【インタビュー】3ピースバンド・タデクイ、1stアルバム『MOTHER』で到達した新境地とバンドの変化を語る「成長というべきか、どこか肩の力が抜けた感じ」
Photo:永戸耀士
Text:吉羽さおりPhoto:永戸耀士
北海道釧路市・阿寒湖温泉出身の幼馴染で結成した3ピースバンド・タデクイが、2月11日(水・祝)に待望となる1stアルバム『MOTHER』をリリースする。高校時代の2021年に結成し、10代のバンドでいながらブルースやフォークミュージックにある叫びの本質を知るような、聴く者の魂を震わせる歌や、会場の空気を支配する緊張感や爆発力のあるアンサンブルを聴かせたタデクイ。そうした玄人好みな曲だけでなく、音楽的探究心を広げながら、サイケ、ジャズやボサノバ、またはダンスミュージックも貪欲に飲み込んで、オルタナティブに、または得体の知れない怪物的にとサウンドスケープを広げて、ソングライター下倉幹人(vo/g)の言い知れない心模様を描いた。近作では、静謐で、きらめくさざなみのようでいて、その内側では驚異的なうねりで砂を巻き上げたり、あるいは漆黒の闇が広がっているような海をモチーフに、青い心を投影してきた。
昨年は札幌だけでなく東京でのワンマンライブ『潜水』を成功させ、今年は3月にShibuya WWWというタデクイ史上最大規模の会場でのワンマンも決定している。そのワンマンを目前にリリースとなる1stアルバムは、親交のある加藤修平(NOT WONK/SADFRANK)をプロデューサーに迎え制作、レコーディングされた。タデクイの音楽を知る、また3ピースという形の醍醐味を知るプロデューサーという視点を加え、「灯台」などの既発曲や変幻自在にライブで演奏してきた曲たちを、今の最適解を探り構築した全9曲は、よさをそのままに、モダンに、またより強烈により美しく深化した。今回のインタビューは、制作中の昨年末にZoomにて行なったが、画面越しながら久々に会う3人はリラックスした表情が窺えた。
曲のテンションはもちろん高いが、埋め尽くすばかりでなく、どこか余裕や余白をも楽しむ佇まいも、アルバムには感じられる。歌として、音楽としてのふくよかな魅力を堪能してほしい1枚だ。
── 今、レコーディングは概ね終了したということですが、アルバムの制作自体はいつごろからスタートしていたんですか?
下倉幹人(vo/g)2025年3月の2ndワンマン『潜水』に向けてのスタジオに入っているときには、話はあった感じでしたね。次はアルバムだなっていう。そのときに、その次のワンマンのこともスタッフと話していて。次は、東京はShibuya WWWでしょみたいなことを言い出したんです。マジっすか!?ってなりましたけど、このタイミングで大きな会場でやってみるのはいいかもねって。じゃあ、そこに向けてアルバムはどう録っていこうかとなって、ひとつ、きっかけとして大きかったのは昨年3月にあっこゴリラさんの『北海道キメラTOUR』に参加したことで。
NOT WONK・加藤(修平)くんのソロ・SADFRANKも一緒にツアーを回っていたんですけど、そのときに加藤くんに、「レコーディング、録ってよ」って言ったら、いいよって言ってくれたので。そこからじわじわと進んでいた感じでした。
下倉幹人(vo/g)
── NOT WONK・加藤さんとは、それまでどういった親交があったんですか?
廣野大地(b)そんなに対バンとかはなかったんですけど、つながりはあって。
下倉兄貴的な感じで、気にかけてくれる先輩で。会えば結構話す感じだったんです。で、SADFRANKと回ったあっこゴリラさんとのツアーがめっちゃいいツアーだったんですよね。
OMI(ds)ずっと同じバンドで北海道を回ったツアーだったんですよね。各会場でやっていくごとに、全員でぶち上げるみたいな(笑)。
下倉俺がそもそもずっと加藤くんの音楽を聴いていたし。音楽の話を聞いたり、いろんな曲を教えてもらったり、制作やミックスの相談をしていたのが加藤くんだったんです。そういう話のなかで、加藤くんにレコーディングに関わってもらうことはできますか?って言ってみたら、いいよってことだったので。本当にお願いしたいですって、具体的に進んだ感じだったんです。
── タデクイというバンドや3人のサウンド感をわかった上で、もっとこういう部分が出ないともったいないという思いがあったのかもしれないですね。
下倉はい。実際、今回めちゃくちゃ変わったと思います。
廣野曲での長いパートに関しても、ここは何か意味があるの?っていうのはめっちゃ言われたよね。
下倉曲全体の持ち上げ方のアドバイスをもらいましたね。例えば今配信されている「灯台」は8分47秒くらいあって、繰り返しのパートが多いというか。それを音像でなんとかしている感じがあるんですけど。曲の展開として、こうだったらもっと曲としての力が強くなるんじゃないかって話をめっちゃして。アルバムでの再録は、7分くらいに縮まったんです。他の曲でも、ここは説得力を持たせるためにも繰り返してもいいかもしれないけど、こっちはいらないねとか、そういう話をして。それが面白かったんですよね。
── 単に曲を録るのではなく、プロデューサー目線でタデクイを見てくれた感じですね。
下倉一人称、“P”でしたもん。
OMI加藤Pね。
── この1stアルバムでは、すでにライブでも披露してきた曲が多数ありますが、レコーディングしながら曲を再構築していく、リアレンジ等をすることに時間を費やしたという制作ですか?
