Wienners、“日本”をコンセプトに全22曲披露 ツアー『春雷行脚』千秋楽公演
Photo:かい
Wiennersが“日本”をテーマに掲げたコンセプトツアー『春雷行脚』(シュンライアンギャ)を開催。もともと今年5月に行う予定だったものの、10月に振替公演という形で移行し、ツアー3本目にあたる千秋楽・新宿BLAZE公演を迎えた。
コンセプトツアーと言えば、2021年の秋に決行したワンマンツアー「Welcome to the FACTION」を思い出す。現実と妄想の狭間=FACTION(FACT+FICTION)をコンセプトに、Wiennersが持つ極彩色のサウンドを明快に打ち出し、コロナ禍を吹き飛ばす凄まじい熱気を作り上げた。今回はその第二弾となり、前回あの現場にいた人はもちろん、コンセプトツアーに初めて触れる人にも存分に楽しめる内容になったに違いない。そもそも、Wiennersの楽曲は多様なジャンルやテーマ性を持ったものが多い。どこから光を当てるかで、その輝きに違いが生じる。ツアーの切り口によって、楽曲の断面図に新たな表情が加わる。
それが醍醐味と言ってもいい。
開演前に落語が流れ、会場を和の色合いに染め上げると、玉屋2060%(Vo/Gt)、∴560∵(Ba/Cho)、アサミサエ(Vo/Key/Sampler)、KOZO(Ds)のメンバー4人はこの日だけの和装ファッションで登場。スピーカーの上には赤いダルマが鎮座し、また、和傘も設置されたりと、ステージ全体で和を表現した凝った演出にも目を奪われた。ライブ自体は「おおるないとじゃっぷせっしょん」からキャッチーな曲調で満杯のフロアを揺さぶっていく。今日は声出しOKということもあり、「あんたたちの声がちょっと聴こえるのを楽しみにしてきたんですけど!」と玉屋は序盤から煽り、「Cult pop suicide」、「GOD SAVE THE MUSIC」とアッパーな曲を畳み掛け、次の「Japan holi」(春雷 ver.)の和メロにも意識を持っていかれた。前回同様、テーマ性を持たせることで楽曲に散りばめられた和的な要素がさらに色づき、こちらのテンションを否応なく押し上げていった。
「シャングリラ」、「蒼天ディライト」と無類のパーティーチューンで焚きつけると、三味線の音色を用いたインスト曲「龍宮城」を経て、「さよなら浦島太郎」、「極楽浄土のあなたへ」と繋ぐ。どこか、日本人の琴線を揺さぶる哀切なメロディ・ラインが胸に沁みた。
それから玉屋が落語を披露した後、「MUSASHINO CITY」(remix ver.)に雪崩れ込み、そこでラップをかます展開に面食らってしまう。曲が終わると、「粋であった!」と∴560∵も絶賛するほどで、前半戦から密度濃い楽曲に振り回されていく。
玉屋2060%(Vo/Gt)
「FANCTION」から「南無阿弥陀仏のリズムに乗って」に入ると、ワビサビを感じる日本情緒とリズミックなサウンドが見事に融合。すかさずアサミサエが『竹取物語』の朗読を挟み、「姫」に突入する流れも素晴らしかった。また、「十五夜サテライト」のロマンチックな旋律と激しいアンサンブルが溶け合う演奏にも心は高ぶるばかりであった。
KOZO(Ds)
ショウも中盤を過ぎた頃、「和のコンセプトめっちゃ合ってる!」と玉屋は興奮気味に語り、レキシとツーマンやりたい!という発言も飛び出す。これには心の中で膝を打ったファンも多かったのではないか。いつか実現して欲しいものだ。
∴560∵(Ba/Cho)
次に披露した「SHINOBI TOP SECRET」も、今ツアーにぴったりハマッた楽曲。曲が始まるや、観客は忍者ポーズで大歓迎。目くるめく曲展開に突如、アサミサエが演歌調で歌うパートは何度聴いてもインパクト抜群である。その後、彼女が一旦ステージから消えると、ハローキティ柄の着物で現れ、セットリストになかった「日本中 I WANT YOU」を歌い出す。これにはメンバーから即座にツッコミが入っていた。そんな寸劇で笑わせながら、ショウもいよいよ後半戦に突入。アサミサエがリードヴォーカルを務める「姫君バンケット」を披露。ディスコ調の賑々しいサウンドに和的な歌詞を乗せ、フロアは踊る人たちで溢れ返っていた。
ラストスパートは「子供の心」、「ゆりかご」、「TRADITIONAL」と怒涛の3連打で本編終了。
アンコールでメンバーが再び現れると、声出しOKにもかかわらず、ちゃんと秩序が保たれている場内を誇りに思うと玉屋。それから魔除けの意味を持つ赤いダルマの右目に墨を入れ、本日の成功を大勢の観客と分かち合った。そのお祝いムードに拍車をかけるように「SOLAR KIDS」、「よろこびのうた」をプレイ。しかし、それでも、拍手は一向に鳴り止まない。その熱意に押される形でWアンコールにも応え、「UNITY」で盛大に締め括った。
全22曲1時間50分に及ぶショウは、前回のコンセプトツアーに引けを取らない活況ぶりだった。「日本」を切り口に演歌、歌謡曲、Jポップなど音楽史の縦軸を魅せつつ、日本文化やその伝統まで掘り起こした楽曲ネタの数々に圧倒されてしまった。
そうしたパフォーマンスの根底には、島国に生まれた日本人としての矜持と感性が息づき、“世界にふたつとない音楽”を作り上げていることにも改めて気付かされる。エンタメ性に磨きをかけ、風雲昇り龍の勢いを魅せつけたWiennersの手腕にただただ感服した。
Text:荒金良介Photo:かい
<公演情報>
Wienners 春雷行脚 振替公演
10月29日(土) 新宿BLAZE