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アウシュヴィッツでの撮影秘話も!『旅の終わりのたからもの』監督が明かす父娘の愛の物語

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アウシュヴィッツでの撮影秘話も!『旅の終わりのたからもの』監督が明かす父娘の愛の物語


1月16日(金)に公開される映画『旅の終わりのたからもの』より、ユリア・フォン・ハインツ監督のオフィシャルインタビューが到着した。

本作は、1991年のポーランドを舞台に、ちぐはぐな父と娘が家族の歴史をたどる旅路をユーモラスかつ温かく描いたロードムービー。ニューヨーク生まれのルーシー(レナ・ダナム)が、ホロコーストを生き抜き約50年ぶりに帰郷する父エデク(スティーヴン・フライ)と、家族の記憶を辿る旅へ出る。

監督を務めたユリア・フォン・ハインツは、母がホロコースト生存者の娘で、父はドイツ在住のユダヤ人。13歳で父を亡くしたハインツは、16歳の誕生日に母から贈られたホロコースト生存者の両親を持つ作家リリー・ブレットの原作小説『Too Many Men』に深く心を揺さぶられたという。ほろ苦い物語でありながら、正反対の父と娘の“愛の物語”に焦点を当てたその内容に、彼女が知りたかった歴史と痛みを見出し、映画化を決意させた。

<ユリア・フォン・ハインツ監督 オフィシャルインタビュー>
■リリー・ブレットの原作小説と出会ったのはいつですか?

16歳の誕生日に母からリリーの本を貰い、初めて彼女の作品に触れました。母自身もリリーと同じくホロコーストの生存者の娘であり、リリーが作品に描くことで声を与えた”第2世代“でした。


■2013年にFacebookを通じてリリー・ブレットに連絡を取ってこの小説を映画化する権利を取得し、脚本・プロデューサーで夫でもあるジョン・クエスターと共に制作に取りかかったそうですね。どんな脚本にしようと思いましたか?

映画は正反対の父と娘の“愛の物語”に焦点を当てています。ホロコーストの生存者であるエデクは、力強く、楽観主義で、思いやりがあり、出会う人すべてと友だちになります。しかし娘のルーシーは、両親のトラウマを抱え、家族が命を落とした地であるポーランドに対して怒りと苦々しさを抱いています。このほろ苦い物語は、リリー・ブレットの小説の持つ軽妙でユーモラスなトーンで語られていますが、登場人物たちが抱える深い痛みは隠すことなく描かれています。

■確かに、今回の脚本は娘のルーシーと父親のエデクの繊細な関係に焦点を当てた脚本になっていますね。

12回、草案を書いたと思います。親子の関係というのはいつも複雑なものですが、戦争とホロコーストを生き延びた第1世代にとっては、さらに複雑だったのです。
彼らの多くはホロコーストについて話さなかったし、それはエデクのような被害者側だけでなく、ドイツの加害者側でも同様でした。私は世代を超えて引き継がれるトラウマについて描こうとしましたが、同時に、私たちが歴史を互いに語り始めることで癒すことができると伝えたかったのです。

■ルーシー役のレナ・ダナムは念願叶っての出演となったそうですね。

本作には個人的な繋がりを持つ俳優を見つけることも重要でした。そこでレナ・ダナムが『GIRLS/ガールズ』や自身のソーシャルメディアで自らをどのように表現していたかを思い出し、“彼女がルーシー役でこの映画に参加してくれたら最高だ!”と思いました。ですが、彼女と直接連絡を取る方法がなかったため、ある取材で「次の映画にレナ・ダナムを起用したいと思っている」と話し、それが記事に掲載されました。翌日にその記事を見た彼女のエージェントが、脚本を送ってほしいと連絡をくれたのです。ダナムは脚本を気に入り、すぐに俳優兼プロデューサーとして参加することが決まりました。
ダナムが演じるルーシーは問題を抱えていますが、私たち女性の多くが自分自身や自分の感情との付き合い方に戸惑うことがあるように、彼女もその悩みを隠さず、正直でオープンに、しかもユーモアをもって向き合っているところが、ルーシーの魅力だと思います。

■コメディとドラマの両面をこなせる俳優として父エデク役にはスティーヴン・フライをキャスティングしました。家族史を扱ったBBCのドキュメンタリー番組『Who Do You Think You Are?』で彼が適任であると確信したと聞いていますが、その理由は何でしょうか?

