【ライブレポート】TRIAL GATE Vol.3に4組のシンガーソングライターが登場。4者4様の個性を花開かせた一夜
Photo:板場俊
完全招待制によるライブイベント『Invitation to TRIAL GATE Vol.3』が開催。前回のVol.2は代官山UNITで行われたが、今回は再び第1回目のTOKIO TOKYOに場所を戻し、気鋭アーティスト4組による熱演が繰り広げられた。改めてイベントの主旨を説明すると、次世代のライブシーンを担う要注目の新人をフックアップした画期的なイベントとなっている。
Young Kee
今日のトップバッターを飾ったのはYoung Kee(ヤン・キー)だ。2021年8月から活動を始めたばかりの21世紀生まれのシンガーソングライター。その中性的なルックスはどこかミステリアスなオーラが漂っている。ギターとドラムの楽器陣をバックに、甘くも芯の太い歌声で魅了する。また、身振り手振りのアクションを交えて、軽やかに歌い上げる様にも惹きつけられた。
そして、同期を用いた「ムスク」では澄んだ歌声で迫り、ライブハウスの枠内に収まらないポテンシャルを発揮。かと思えば、「Die The Night」ではダンサブルなビートに乗せ、心の揺らぎを表現した荒々しい声色を叩きつける場面もあった。計4曲を披露し、MCらしいMCはなく、最後に「ありがとう」と告げてステージを去っていった。後を引く魅惑の声を聴きながら、彼のパフォーマンスをもっと観たい気持ちに駆られた。
DinoJr.
次は日本人と台湾人の血を引き継ぎ、都内を中心に活動するDinoJr.(ディノジュニア)が登場。ソウル、ファンク、ヒップホップなどを織り交ぜた洗練された音楽性を掲げ、歌とラップを往還する歌唱力に長けている。彼自身もギターを持ちつつ、ギター、ベース、ドラム、鍵盤と4人のサポート奏者を従え、迫力みなぎる演奏をアピール。
「楽しんでいきましょ!」と明るく声をかけた後、「Safari」ではソウルフルなシャウトで楽曲の温度をグッと押し上げていく。
曲が進むにつれ、横に体を揺らす人たちが増え、場内は活気づいていった。
中盤過ぎに「新曲やります!」と言うと、「Bingo」を投下。スローテンポの曲調で、情景が脳裏に浮かぶ歌い回しが印象的であった。「残り2曲、盛り上がっていきましょう!」と元気に呼びかけると、次は「Gimme the Night」へ。DinoJr.はクラップで煽り、観客を巻き込んで温かなパーティー空間を作り上げる。ラスト曲「Sayonarakun」ではロマンチックな鍵盤が響く中、親密な歌メロで語りかけ、徐々に熱を帯びる曲展開も素晴らしかった。
HIKKA
そして、アコギ奏者と共に三番手で現れたのはHIKKA(ヒッカ)。「宮崎から来ました。
故郷の都城市は自然が豊かで、家の周りは田んぼで囲まれている。東京でびっくりしたことは、ローソンに行ったらセルフレジが並んでいた。コンビニにセルフレジあるの?」というMCで笑いを誘う彼女。
いざライブが始まると、凛とした歌声を会場の四隅に行き渡らせる。HIKKAは母親の影響で洋楽に慣れ親しんでおり、それらのカバー動画をYouTube上にアップして注目を集めるようになった。そんな経緯もあり、英語詞もネイティヴのように流暢に歌う。その表現力は他とは一線を画したスキルの高さだ。
後半、「東京と宮崎を行ったり来たりする中で生まれた曲」と説明すると、未完成のオリジナル曲「My Star」を披露。
自ら鍵盤を弾きながら、ハートフルな歌声を聴く者の心根に届けていた。そして、10月30日に地元宮崎県で開催される『THE DROP FESTIVAL 2022 in Japan』への出演を告知した後、オリジナル曲「あさが来るから」で締め括り、その柔和な歌声に癒された人も多かったのではないだろうか。
SennaRin
残すは1組だ。トリを務めたのはSennaRin(センナリン)である。作曲家である澤野弘之がプロデュースした1st EP『Dignified』で今年4月にデビューした彼女。そのパフォーマンスは実に堂々としており、伸びやかなハスキー・ボイスに序盤から心を奪われた。歌声そのものに華があり、一度聴いたら耳から離れない特徴的なヴォーカルと言っていい。バラード風の「Till I」からアッパーな「Limit-tension」まで自在に歌いこなし、フロアを揺らし続ける。
「皆さん、楽しんでいただけてますか?私も楽しいです。東京では初めてのライブで、初のワンマンはサウジアラビアでやらせてもらいました」と挨拶すると、異例のキャリアに会場がざわついた。
後半はアニメ『銀河英雄伝説 Die Neue These 激突』テーマ曲「melt」を披露。ピアノを基調にした静謐なナンバーで、ここでは切迫したエモーションを突きつけてくる。最後は彼女自身が作詞を手掛けた「証」を放ち、曲名通り、自分の存在証明を燃焼させる熱い歌心に圧倒されてしまった。
今回は奇しくも4組のシンガーソングライターが顔を揃え、4者4様の個性を花開かせていた。ここからまたどんな曲を紡ぎ、どんな形で成長を遂げていくのか。次の展開が楽しみで仕方がない。
Text:荒金良介Photo:板場俊
<公演情報>
Invitation to TRIAL GATE Vol.3
2022年9月4日(日) 渋谷TOKIO TOKYO