くらし情報『バロック界の巨匠鈴木雅明が語る『第九』の魅力』

バロック界の巨匠鈴木雅明が語る『第九』の魅力

この『ロ短調ミサ』は、何のために誰のために書いたのか、はたまた演奏したのかすらもわからない不思議な曲です。同じようにモーツァルトとベートーヴェンのミサ曲もすべて個人的な思いの反映で出来ているところに面白さを感じるのです。というわけでベートーヴェンの『ミサ・ソレムニス』は昔からやってみたかった作品でした。そしてこの曲は『第九』とほぼ同じ頃に考えられ、作曲された作品なのです。そうなると『第九』も避けては通れません。2019年1月に東京オペラシティで演奏し、録音も行ったことがとても面白かったのです。これは何回やってもいいなと思うようになりました。そういったわけで、『ミサ・ソレムニス』と『第九』のペアはとても興味深いのです。
『第九』を書く直前に『ミサ・ソレムニス』が出来上がり、やっと自分の好きな『第九』に専念したとも言われています。その意味では、『ミサ・ソレムニス』は神のために、『第九』は人間のために作ったように感じられます。

●『第九』の面白さとは

いろいろあるのですが、『第九』の前の『交響曲第8番』は10年も前にできあがり、ベートーヴェンはそこから長い時間をかけて次の作品を考えていた気がします。

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