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「ダンサーが最高のコンディションで披露できる2作品を」英国ロイヤル・バレエ団2026年日本公演芸術監督 ケヴィン・オヘアインタビュー

ぴあ
「ダンサーが最高のコンディションで披露できる2作品を」英国ロイヤル・バレエ団2026年日本公演芸術監督 ケヴィン・オヘアインタビュー

Photo: Andrew Crowley / RBO


進化を続けるカンパニーの現在地


今年(2026年)7月、世界最高峰と謳われる英国ロイヤル・バレエ団が3年ぶりに来日する。“演劇の国”であるイギリスらしく、ドラマティックな作品を得意とする同カンパニーを率いるのは、2012年から芸術監督を務めるケヴィン・オヘアだ。

現在、芸術監督として14回目のシーズンを迎えたことに対して「自分でも信じられない!」とオヘア監督は言う。
「こんな日が来るなんて想像もしていませんでした。なぜ私が今もこのポジションにいるのか、なぜ私たちのカンパニーが現在のバレエ界でこの位置にいるのかといったことはあまり考えないように努めていますが、常に未来を見据えたいとも考えています。そのためには時折現状を振り返り、バレエ団の現状を把握することも必要です」

オヘア監督にとって、現在の英国ロイヤル・バレエ団はとてもよい状態にある。その理由のひとつが、附属のスクールである英国ロイヤル・バレエ学校から団員を積極的に選んできたことにあるだろう。
「付属の学校から共に成長してきたことが、ダンサーたちに共通の目的意識や同志的な友情、そして成功という目標を抱かせています。
素晴らしいバレエ団の一員であるという誇りが、自分自身を高め、カンパニー内でキャリアを築きたいという想いをより強くしているのでしょう。私たちは広く知られているスターダンサーを多く抱えていますが、ここ5年から10年の間、目覚ましい成長を遂げているダンサーもたくさんいます。今回の日本公演で、カンパニーの進化を感じていただけると思いますよ。ファンの方々の中には、5年前や8年前にコール・ド・バレエで見かけたダンサーが、今やプリンシパルとなって活躍していることを嬉しく思ってくださる方もいるでしょう」

「ダンサーが最高のコンディションで披露できる2作品を」英国ロイヤル・バレエ団2026年日本公演芸術監督 ケヴィン・オヘアインタビュー

『リーズの結婚』よりAndrej Uspenski / RBO
今回の日本公演では、レパートリーの中から『リーズの結婚』と『ジゼル』の2演目が上演される。いずれも踊りの難易度はもちろん、演技面でもダンサーの個性と表現力を問われる作品だが、なぜこの2作品が選ばれたのだろうか?
「ほとんどの場合、直前のシーズンで上演した作品の中から日本に持っていく作品を選びます。それならダンサーたちも準備万端の状態なので、最高のコンディションで日本のお客さまに披露できるからです。今回の日本公演に持っていく『リーズの結婚』は昨年10月に、『ジゼル』は今年2月から3月にかけてロイヤル・オペラ・ハウスで上演したばかりです。ただ、舞台装置が日本に届くまで大抵3~4カ月かかりますので、タイミングを見ながら動く必要がありますね」

「ダンサーが最高のコンディションで披露できる2作品を」英国ロイヤル・バレエ団2026年日本公演芸術監督 ケヴィン・オヘアインタビュー

『リーズの結婚』よりAndrej Uspenski / RBO
昨年、英国ロイヤル・バレエ団で『リーズの結婚』が上演されたのは、実に8~9年ぶりだったという。
フレデリック・アシュトン振付によるウィットに富んだこの喜劇は、半世紀以上にわたってカンパニーの看板作品として親しまれてきた。
「パンデミックの影響もあって、しばらく上演できていなかったのです。それだけに、昨年10月の上演時は、観客もダンサーもこの作品が戻ってきた熱狂に包まれ、大成功を果たしました。世界中がつらく悲しいときを乗り越え、人々が再び劇場に足を運び、愛らしいストーリーと素晴らしい踊りに熱狂する。それは大切なことだと改めて感じましたね」

主人公リーズの恋人であるコーラス役は、オヘア監督が現役ダンサー時代、何度も踊ってきた役である。
「最初にこの作品に出たのは学生時代、学校公演でおんどりの役に選ばれたときです。当時はまだアシュトン卿がご存命で、彼に稽古を見てもらうことができました。カンパニー入団後はコール・ド・バレエを経てコーラスを踊り、それが私のロイヤル・オペラ・ハウスでのデビューでした。
役柄に命を吹き込むことの楽しさを知ったのは、コーラスを踊ったときです。私にとって大切な愛しい役で、思い出すと自然と笑顔になります」

最高のコンディションで届ける名作


もうひとつ、日本公演で上演される『ジゼル』は、41年もの長きにわたって上演されているピーター・ライト振付のバージョンである。この作品のどの点が、カンパニーにとって特別なのだろうか?
「ピーター・ライト版の『ジゼル』において、もっとも重要なのは細部へのこだわりです。あらゆる細かな局面が一つひとつ折り重なり、深く練られ、ひとつの作品になっています」
「ダンサーが最高のコンディションで披露できる2作品を」英国ロイヤル・バレエ団2026年日本公演芸術監督 ケヴィン・オヘアインタビュー

