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【松田聖子トリビュートアルバム徹底解説】中森明菜、椎名林檎、GRe4N BOYZ、FRUITS ZIPPERなど8組が参加したトリビュートで明らかになった輝き続ける理由と普遍性

ぴあ
【松田聖子トリビュートアルバム徹底解説】中森明菜、椎名林檎、GRe4N BOYZ、FRUITS ZIPPERなど8組が参加したトリビュートで明らかになった輝き続ける理由と普遍性


Text:谷岡正浩
昨年末NHK紅⽩歌合戦で⼤トリ後の特別枠に登場して話題となった松⽥聖⼦。昨年11⽉にAmazonおよびAmazon Musicのみで独占先⾏発売された45周年記念トリビュートアルバムの⼀般流通(通常盤)が、2⽉18⽇(水)にリリースされた。
中森明菜、椎名林檎、GRe4N BOYZ、FRUITS ZIPPERなど幅広い世代のアーティスト8組が新たな解釈で挑んだ松田聖子楽曲の今なお輝きを放ち続ける理由とは?各楽曲レビューとともにその尽きない魅力に迫る。


2025年6月にリリースされ、半年近く経った今なお話題になっているアルバムがある。それが、松田聖子のデビュー45周年を記念した作品『永遠のアイドル、永遠の青春、松田聖子。〜45th Anniversary 究極オールタイムベスト〜』だ。

このベスト盤がなぜこれほどまでに愛されるのか、それを証明するのが11月5日にリリースされたトリビュートアルバム『永遠の青春、あなたがそこにいたから。〜45th Anniversary Tribute to SEIKO MATSUDA〜』。
参加した8組のアーティストを見れば、男女問わず、1982年にデビューした中森明菜から2022年デビューのFRUITS ZIPPERまで幅広い世代にまたがっていることがわかる。これがそのままリスナーの縮図として理解できる。人気の尺度として、誰もが知っている状態を“国民的〜”と表すことがよくあるが、松田聖子はまさにそうした存在のなかでも別格のアイコンとして全世代に支持されている。

では、なぜいつまでも彼女と彼女の歌が輝きを放つことができるのか。そのひとつの大きな理由が、松田聖子の楽曲が持つ普遍性だ。誰もが一度は聴いたことのあるメロディが1曲や2曲といったレベルではなく、数十曲という単位で存在するのは、ほとんど奇跡的なことだと言ってもいいのではないだろうか。そして、その曲の多くを生み出したのが松本隆と呉田軽穂(ユーミン)を筆頭とする、日本のポップミュージックシーンをつくりあげた人脈だ。次の言葉は、筆者が松本隆にインタビューをした折に彼が語ったものだ。


「聖子さんの世界観を確立していくのに、僕はこれまでの仲間をどんどん巻き込んでいった。はっぴいえんどの3人(細野晴臣、大瀧詠一、鈴木茂)もそうだし、南佳孝や原田真二、そしてユーミンだ」
※初出:ぴあアプリ「クリエーター人生松本隆」(https://lp.p.pia.jp/article/lifestory/41815/41874/index.html)

それはたとえばすでにあったアメリカのモータウンのように、あるいはまた、少し時代が経ってからイギリスに登場するPWLのように、日本では80年代に入ってすぐ松田聖子を中心とした一種のミュージックファクトリーが出来上がっていた。そこを出発点に今回のトリビュートアルバムに参加したアーティストたちの曲と彼らの解釈でアレンジを施された松田聖子楽曲を聴くと、80年代を源流とするジャパニーズポップミュージックの滔々とした流れを体感することができる。

そして、間違いなく言えるのは、一流のクリエイターが生み出した楽曲を色鮮やかに表現し、リスナーに提示してみせる松田聖子のボーカルがなければ、バトンはどこかで途絶えていただろうということだ。

今回参加した8アーティストによる8曲は、もちろんそれぞれの個性と滋味が感じられるアレンジとなっている。しかし――というかやはり、最大の聴きどころは、歌なのだ。それこそが松田聖子という存在の偉大さの証明に他ならない。ということで、ここからは各楽曲の特徴をレビュー的に掘り下げていきたい。


