草彅剛が初挑戦したシェイクスピア。『ヴェニスの商人』シャイロックの後ろ姿に浮かぶ現代への問い
シェイクスピアのなかでも上演回数の多い人気の作品を、常に魅力的な芝居を見せる草彅剛主演で上演。これは見逃せないと、発表時から大いに話題となった『ヴェニスの商人』が、東京・外苑前の日本青年館ホールで上演中だ。草彅のほか、野村周平、佐久間由衣、大鶴佐助、長井短、華優希、小澤竜心、忍成修吾ら、これがシェイクスピア初挑戦という面々の多い新鮮な座組を、これまでも解像度高くシェイクスピア作品を届けてきた森新太郎が演出。期待が募るこの公演の公開ゲネプロを観た。
舞台上には一見何もない。壁板と同じ木目のベンチが舞台奥にあることで、かろうじてそれが用意された美術だとわかるだけで、どんな舞台になるのか予想もつかずに始まりを待っている。すると、音楽も照明の変化も何もないなか、下手から役者陣が一列で歩いて入ってきた。全員が奥のベンチに座り落ち着いたところで、忍成がひとり立ち上がる。
舞台前方へと歩み出し立ち止まった忍成は、「さあ、ここからお芝居が始まりますよ」とばかりにセリフを口にした。このあとも、着替えや道具の出し入れで多少の動きはあるものの、役者たちは基本ベンチで芝居を觀ながら、出番になると前へ出る。