下倉僕が考えるのが苦手で、アレンジにすごく悩んじゃって。決まらないままレコーディングスタジオに入ってやっていくことが多くて。それで時間がかかってしまったのはありましたね。
OMI元々レコーディング前にも、(東京にいる大地以外)幹人と俺と加藤さんの3人でスタジオに入って、曲の確認をした期間もあったんですけど。結局、レコーディングスタジオに入って、もう一回考え直すという時間もあったりして。
OMI(ds)
下倉すみませんでした(笑)。
OMI結構手こずったよね。
── タデクイの場合曲が生き物だから、ライブごとに曲の尺もちがえば、その日のライブのムードでアレンジや見せ場もちがう。そういう面白さがあるからこそ、ひとつの形にするのは難儀ですね。
下倉そうですね、どこに山を持っていくかは結構日によって変えているかもしれないから、それを改めて“アルバム”という作品にしていくことに時間を費やしたというか。
OMIそれをメンバー3人でやるってよりは、新しく加藤さんの意見が入ってくるという意味でも新しい感覚だったかもしれない。「夢を見ながら」という曲があるんですけど、これは加藤さんと3人でスタジオに入ったときに作った曲で。
下倉おふざけみたいな感じで作ったんですよ。ボサノバの速い曲で、3分くらいで終わる曲を作りたいって言ったら、加藤くんが「タデクイは曲が長すぎるからな。
ここで終わりにしよう」って、曲の展開がすぐに決まって。加藤くんがベースを弾いていたんですけど、俺にベースソロよこせって感じでグイグイ弾いてくれたから、結構とんとん拍子で曲が固まっていって。プリプロ中でできた曲でした。
── タデクイの曲は5分を超える曲が大半で、加藤さんからも指摘があった曲が長いこと、それをコンパクトにすることについては、どう捉えているんですか?
下倉俺は説明しいだから、まず歌詞が長くなっちゃうんですよね。最近は、すべてを言い過ぎない勇気というのもいいなと思っていて。たとえば「夢を見ながら」は、仮タイトルが“雨に唄えば”だったんですけど。ジーン・ケリーの感じじゃないけど、オーケストラっぽい感じにしてもいいなってアレンジをしていたんです。でもそれだとやりすぎてるっていうか。言い過ぎずとも伝わるものはあるし。伝わる・伝わらないより、聴く人に委ねよう、その曲が持つ態度をちゃんと信じようというのが最近になって出てきて。それで尺が変わったり、歌詞を削っても嫌じゃなくなったのは増えました。成長というべきか、どこか肩の力が抜けた感じがあります。
── 曲が整理されたことで、幹人さんが描きたかった世界観や心の内と言ったものが、3人のなかでもより明快になったところはあるんですか?
廣野俺はタデクイの曲じゃなくても、そもそもあまり歌詞というものに注目をして聴くタイプじゃなくて。なんですけど、1stワンマン(2024年3月『ブルースを蹴飛ばせ』)のときがロックンロールみたいな感じだったのが、昨年の2ndワンマン『潜水』ではもうちょっと海っぽくて暗くてというのがあって。その後の札幌でのイベント『THE JUSTICE 2025』に出た頃もまだダークな感じはあったのかな。でも徐々に、ライブでもあまり青っぽくて暗い照明の感じでもなくなってきたりしていて。肩の力が抜けてきたというのは、雰囲気として感じて。最近はそういう感じだよなというふうになっていて。
下倉実際疲れていた感じはあったよね、お互いに(笑)。
廣野まあ。そうだね。
下倉疲れていたからああなったというわけじゃなくて、ああなって疲れたっていう感じがあったというか、俺は。
左から下倉幹人(vo/g)、廣野大地(b)、OMI(ds)
── 1stワンマンは札幌で、2ndワンマンは札幌と東京でとバンドとしても大きく踏み出していく時期でもありましたし、大地さんが進学で東京に出たり、それぞれ環境も変わっていく過程で考えることが増えたり、いろんなプレッシャーもあったんでしょうね。下倉OMIも札幌でひとり暮らしをはじめたりとか。段々と、それぞれがどうやって暮らしていくかが見えてきた感じがありますね。それもあるんだろうな。
廣野一旦、地に足がついたというかね。
下倉それかもね。落ち着いたってわけじゃないけど。なんていうか、スポーツでも肩幅に足を広げて、軽く膝が曲がったこの状態ならすぐパスを受けて、ドリブルできるみたいな。
OMI急に球技の話(笑)?