「瑠璃色の地球」/ GRe4N BOYZ

【松田聖子トリビュートアルバム徹底解説】中森明菜、椎名林檎、GRe4N BOYZ、FRUITS ZIPPERなど8組が参加したトリビュートで明らかになった輝き続ける理由と普遍性


松田聖子の数ある名曲のなかでも屈指のバラードとして知られる楽曲。原曲でアレンジを務めた武部聡志が再アレンジするという特大のトピックに唸らされつつ、さらに驚かされるのが、そのサウンドだ。パイプオルガンとストリングスの重層的な調べに打ち込みのトラックが効果的に配置されている。そして曲が進行していくにつれ、まるで夜が明けるときの光の変化のようにギター、ベース、ドラムといった様々な楽器が一体となって無垢な音楽となる。その音楽の原動力となっているものは間違いなくGRe4N BOYZのボーカルであり、声と言葉があることでこの曲が切実な祈りであることを改めて示すアレンジとなっている。

「Rock’n Rouge」/ REI & LIZ (IVE)

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1曲のなかでこれほどくるくると印象が変化しながら、それでも4分ほどのポップソングとして成立しているというのがこの曲のポイントだ。REIとLIZのキャラクターの違う声でAメロ(跳ねるような明るさ)とBメロ(翳りのあるメロディ)、さらにはサビの前半と後半を歌い分けたのが功を奏している。サウンド面では極太のキックとベース音が軸にありつつ、懐かしい電子ドラムのサウンドやエレキギターなど、80sを意識した音が散りばめられているのも遊び心とリスペクトが感じられる。


「青い珊瑚礁」/ FRUITS ZIPPER

【松田聖子トリビュートアルバム徹底解説】中森明菜、椎名林檎、GRe4N BOYZ、FRUITS ZIPPERなど8組が参加したトリビュートで明らかになった輝き続ける理由と普遍性


令和のアイドルが昭和のアイドル歌謡をカバーするという構図以上に、松田聖子の「青い珊瑚礁」をFRUITS ZIPPERがカバーするという事実の方が遥かにセンセーショナルだ。まず驚かされるのがイントロ。冒頭の二段階でグッと持っていく原曲の疾走感をトラップ風のキックでキメたのは見事。FRUITS ZIPPERの7人の個性が一気に飛び出すようなびっくり箱的なイントロであとは彼女たちの独壇場というカバーになった。サブスク時代の楽曲におけるイントロ不要論がまことしやかに囁かれるなか、イントロのインパクトで(それが長くても短くても)リスナーの心を掴む重要性は不変だということを現代のアイドルがレジェンドアイドルの楽曲で示してみせたことに大きな意味を感じる。
松田聖子の華やかな面のトップラインを描いたともいえる「青い珊瑚礁」は、アイドルの最高峰を目指す者を駆り立てる普遍的な魅力を宿している。

「渚のバルコニー」/ Daoko

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作詞が松本隆、作曲は呉田軽穂、原曲のアレンジは松任谷正隆、そして歌は松田聖子という国宝級のカルテットが生み出した名曲に、Daokoの歌唱と椎名林檎のプロデュース/アレンジで挑んだ意欲作となった。階段を一段飛ばしで降りるような5音のイントロからサビ始まりのメロディ、そしてAメロで一気に下降し、Bメロ、サビと上がっていくというある種歌謡曲離れした上下動を持つこの曲は、ユーミンのメロディの深淵を垣間見るようだ。
そこに対して本格的なオーケストレーションを用いたアレンジは、いわゆるJ-POP的なストリングスのアプローチとは一線を画し、それ自体で成立する組曲のような趣がある。キュートさだけでなくアンニュイな成分も含んだDaokoの声と歌唱が、椎名林檎の張り巡らせた音の物語を鮮やかに立ち上がらせる。その構図がまさに松田聖子ファクトリーを想起させる。細部にまでリスペクトが感じられる、昭和〜平成〜令和をつなぐ日本のポップミュージック史そのもののようなカバーだ。また、⼀般流通となる今作にはボーナストラックとして、椎名林檎アレンジによるM4「渚のバルコニー / Daoko」の砂原良徳によるリミックス⾳源が追加収録される。