『ジゼル』より(C)2026 Helen Maybanks / RBO
その例としてオヘア監督は「なぜその役の人が、その行動をするのか」が明確であることを挙げる。
「たとえば、普段は質素な衣服しか身につけていない村人が、人生で初めて豪華な服をまとった金持ちに遭遇したら、どのような反応をするのか?貴族の一団は小さな村に到着したとき、どのように振る舞うのか?といった具合に、すべての役柄の行動の理由まで深く考えられているのです」

なかでも、主人公ジゼルの恋人であり、彼女を裏切ることになるアルブレヒトは、その解釈によってキャラクターが大きく変わる。
「私がアルブレヒトを踊った20歳くらいのころは、最初からジゼルに夢中な若者として演じていました。でも年齢を重ねるにつれて、最初はそれほど真剣に恋していたわけではなく、ジゼルが死んで初めて彼女への想いに気づくという解釈に変わってきました。どう解釈をするかで、恋のスタート地点が変わり、物語が変化するのです。
このようにダンサーそれぞれが、それぞれの役柄をどのように解釈し、自分らしい印を刻むかも大変興味深い点だと思います」

「ダンサーが最高のコンディションで披露できる2作品を」英国ロイヤル・バレエ団2026年日本公演芸術監督 ケヴィン・オヘアインタビュー

『ジゼル』より(C)2026 Helen Maybanks / RBO
英国ロイヤル・バレエ団はこれまで、3年に一度のペースで日本公演をおこなっていきた。それは決して当たり前のことではなく、特別なことなのだという。
「ツアーの実現には多くのダンサーやスタッフが必要になるので、近年では我々のような規模の大きなカンパニーがツアーをおこなうこと自体、難しくなってきています。でも、日本へは少なくとも3年に一度以上は定期的に行っているのは、日本のお客さまと素晴らしい関係を築いてきたからです。今では私たちにとって、日本は第2の故郷のような存在ですね」

多くの海外カンパニーが日本の観客を“特別”と讃えるが、オヘア監督にとってもそうなのだろうか?
「私自身、日本に戻るといつもわくわくします。現役ダンサー時代、私は日本で踊ることが大好きでした。今ではそんな日本へ、芸術監督としてカンパニーを連れていけることに心から喜びを感じています。今のダンサーたちにとっても、彼らを愛してくださるお客さまのもとに戻ってくることは喜びでしょう。
また、日本公演は私たちにとって、新たなダンサーを日本のお客さまにお披露目する素晴らしい機会だとも思っています」

最後に「近いうちにお会いしましょう!」と笑顔を見せたオヘア監督。3年ぶりの英国ロイヤル・バレエ団の“今”を感じられる2作品を観ることが、今から待ちきれない。

取材・文:富永明子

<公演情報>
英国ロイヤル・バレエ団 2026年日本公演
『リーズの結婚』

[公演日時と予定される主な配役]
7月3日(金) 18:30
リーズ:マリアネラ・ヌニェス
コーラス:ワディム・ムンタギロフ

7月4日(土) 13:00
リーズ:アナ・ローズ・オサリヴァン
コーラス:スティーヴン・マックレー

7月4日(土) 18:00
リーズ:マヤラ・マグリ
コーラス:マシュー・ボール

7月5日(日) 13:00
リーズ:高田茜
コーラス:カルヴィン・リチャードソン

7月5日(日) 18:00
リーズ:フランチェスカ・ヘイワード
コーラス:マルセリーノ・サンベ

指揮:ホセ・サラサール
演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

『リーズの結婚』
2026年7月3日(金) ~5日(日)
会場:川口総合文化センター リリアフカガワみらいホール(メインホール)

『ジゼル』

[公演日時と予定される主な配役]
7月10日(金) 18:30
ジゼル:マリアネラ・ヌニェス
アルブレヒト:ウィリアム・ブレイスウェル

7月11日(土) 13:30
ジゼル:サラ・ラム
アルブレヒト:平野亮一

7月11日(土) 18:30
ジゼル:ナターリヤ・オシポワ
アルブレヒト:リース・クラーク

7月12日(日) 12:00
ジゼル:金子扶生
アルブレヒト:ワディム・ムンタギロフ

7月12日(日) 17:00
ジゼル:高田茜
アルブレヒト:セザール・コラレス

指揮:マーティン・ゲオルギエフ
演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

2026年7月10日(金) ~12日(日)
会場:NHKホール

関連リンク
チケット情報:
https://t.pia.jp/pia/search_all.do?kw=%E8%8B%B1%E5%9B%BD%E3%83%AD%E3%82%A4%E3%83%A4%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%90%E3%83%AC%E3%82%A8%E5%9B%A3(https://t.pia.jp/pia/search_all.do?kw=%E8%8B%B1%E5%9B%BD%E3%83%AD%E3%82%A4%E3%83%A4%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%90%E3%83%AC%E3%82%A8%E5%9B%A3&afid=P66)
公式サイト:
https://www.nbs.or.jp/stages/2026/royalballet/

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