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10年ぶりに復活した深夜ラジオを舞台におくる、瑞々しく心温まるひととき 朗読劇『リスナーたちの星空』

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10年ぶりに復活した深夜ラジオを舞台におくる、瑞々しく心温まるひととき 朗読劇『リスナーたちの星空』

撮影:宮川舞子



なんてロマンティックでセンチメンタルな物語だろう――朗読劇『リスナーたちの星空』を観て、真っ先にそう思った。物語の舞台は10年ぶりに復活した、深夜の名物ラジオ番組。パーソナリティーはミュージシャンでもある通称・濱ニイだ。10年前、この番組にメールを多数投稿していたリスナーたちは、ラジオを通じて知己を得て、いわゆる「オフ会」を敢行するまでに。そして、そのオフ会が契機となって、とある男性リスナーが女性リスナーが出会い、交際に至った。だがふたりのその後は……。

10年ぶりに復活した深夜ラジオを舞台におくる、瑞々しく心温まるひととき 朗読劇『リスナーたちの星空』

撮影:宮川舞子
10年前も現在も、番組のリスナーたちは、精一杯の力でふたりの恋をサポートする。彼ら/彼女らはユーモアを交えつつも、ふたりを全力で応援し、必死に後押しするのだ。
そんな恋人ふたりの来し方行く末については、実際にこの朗読劇をご覧になって欲しいが、濱ニイの番組が復活したのをきっかけに、止まっていた時計が動き出す。そこから物語は一気にドライヴし、予測できない結末へと至るのだった。

深夜ラジオは一度ハマるとやみつきになる。特に、パーソナリティーの気負わずリラックスしたトークがいい。まるで彼ら/彼女らがリスナーのすぐそばでしゃべっているような親密さがあるからだ。かつて『オールナイトニッポン(ANN)』は「深夜の解放区」と呼ばれ、ある講談師はラジオについて「大人の本音が聞ける唯一のメディアだった」と言う。本作に登場するラジオリスナーも、そんなラジオを愛する人たちだったのだ。

また、会話劇である本作は、台詞と台詞の間に適度な余白が設けられている。
その辺りは、脚本・演出を手掛けた土田英生の実力の賜物だろう。更に、現役のラジオ作家である宮澤一彰が脚本協力で参加したことも大きかったはず。番組が、観客のイマジネーションを掻き立てる間(ま)や隙間をいくつも用意している感触だった。

10年ぶりに復活した深夜ラジオを舞台におくる、瑞々しく心温まるひととき 朗読劇『リスナーたちの星空』

4/27~5/1までの5日間、永田崇人・石井杏奈、 荒木宏文・仙名彩世、 矢崎広・井上小百合、 太田将熙・前田佳織里、 武内駿輔・上西星来の男女ペア5組が日替わりで上演
朗読劇ということで、出演者は脚本から目を離さずに本番に挑んだ。聞けば、本作ではあえて1,2回程度のリハーサルしか行われなかったという。何度も脚本を読み込むと、出演者の演技がルーティーンになってしまい、物語の鮮度が落ちてしまうからだろう。ジャズの帝王マイルス・デイヴィスは、自分のバンドの凄腕ミュージシャンたちに「初めて楽器を触った時のようにプレイしろ」と言った。本作に参加した5名も、初めてこの脚本に触れた際の気持ちを保ったまま、舞台に立ったのではないだろうか。
それだけ瑞々しく鮮烈な作品だった。

公演は東京・紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYAにて。各日夜公演終了後には、脚本・演出を手掛けた土田英生と公演を終えたばかりの各ペアが登壇するアフタートークショーも開催される。

取材・文:土佐有明

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