「赤いスイートピー」/ 中森明菜

【松田聖子トリビュートアルバム徹底解説】中森明菜、椎名林檎、GRe4N BOYZ、FRUITS ZIPPERなど8組が参加したトリビュートで明らかになった輝き続ける理由と普遍性

写真提供:HZ VILLAGE Inc.
「赤いスイートピー」のリリースと中森明菜のデビューは、同じく1982年だ。松田聖子と中森明菜。80年代を代表するトップアイドルの邂逅が楽曲を通して行われたということに大きな意味を感じる。
徳澤青弦(vc)、ミト(b)、柏倉隆史(ds)、コトリンゴ(pf)といった、幅広いジャンルから集まった個性の強いプレーヤーたちによるアコースティックな手触りのアレンジに包まれた中森明菜の歌唱は、まるで手紙のように一つひとつの言葉をきちんと届けていく。その言葉の向かう先は、もちろん松田聖子本人であり、そして青春を通過したすべての人、という気がしてならない。世間やメディアが求めたアイドル像のコントラストに埋もれていた純粋な”憧れ”と”尊敬”、懐かしさだけでは表しきれない複雑な“あの頃”を明菜の声はそっと肯定してくれる。

「あなたに逢いたくて 〜Missing You〜」/ 大野雄大 (Da-iCE)

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R&Bをベースとしながらも、そこにジャズのフレイバーやJ-POP的要素を絡め、スウィートなバラードに仕上げたカバー。近年の松田聖子作品を手掛ける野崎洋一がアレンジしたことも特筆すべきポイント。前半、エレピを中心としたシンプルなサウンドからドラム、ベース、ギター、ストリングスやホーンと多数のパートが加わり、後半に向かって力強く、かつ煌びやかにボーカルを盛り上げていく。大野雄大のボーカルは繊細なトーンとエモーショナルで迫力のある歌唱をシームレスに行き来し、歌の醍醐味を余すことなく伝えてくれる。彼の歌を聴いていると、音楽が宿命的にあらゆるボーダーを超えていくものであるということを再認識させてくれる。


「蒼いフォトグラフ」/ Suiet

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失恋ソングであるこの曲は、しかし歌詞に登場する女性の主体的な恋の終わりがある種ドライでもあり、それゆえに都会的でもあり、来るべき新しい時代の女性像を予感させたと言える。ホーンのアクセントが印象的な、後にシティポップと言われるサウンドにも重さはなく、むしろその足取りは軽やかで、そんな曲をSuietが彼らしい軽快なポップジャズに仕上げたのは大いに納得ができる。原曲とこのカバーを聴き比べれば、一見距離があるように思えるが、その間にフリッパーズ・ギターを置けば、連綿と受け継がれるジャパニーズポップクロニクルが見えてくる。
20種以上の楽器を使いこなす天才肌のアカデミックなシンガーソングライターであり、若干17歳(当時は”Sui”名義)でバイラルヒットを巻き起こしたTikTok世代の参画に、松田聖子の世代を超えた影響力が示される。

「SWEET MEMORIES」/ 椎名林檎

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全体的にエイジングされたようなエフェクトのかかったローファイなミックスが、不思議な時間感覚を呼び覚ます。懐かしいというよりも、むしろ現代的なアプローチとして“記憶”との間に奇妙なねじれを生んでいる。林正樹(pf)、石若駿(ds)、鳥越啓介(b)のピアノトリオによる盤石の演奏は、モノクロの世界にありながらも時折鮮烈な色を刺すような冴えを見せる。何より圧巻は椎名林檎の歌唱だ。ときに甘えるように、ときに寂しげに、ときに情熱的に、ひとりの女性の人生すべてを垣間見せるような表現に圧倒される。耳元で歌われているような、あるいは手の届かない場所から聴こえるような、我々が音楽というものをどうして求めるのかということへの根源的な問いがこの歌のなかにあるような気さえする。もしかしたらその答えの一端が、「SWEET MEMORIES」という言葉に含まれているのかもしれない。世代を超えたタイムレスな魅力に溢れる今作の締め括りに、これ以上なく相応しい一曲といえる。<リリース情報 ①>
松田聖子トリビュートアルバム
V.A.『永遠の青春、あなたがそこにいたから。〜45th Anniversary Tribute to SEIKO MATSUDA〜』

