『夏と秋の美学 -鈴木其一と伊年印の優品とともに-』根津美術館で 夏から秋へ季節の移ろいを表現した作品が一堂に
2024年9月14日(土)より、根津美術館では、『夏と秋の美学 -鈴木其一と伊年印の優品とともに-』が開催される。初夏から晩秋までの移ろう季節の情趣と美意識を、同館を代表するコレクションで紹介する展覧会だ。
豊かな自然が多様な四季を彩る国・日本。古来、我が国では、季節に寄せて数々の歌が詠まれてきたが、『古今和歌集』などにおいて圧倒的に数が多いのは、やはり春と秋を詠んだ歌であり、美術においても、春の桜と秋の紅葉を取り合わせた作品がつくられてきた。ところが江戸時代になると、春ではなく、夏と秋の組み合わせが見えてくる。
伊年印《夏秋草図屏風》(左隻)日本・江戸時代17世紀根津美術館蔵
たとえば根津美術館が誇る鈴木其一の《夏秋渓流図屛風》はその代表的な例で、右隻には白い山百合の咲く夏、左隻には桜の葉が赤く色づく秋を描いている。実はこの夏・秋の取り合わせは、琳派の祖・俵屋宗達が主宰した工房のトレードマーク「伊年」印が捺された《夏秋草図屛風》に遡る。17世紀、俵屋宗達の2世代後の後継者・喜多川相説周辺で制作されたとみられる本作は、墨を多用して表現された夏から秋にかけての草花が、穏やかな韻律を刻む作品だ。