誰かと比べ合わなくていい。中村倫也に聞く、あるがままの自分を受け入れるということ
撮影:奥田耕平
「自分の声は好きじゃないです。でもまあ、しょうがねえなとも思っています」
そう淡々と中村倫也は話す。そこに自虐の色はない。持って生まれたものを、そのまま受け入れる。どこか諦観に近いものを、中村倫也は身にまとっている。
少し鼻にかかった、甘くて、やわらかい中村倫也の声は、聞いているだけで自然と心がおだやかになるヒーリングボイス。ナレーターを務める『劇場版 岩合光昭の世界ネコ歩きあるがままに、水と大地のネコ家族』でもその癒し効果は絶大だ。猫たちに話しかけるような中村倫也のナレーションは、まるでひなたぼっこをしているような心地にさせてくれる。
けれど、中村倫也本人は決して自身の声が好きではないと言う。
「そもそもこの仕事をはじめて最初に衝撃を受けたのが、自分の声を聞いたときでした。俺、こんな声してるのかって。たぶん同じように驚いたことがある人も多いと思うんですけど、自分の中で鳴っている声と、実際に周りの人に聞こえる声って全然違うじゃないですか。その衝撃は大きかったですね」
「ずっと自分の声とは向き合ってきました」
特に、俳優という仕事をしている場合、戸惑いは大きい。