アリ・アスター監督が明かす「観客が求める“安心”を拒否する」映画作り A24製作『エディントンへようこそ』来日トークイベント開催
A24製作の映画『エディントンへようこそ』が、12月12日(金)より公開される。この度、前作『ボーはおそれている』以来2年ぶり3度目の来日を果たしたアリ・アスター監督によるトークイベントが、10月31日にDover Street Market Ginzaで行われた。
物語の舞台は、2020年、コロナ禍でロックダウンされたニューメキシコ州の小さな町・エディントン。住民たちの不満と不安が爆発寸前の状況にある中、保安官ジョー(ホアキン・フェニックス)は、IT企業誘致で町を“救おう”とする野心家の市長テッド(ペドロ・パスカル)と“マスクをするしない”の小競り合いから対立し、「俺が市長になる!」と突如、市長選に立候補する。ジョーとテッドの諍いは周囲に広がり、SNSはフェイクニュースと憎悪で大炎上。同じ頃、ジョーの妻ルイーズ(エマ・ストーン)は、過激な動画配信者(オースティン・バトラー)の扇動動画に心を奪われ、陰謀論にハマっていく……。
トークイベントでは、前日に行われた東京国際映画祭でのジャパンプレミア上映の熱も冷めやらぬ中、アスター監督が司会や来場者たちの質問に応えた。アメリカでは7月、カンヌでは5月に上映された本作について、監督は「反応は真っ二つ。
でもそれが狙いでした」と明かした。作中では登場人物たちが互いに相手の話を聞かずに声高に叫び、会話が噛み合わない様子が描かれる。そうしている間にもっと大きな問題が襲いかかってくるという展開は、まるでSNSのタイムラインをそのまま映したようなカオス──それこそが現代の縮図だと、アスター監督はニヤリと笑いながら表現した。
『ヘレディタリー/継承』の恐怖、『ミッドサマー』の悪夢、『ボーはおそれている』の不安など、アスター監督の作品はしばしば“カオス”と表現される。なぜ彼の映画にはカオスが映るのかという問いには、「混沌を描くこと、むしろそれが挑戦でした」と回答。Instagramの無限スクロール、Xの炎上など、日常にあふれるカオスをスリラー、陰謀論、ブラックコメディとして魅せながら、物語は誰もが想像しない結末にたどり着く。「観客が求める“安心”を拒否する。それが私のスタイルです」と自身の映画作りについてコメントした。
現代の風刺でもあるのに笑えることで共感が生まれたという感想に、監督は「芸術には2種類あります。答えを出すか、現実を映すか。『エディントンへようこそ』は後者です」と説明。「ニュースが速すぎて消化できない。希望が見えないのは当然」と本作に現代人が共感することに同意しつつ、「この映画が意味を持つなら、時代の“病的”な精神を映していること。恐怖や孤独を共有することで、“ひとりじゃない”と思えるかもしれません」と答えた。
<作品情報>
『エディントンへようこそ』
12月12日(金)公開
公式サイト:
https://a24jp.com/films/eddington/
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