なにか違うものをという思いから合唱を入れ、形式的にもとても特殊です。第4楽章は特に変わっていますね。長い間温めてきた構想を基に一気に書き上げた気がします。独唱が入り合唱が入って、クライマックスに向かう緊張感の増幅が本当に見事です。さかのぼってみると、『運命』と『田園』の初演の最後に披露した『合唱幻想曲』の時点で、合唱をオーケストラに重ねるという実験がすでに行われていた。その頃から『第九』のための構想が出来ていたのではないかと思います。
●2019年1月公演での手応えは
素晴らしかったですね。古楽器でやることによって、透明感のあるドラマティックな構成や、予期しないモチーフが次々に出てくるところがよく分かります。
この曲を最初に聞いた人はびっくりしたと思いますよ。第4楽章のトルコマーチで始まる出だしの部分は間違ってるんじゃないかと思ったのではないでしょうか(笑)。何が起こるのだろうと思っていると、歓喜のモチーフがバリエーションのようにでてきます。至るところにストーリーがあって、その後のフーガでさらに興奮していくのです。そして突然合唱が始まるわけです。3楽章も素晴らしく美しいですね。2楽章はスケルツォでわかりやすい。