目黒ゆかりの画家、岡田謙三の個展が目黒区美術館で 2メートル超の大作が織りなす「幽玄」の世界を体感
戦前の日本人画家の欧米への留学中の作品を収集方針の一つに掲げる東京の目黒区美術館で、1920年代にはパリで、また1950年代以降はニューヨークで制作活動を展開した画家・岡田謙三の個展が、2月21日(土)から5月10日(日)まで開催される。
横浜で生まれた岡田謙三(1902-1982)は、東京美術学校(現・東京藝術大学)入学から約2年後の1924年にパリに渡った。第一次世界大戦終結後の当時のパリは、世界各国から芸術家が集い、活気に満ちあふれていた時代。若き日の岡田にとっては、全てが新しく、視野の広がる経験となった。モンパルナスのカフェに集まって議論していた芸術家たちの仲間に加わった岡田は、後年に確立する抽象的な作風の基礎となる考え方にも触れ、のちにこの時代のことを「心の訓練のようだった」と振り返っていたという。
岡田謙三 《巴里風景》1938年 油彩・キャンバス 53.0×65.2cm 秋田市立千秋美術館蔵
1927年の帰国後の岡田は、戦前から戦後にかけての時代のうねりの中で、これまで培ってきた技巧や様式から離れ、新たに実験の日々を積み重ねていった。その間、1935年には、目黒区の自由が丘にアトリエを構えている。1950年に渡米を実現させると、ニューヨークでは抽象表現主義の画家と交流をもちながら次第に抽象へと転じ、淡い色面を組み合わせた独自の作風を確立させた。
岡田謙三 《黒と象牙色》1955年 油彩・キャンバス 182.5×215.5cm 横浜美術館蔵
自身の根源的な感性に回帰するなかで築き上げた静謐で力強い表現は、パリとニューヨーク、そして目黒のアトリエでの模索の日々を抜きに語ることはできないという。今回の展覧会は、その岡田の画風の変遷を三つの都市での経験からたどり、その独自の作風の確立過程を紐解くものだ。
今回は、同館の所蔵作に加え、複数の公立館から出品された貴重な出品群によって、初期から渡米後までの作風の変遷をたどるとともに、画材や素材、コラージュやフロッタージュ等のエスキース、写真資料などによって、岡田の人物像や制作の様子にふれることもできる。
岡田謙三 《ダブル・ランドスケープ》 1974年 油彩・キャンバス 198.0×458.0cm 群馬県立近代美術館蔵
ニューヨークで花開いた画風を方向づけるキーワードとして、岡田自身は「幽玄」という言葉をもとにした造語「ユーゲニズム」を打ち出し、奥深く微妙、味わい深く情趣に富むといった意味を言い表していた。2メートルを超える大作も多数展示される会場では、その「幽玄」の世界をたっぷり味わえることだろう。
<開催情報>
『岡田謙三パリ・目黒・ニューヨーク』
会期:2026年2月21日(土)~5月10日(日)
会場:目黒区美術館
休館日:月曜、2月24日(火)、5月7日(木)(※ただし2月23日(月・祝)、5月4日(月・祝)は開館)
時間:10:00~18:00(入館は~17:30)
料金:一般900円、大高生・65歳以上 700円
公式サイト:
https://mmat.jp/index.html