下倉キャッチできる体勢が作れるようになった感じだよね。ボールを見て、誰に渡すのがいいのかとか──俺は、たとえ話をするからややこしくなるんだな(笑)。でもその感覚で、今回のアルバムの話で言ったら、デザインはほぼ大地に任せたり、SNS告知とかもやってくれているから、そうやって大地に投げられるようになったし。OMIはバンドの事務的なところであったりとか、それこそ物販の物品数の管理とかをやってもらって、私はのほほんとしながら曲を作れるというか。
OMI幹人もいろいろと動いてくれるけどね、企画を打ったりとか。
── 役割分担もできてきて。制作やレコーディングで加藤さんが入ってくれることもそうですけど、第三者の意見も取り入れられたり、一緒に作っていける柔軟さも、自分たちが地に足つけた状況になったからこそ受け入れられる意見もありそうですね。バンドが、いい状態になっているんですね。
廣野そうですね。幹人がのんびりやろうよみたいな、力抜いていいよみたいなことを言ってくれたのもでかいかもしれない。
下倉なんか、キレすぎだったんですよ。
OMIふふっ(笑)。
下倉思い返すと、めっちゃ嫌なやつだなみたいな感じで。なんでその感じでいく?できない?とかパワハラかみたいな感じがあって(笑)。全然何も決まってもないのに、無駄に焦って急かしたりもしていたし。
廣野進んでいく上では、必要ではあったけどね。
下倉それが推進力になったかというと、ちがうのかなと。でも2ndライブ『潜水』を終えてから、肩の力を抜いたというか。別にかまそうとしなくてもいいかもっていう感覚になって。生き様でよくねえ?みたいなね。それでいうと、札幌にmomdadmefriendsっていう同い年のバンドがいるんですけど、そいつらを見ていても、この感じでこれだけかませるんだなって思ったというか。生きている、人間っぽいライブというか。神様みたいになろうとしなくていいやっていう感じっていうのかな。
廣野やることやるだけ、みたいな感じがあるよね。僕が東京でやってるバンド、GXIRD/D(ギザドド)もそうで。
下倉そうだよね。
廣野僕は途中加入ですけど、バンドの主宰メンバーのふたりを見ていても、気合いとかは大事ではあるけど、思いつくことをやるだけっていうか。自信とかもつけるとかないというより、ただそこにあるものっていうのかな。感じて、やればいいんだっていう。
廣野大地(b)
── そうした意識になる以前、がっちり肩に力が入っていたり、焦りを感じていた理由っていうのは、今思うと何だったと思いますか?
OMI緊張感は確実にあった感じがするよね。一昨年くらいはなんだろうね?使命感みたいなものを持ちすぎていたメンタルではあったのかなとは思う。
廣野普通に頑張っていたんですけどね。
OMIうん、その頑張り方をわかってなかった感じもある。
──ここで頑張らなきゃってアクセルをふかし続ける感じ?
下倉そのときは、その“ここで”っていう決め打ちもできてなかった気がする。やるしかないから、今持っている手札でどうにかするから、いい加減にしてくれ!みたいな状態だったというか。
── 今回のアルバムでは、ここまでのバンドの心境やさまざまな心持ちの変化も入っているものですか?
OMI今話していて思ったけど、意識して生活と曲がリンクしてるわけじゃないけど、大地が東京に暮らして俺も札幌に引っ越して1年経ってとメンバー内で生活が落ち着いていくなかで、バンドの雰囲気とか曲に関しても、肩の力が抜けてきた感じが入っていったのがリンクしていってるなっていう。(いろんな経緯状況を)アルバムにしようっていう意識ではなかったですけど、結果としていい形で内側の部分が出ているかなとは思いますね。
── 収録曲では、ライブで演奏している曲、配信でリリースをしている曲を新たに録った内容にもなっていますが、「夢を見ながら」の他にも未発表だったり、変化の大きな曲はありますか?