2⽉18⽇(⽔) 一般流通(通常盤)発売
■通常盤 (通常ブックレット)
3,300円(税込)

配信リンク: https://lnk.to/seiko_tribute0218

【松田聖子トリビュートアルバム徹底解説】中森明菜、椎名林檎、GRe4N BOYZ、FRUITS ZIPPERなど8組が参加したトリビュートで明らかになった輝き続ける理由と普遍性

一般流通(通常盤)ジャケット
1. 瑠璃色の地球 / GRe4N BOYZ
2. Rock’n Rouge / REI & LIZ (IVE)
3. 青い珊瑚礁 / FRUITS ZIPPER
4. 渚のバルコニー / Daoko
5. 赤いスイートピー / 中森明菜
6. あなたに逢いたくて 〜Missing You〜 / 大野雄大 (Da-iCE)
7. 蒼いフォトグラフ / Suiet
8. SWEET MEMORIES / 椎名林檎

Bonus Track.:渚のバルコニー (Yoshinori Sunahara Mix) / Daoko

▼松田聖子トリビュート特設サイト
https://sp.universal-music.co.jp/matsuda-seiko/45th/tribute/

<リリース情報 ②>
松田聖子45 周年記念オールタイムベストアルバム
『永遠のアイドル、永遠の青春、松田聖子。〜45th Anniversary 究極オールタイムベスト〜』
発売中

■45周年記念盤 (CD 4 枚組) :4,950円(税込)
■通常盤(CD 2 枚組):3,850円(税込)

DISK 1※シングルA面をセルフカバー
1. 青い珊瑚礁 ~Blue Lagoon~ 2025 Mix
2. チェリーブラッサム 2021
3. 赤いスイートピー English Version
4. 渚のバルコニー 2025 (新録)
5. 瞳はダイアモンド ~Diamond Eyes~
6. Rock’n Rouge 2025 (新録)
7. 時間の国のアリス ~Alice in the world of time~
8. ピンクのモーツァルト 2025 (新録)
9. Pearl-White Eve 2025 (新録)
10. あなたに逢いたくて 〜Missing You〜 2025 (新録)
11. Shapes Of Happiness (新録)
Bonus Track 赤いスイートピー English Jazz Version

DISK 2※シングルB面をセルフカバー
1. レモネードの夏 2025 (新録)
2. 愛されたいの 2025 (新録)
3. 未来の花嫁 2025 (新録)
4. セイシェルの夕陽 〜40th Anniversary〜 2025 Mix
5. SWEET MEMORIES 〜甘い記憶〜
6. 蒼いフォトグラフ 〜Photograph of yesterdays〜
7. Star 2025 (新録)
8. 瑠璃色の地球 2020
9. 時間旅行 ~I still miss you~
10. ベルベットフラワー 2025 (新録)
11. Stardust (新録)

DISK3※松田聖子選曲によるオリジナル・シングルベスト
1. 裸足の季節
2. 風は秋色
3. 白いパラソル
4. 風立ちぬ
5. 赤いスイートピー
6. 野ばらのエチュード
7. 天国のキッス
8. ハートのイアリング
9. ボーイの季節
10. Strawberry Time
11. Precious Heart
12. きっと、また逢える...

DISK4※松田聖子選曲によるオリジナル・シングルベスト
1. 大切なあなた
2. 素敵にOnce Again
3. さよならの瞬間
4. 私だけの天使 〜Angel〜
5. Gone with the rain
6. 恋する想い 〜fall in love〜
7. 20th Party
8. いくつの夜明けを数えたら
9. 薔薇のように咲いて 桜のように散って
10. 風に向かう一輪の花
11. 私の愛

▼購入はこちら: https://lnk.to/SEIKO_45al_ecWE

松田聖子 オフィシャルサイト
https://www.seikomatsuda.co.jp/

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