢中でライブに通っていた頃を思い出しました。JAGATARAの<自分の踊りを踊れ>というメッセージにも繋がりますよね。

兵庫あの<自分の踊りを踊れ>というメッセージは、本当に日本のロックシーンに脈々と受け継がれていますよね。JAGATARAが言い始めて、ザ・ブルーハーツが「ダンスナンバー」という曲で引き継いで、電気グルーヴがテクノ/レイヴ・カルチャーを広める、という形でメジャーにして、今、一番メジャーなシーンでそれを言っているのが、星野 源くんだと僕は思っています。

松田ブルーハーツの「パンク・ロック」という曲に<やさしいから好きなんだ>という歌詞がありますけど、15歳で初めて聴いた時、「パンクって安全ピンを顔に刺したりする人たちなのに、それがなんでやさしいんだろう」って不思議に思いました(笑)。でも、だんだん分かってくるんですよね。誰にでも可能性があるんだ、ということを言っているんだと。この映画も、そういうやさしさに満ちている気がします。悪者がいなくて、みんな平等で、やる気になった人は何にでもなれるような空気感がある。すごくやさしい映画だなと思います。

まだ観ていないあなたへ

【編集後記・座談会】映画『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』 ~自分の踊りを踊れ!世代を超えた普遍のエール~
中尾まだ映画を観ていない方々へ向けて、ひと言ずつメッセージをお願いします。

松田「東京ロッカーズ」という言葉にフィルターをかけずに観てほしいです。もちろん、その伝説を知った上で観るのも楽しいですが、予備知識がない状態で観て、自分の感情がどう動くのかを確かめてほしい。言葉にするのは難しいんですが、理屈じゃなく、感情にグッとくるものがあるはずです。

兵庫本当に、音楽が好きで、ライブを観るのが好きな人なら絶対に大丈夫。ロックバンドに限らず、生身の人間が目の前で何かを表現しているということが好きな人なら、きっと分かると思います。思った以上に普遍的な物語なので、ぜひ劇場で体感してください。

中尾おふたりの熱いお話を聞いて、私ももう一度観たくなりました。この映画をきっかけに、これまで語られてこなかった日本のロックの歴史に、少しでも多くの人が触れてくれたらうれしいですね。本日はありがとうございました。

映画『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』は現在、絶賛上映中です。スクリーンに焼き付けられた剥き出しの衝動と、時代を切り拓いた者たちの熱い魂を、ぜひあなたのその目で確かめてください。

【編集後記・座談会】映画『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』 ~自分の踊りを踊れ!世代を超えた普遍のエール~


●おまけ


最後に、3月26日HMV record shop渋谷で行われた「映画『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』公開前夜 爆音トークイベント」では、それぞれが『ストリート・キングダム』関連の楽曲の音源(レコード、CD、カセット)を持ち寄り、選曲した曲を爆音で聴きながらトークを繰り広げましたが、おふたりにとっての一曲を挙げてください。

松田僕はリザードの「浅草六区」ですね。若葉さんが演じた役(モモ)のルーズな雰囲気に、どこか峯田くんの銀杏BOYZに通じる匂いを感じて、すごくよかったです。

兵庫映画のエンディングで流れる「宣戦布告」。当時の『ロッキング・オン』界隈──僕はまだ読者でしたけど、ザ・スターリンやフリクション、JAGATARAの評価は高かったけど、リザードはそこまでじゃなかったんですよね。でも今聴くと、英米と同時進行でニューウェイブをやっている感じがすごい。大森南朋さんも絶賛してましたし、ぜひ若い人たちにも当時の音源を探して聴いてみてほしいです。中尾私が一曲選ぶなら、田口トモロヲさんがやってるバンド『ばちかぶり』の『オンリー・ユー』ですね。先日、豊洲PITのイベントで、峯田(和伸)くんと若葉(竜也)さんのステージに、トモロヲ監督と大森南朋さんがサプライズで登場してこの曲を歌ってくれて、監督が歌う姿を初めて見たんですけど、もう、めちゃくちゃカッコよくて!もともと大槻ケンヂさんのカバーで知っていた曲だったんですけど、ついに『元祖』をライブで観ることができて、本当に貴重な体験でした。

【編集後記・座談会】映画『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』 ~自分の踊りを踊れ!世代を超えた普遍のエール~


【編集後記・座談会】映画『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』 ~自分の踊りを踊れ!世代を超えた普遍のエール~

松田義人

1971年生まれ東京出身。ライター・編集者。
これまでに携わった音楽関係の書籍・ムックはラフィンノーズ、氷室京介、小泉今日子、Theピーズ、ウルフルズ、向井秀徳、銀杏BOYZ、スキマスイッチなど。近年は、趣味の台湾旅行に関する自著を複数刊行。

【編集後記・座談会】映画『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』 ~自分の踊りを踊れ!世代を超えた普遍のエール~

兵庫慎司

1968年生まれ広島出身東京在住、音楽などのライター。
連載:ぴあ音楽「思い出話を始めたらおしまい」、DIGA:ONLINE「とにかく観たやつ全部書く」(共に月2回更新)など。著書にはウルフルズ「『バンザイ』ザ・インサイド・ストーリー」など。

【編集後記・座談会】映画『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』 ~自分の踊りを踊れ!世代を超えた普遍のエール~

中尾桂子

Webメディア「ぴあ音楽」、雑誌『月刊ぴあ「とぶ!ぴあ」』の音楽編集長。
ライブイベントの企画や書籍の編集なども手掛け、近年では大槻ケンヂの書籍『今のことしか書かないで』を刊行。ナゴムど真ん中世代。


▼映画「ストリート・キングダム自分の音を鳴らせ。」総力特集はこちら
https://lp.p.pia.jp/article/news/458995/index.html

<作品情報>
映画『ストリート・キングダム自分の音を鳴らせ。』
全国公開中!

【編集後記・座談会】映画『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』 ~自分の踊りを踊れ!世代を超えた普遍のエール~
©2026映画『ストリート・キングダム自分の音を鳴らせ。』製作委員会
出演:峯田和伸 / 若葉竜也
吉岡里帆 / 仲野太賀 / 間宮祥太朗 / 中島セナ
神野三鈴 / 浜野謙太 / 森岡龍 / 山岸門人
マギー / 米村亮太朗 / 松浦祐也 / 渡辺大知
大森南朋 / 中村獅童
監督:田口トモロヲ
原作:地引雄一「ストリート・キングダム」
脚本:宮藤官九郎
音楽:大友良英
エンディング曲:「宣戦布告」(峯田和伸/若葉竜也)
企画製作・配給宣伝:ハピネットファントム・スタジオ
©2026映画『ストリート・キングダム自分の音を鳴らせ。』製作委員会

公式サイト
https://happinet-phantom.com/streetkingdom/

.spNews__pr {padding: 0 24px;margin-top: 24px;}.spNews__pr__button {padding: 5px 6px;color: #A6A6A6;border: 1px solid #A6A6A6;width: 10%;font-size: 1.2rem;}

提供:

ぴあ

この記事のキーワード