熱狂の渦の中、巻き込まれずにいられるか― 草彅剛主演『アルトゥロ・ウイの興隆』観劇レポート
撮影:田中亜紀
あの問題作が再演されている。来年1月中旬まで上演が続く、『アルトゥロ・ウイの興隆』である。ヒトラーが独裁者として上り詰めていく過程を、シカゴのギャングの世界に置き換えて描いたベルトルト・ブレヒトのこの作品。その内容だけでも震撼させるのに十分だが、演出の白井晃はそこに、ジェームス・ブラウンの楽曲を中心としたファンクミュージックの生演奏を散りばめた。その斬新な演出で、劇場は否応なしに興奮が高まる空間となる。その熱狂が初演で大いに話題となって再演が熱望され、今また、さらなる熱を帯びて、帰ってきたのである。
シカゴのギャング団のボス、アルトゥロ・ウイを演じるのは草彅剛。松尾諭、渡部豪太らがギャング団に扮し、彼らに騙されたり操られたりしながらどんどん言いなりになっていく人々を、神保悟志、小林勝也、榎木孝明、七瀬なつみら実力派が演じて、この世界の異様さを見せていく。
始まりは、地元で長く活躍してきた政治家の不正の情報をウイがつかんだという小さなことだったのだ。だが、それをきっかけに、あらゆる手段を使って勢力を拡大し、人々が恐れる存在へとのし上がっていくウイ。その過程と平行して、ヒトラーの実際の行動を字幕で示すという趣向も施され、その瞬間、これが単なるギャングの話ではないということをいちいち思い知らされる。
しかし、それでもやはり冷静に観てはいられない。何しろ、幕開きから観客は煽られっぱなしなのだ。舞台上に設置されているのは、さながら音楽ショーのセット。そこでオーサカ=モノレールの面々が生演奏を始め、出演者たちも登場して踊り出す中、ヴォーカルの中田亮扮するMCが、今からショーが始まるのだと説明する。そう、これは本当にショーなのである。
そして、「さあ、ご紹介しよう!われらがアルトゥロ・ウイ!」という声とともに、マントを被った草彅がさっそうと現れる。草彅は、ジェームス・ブラウンの曲を歌い、踊り、MCと掛け合って、ダンサーと絡み、まさしくファンクに暴れまくる。
劇場はみるみるうちにライブハウスの様相を呈していき、立ち上がるまではしなくとも、音楽に合わせて動く身体を押さえきれなくなるのである。しかも、客席に向かって歌い踊り声を上げる草彅は、激しさのみならず、ときにどことなく色っぽさも漂わせるのだ。芝居の中でもトップに立つ孤独まで匂わせる草彅。硬軟自在に客席を翻弄し、独裁者の真の怖さを感じさせる。
恐怖に支配されたシカゴの人々が、抵抗虚しくウイにひれ伏したとき、このショーは終盤を迎える。舞台上では、一層激しい音楽が繰り広げられ、ライブとしての楽しさを存分に浴びることになる。
だが、その熱狂の渦の中、舞台上の人々全員が手を上げながら客席に迫ってくるとき、果たして、自分はそこに巻き込まれずにいられるだろうか。その恐ろしさは、生の劇空間でしか味わえない。
取材・文:大内弓子撮影:田中亜紀
『アルトゥロ・ウイの興隆』チケット情報
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2184301
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