くらし情報『純粋ゆえに深い悔恨を共鳴させる、真っ直ぐな二人 『スリル・ミー』Review2 木村達成×前田公輝 ピアノ:落合崇史』

2023年9月19日 12:00

純粋ゆえに深い悔恨を共鳴させる、真っ直ぐな二人 『スリル・ミー』Review2 木村達成×前田公輝 ピアノ:落合崇史

いざ迎えたゲネプロで目にしたのは、予想を嬉しく裏切る劇世界だった。何の企ても計算もない、作品の本質を真っ直ぐに見据えて直球を投げ込む、純粋でシンプルゆえに深い悔恨を観る側にも共鳴させる、そんな100分間だ。

純粋ゆえに深い悔恨を共鳴させる、真っ直ぐな二人 『スリル・ミー』Review2 木村達成×前田公輝 ピアノ:落合崇史

純粋ゆえに深い悔恨を共鳴させる、真っ直ぐな二人 『スリル・ミー』Review2 木村達成×前田公輝 ピアノ:落合崇史


冒頭に現れる50代の“私”、木村はその諦観を陰影濃く表出させたかと思えば、次の瞬間には“彼”をひたむきに追い、すがる少年の“私”に変化した。汗を滴らせ、顔をクシャクシャに歪めて感情を爆発させる木村の、素直に“私”として息づく姿に、情を移さずにはいられない。前田“彼”の、怖いもの知らずの不敵な笑みも、傷心に凍りついた横顔も強い印象を残す。窃盗のスリルを幼児のようにはしゃいで喜ぶ様子はおぞましくもあって、感情の揺らぎをストレートに見せて来る“彼”だ。不遜にふるまいながらも“彼”も“私”を特別な存在だと認めている、そうした安堵すら漂わせて、初顔合わせの木村と前田が、“私”と“彼”が重ねて来た日々、二人の確かな結びつきをしっかり作り上げて来たことに驚いた。
純粋ゆえに深い悔恨を共鳴させる、真っ直ぐな二人 『スリル・ミー』Review2 木村達成×前田公輝 ピアノ:落合崇史

純粋ゆえに深い悔恨を共鳴させる、真っ直ぐな二人 『スリル・ミー』Review2 木村達成×前田公輝 ピアノ:落合崇史


ミュージカルというよりもストレートプレイの感覚で作品を伝えたい、そう語っていた二人の思い通り、台詞から歌に移行する際の感情の流れによどみはなく、澄んだハーモニーにも引き込まれた。

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