下倉『潜水』ですね。もともと別アレンジでやっていて、それはそれでかっこいいけど、無駄に長くしちゃってた曲で。それを思い切ったアレンジにしていて。なんていうか、エイフェックス・ツインみたいな感じになって。
廣野バカみたいなんですよ、途中から(笑)。
下倉今回のアルバムでいちばん、ウケる曲になる。ウケるっていうのは評価が高いとかじゃなくて、笑えるっていう。でもかっこいい。レディオヘッドのトム・ヨークの新しいバンド、ザ・スマイルみたいな。そういうのになったらラッキーっていう。
── 新たなアレンジになった、アイデアのきっかけはあったんですか?
下倉おせーから速くしろっていう(笑)。
廣野倍くらいのテンポになったんじゃない?
OMI“P”の采配ですね。レコスタで録る準備をしている状態で、クリック流すからそのテンポで叩いてっていう。それが、200とかじゃなかったかな。そのテンポで来るんだ!?って状態で、レコーディングスタジオ内でセッションして。
下倉その後、加藤くんとふたりでスタジオに入って、曲のガイドマップ的なものを作って。ガイドマップって言っても紙にテレレ、タララとかを書いて、ちょっと音を重ねるみたいな。もう、これは聴いてもらうのがいちばん早いんですけどね(笑)。
廣野俺もまだ最初のミックス以来聴いてないんだけど。
下倉めっちゃすごいことになってるよ。
── タデクイ・ファンもびっくりなものになりそうですかね?
下倉これ、誰?ってなると思う。『ストレンジャー・シングス』みたいな感じ……デモゴルゴンみたいな感じにはなったかな。
── ものすごいクリーチャー感というか、悪魔的な感じなんですかね(笑)。ロックやフォーク、ジャズやボサノバがあり、突然のエイフェックス・ツインもありという、まだアルバムの想像がついてないですけど(笑)。
下倉僕ら自身も楽しみではあります。
── そして改めて、3月8日(日)には札幌cube gardenで、3月18日(水)にはShibuya WWWでアルバム・リリースを記念してのワンマンライブが開催となります。このインタビュー段階では(2025年12月末)、まだまだこれから内容を詰めていくところだと思いますが、初のアルバムを携えて、どんなライブにしたいと考えていますか?
下倉今は一旦自分のなかで少しずつまとめていて、曲の展開とか並びとか、こういうときにこういう曲ほしいなっていう曲を今書いたりしていて。それでやっと1曲だけ書けたんです。まだメンバーには共有はしていないけど。
── さらに新しい曲ができちゃいましたか(笑)。
下倉それこそ「海に来て」のようにバイオリンを入れるとかラップスティールとか、ゲスト・ミュージシャンを入れるのは面白いかもしれないけど、タデクイって元々3人のバンドだし、その3人にどれだけこだわるかも考えていて。自分のソロでは、ゆくゆくはオーケストラみたいな規模感でやってもいいなとか、歌だけで30人いるみたいな合唱団みたいなこともやりたいと思っているんですけど。でもそれは多分タデクイではやらないことで。今回のワンマンでは、派手に、これがタデクイか!っていうよりは、観ている人が、俺も音楽やりたいかもって思える感じにしたいなと思っているんです。
<リリース情報>
1stアルバム
『MOTHER』
2月11日(水・祝) リリース
『MOTHER』ジャケット
◼︎収録曲
1.⾈ — boat
2.灯台(Album Ver.)— lighthouse
3.夢を⾒ながら — while dreaming
4.蛹 — chrysalis
5.潜⽔ — dive
6.友⼈ — blind dance※Additional Musician:中野門外(g)
7.グレア — glare
8.やさしさ — be good
9.海に来て — sea※Additional Musician:鈴木裕(vl)、川内陸(g)
タデクイ「舟」Music Video
<ライブ情報>
タデクイ 3rd ONEMAN LIVE 『MOTHER』
3⽉8⽇(⽇) 北海道・札幌 cube garden
開場18:30 / 開演19:00
3⽉18⽇(⽔) 東京・Shibuya WWW
開場18:15 / 開演19:00
【チケット情報】
全自由 一般:4,000円
全自由 U-22:3,000円
※ドリンク代別途必要
https://t.pia.jp/pia/artist/artists.do?artistsCd=MC150008(https://t.pia.jp/pia/artist/artists.do?artistsCd=MC150008&afid=P66)
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