彼は番組で、本作のルーシーと同じことをしていたのです。東ドイツを旅して、古い墓地へ行き、ユダヤ教の会堂を訪れ、祖父が住んでいた家を訪ねました。それは本当に驚くべきことでした。

■レナ・ダナムとスティーヴン・フライのふたりの現場での様子はいかがでしたか?

まるで本当に父と娘のようでした。彼らを見ているだけで、私の映画が生き生きと動き出すのが分かりました。彼らは国際的なスターであるだけでなく、物語との個人的なつながりも深いのです。
ふたりの家族はユダヤ系で、東欧にルーツを持っています。さらにスティーヴンは、ルーシーと同様の旅を実際に経験しています。ふたりとも悲劇と喜劇を自然に融合させる一流の俳優なんです。

■1990年代以降、ポーランドは大きく変化しており、当時の雰囲気を再現できる適切なロケ地を見つけるのは容易ではなかったそうですね。当時のポーランドの姿をよく伝えられるよう、ロケ地はドイツとポーランドの両方で撮影されたと聞きました。さらに、共同制作会社や衣装デザイナー、美術監督、作曲家など、ポーランドのチームを優先的に起用されたとか?

私にとってそれはとても重要なことでした。ポーランドとドイツの関係は繊細ですからね。私たちドイツ人が一方的に、“こうだったんだ”と決めつけることなどできません。
この映画は、ポーランドの視点から作られるべき作品だと思っています。私たちには、心を込めてこの作品を支えてくれた大勢のポーランドのチームがいました。彼ら全員が、このような物語に何らかのつながりを持っていたのです。

■今回、アウシュヴィッツの駐車場や境界沿いのフェンスの外側で撮影を実施することができたそうですね。現在のアウシュヴィッツについて、どのような思いをお持ちでしょうか?

アウシュヴィッツが“今どうなっているか”を見せる映画は、あまりないですよね。アウシュヴィッツは、歴史的な記憶を伝えるために、あえて手を加えずそのままの状態を保っています。そのこと自体がとても大切だと思います。過去に起きたことを、生き残った人々やその子孫たちがきちんと理解するために、この場所は必要なのです。
訪れた後は、心がとても重くなるはずです。

■本作は監督にとって『ハンナの旅』(2013)、『そして明日は全世界に』(2020)、に続く“アフターマス(後遺症)トリロジー”の第3作目であり、ナチス・ドイツの遺産が現代にどのように影響を与えているかを探求している作品ですね。

特にドイツやヨーロッパでは、「ホロコーストについてこれ以上聞きたくない」と言う人々がいます。しかし、私たちは物語を語ることで出来事に意味や秩序を与えようとする生きものです。ホロコーストはあまりにも巨大で、その影響を受けた人々の物語を語り尽くすには何世代もかかるでしょう。そしてそれを次の世代に語り継いて、二度と同じことが起こらないようにすることが必要なんです。

■あなたの母親は作家リリー・ブレットと同じ1946年に生まれ、父親はドイツ在住のユダヤ人だったと聞いています。父は私が13歳のときに亡くなり、彼は自身が経験したことについては一度も話しませんでした。
私はいつも、もしその歴史がなかったら、私の家族は違っていたのではないかと感じていました。

■最後に、本作をこれから観る観客にメッセージをお願いします。

ルーシーとエデクは、お互いにとっての“たからもの”だと思います。そして、過去と向き合うことは最終的に贈り物になるんです。もちろん、エデクにとって自分の過去は、娘を守るためにも隠しておきたいほど辛いものです。しかし、世代を超えて受け継がれるトラウマという観点では、ホロコーストついて話し、掘り下げ、明らかにすることが不可欠なのです。人間がどれだけ複雑であるかを描きながらも、それでも私たちは愛やつながりを必要としているし、それを見つけることができるという物語が、私は好きです。私が作るすべての映画はラブストーリーであり、『旅の終わりのたからもの』もそのひとつなのです。もしこの映画が私の世代やもっと若い観客に“自分を理解するために父を理解しなきゃいけないのかも。電話してみようかな”と思わせることができたら、それは私にとって大きな喜びです。

<作品情報>
『旅の終わりのたからもの』

1月16日(金)公開

公式サイト:
https://treasure-movie.jp/

(C)2024 SEVEN ELEPHANTS, KINGS&QUEENS FILMPRODUKTION, HAÏKU FILMS

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