『フェラーリ』情熱と狂気、そして愛。1957年、“F1の帝王”に何が起きたのか? 【おとなの映画ガイド】
ところが、ここのところ、レースに費用を注ぐあまり、資金難に陥っている。そんななか、ライバルのマセラティ社をはじめ、競合他社がフェラーリのスピード記録を破り始めた。
50%の株を持つ妻ラウラ(ペネロペ・クルス)とは、長男の死以来、夫婦関係が冷え切っている。彼女は、彼が密かに愛し合っている女性リナ(シャイリーン・ウッドリー)の存在に、うすうす気づきだしたようだ。リナとの間には12歳の息子ピエロがいる。当時のイタリアは法律で離婚が認められておらず、このピエロの認知も、エンツォの悩みの種だ。
そんなエンツォとふたりの女性の愛憎模様を横軸に、経営者として社運を賭けた、イタリア全土1000マイルを走行する公道レース「ミッレミリア」参戦を縦軸に、映画は展開していく……。
この映画の魅力のひとつは、エンツォ・フェラーリを演じるアダム・ドライバーだ。現在40歳。『スター・ウォーズ』シリーズのカイロ・レン役をはじめ、黒い長髪のイメージが強い彼だが、毎日2時間かけてヘアメイクを行い59歳のエンツォに変身、シルバーグレーの髪がよく似合う“コメンダトーレ”(社長)になりきっている。
「ブレーキを忘れろ!」