「答えじゃなく共感をくれる、演劇というツールの特性が生かされた作品です」~ミュージカル『next to normal』演出家・上田一豪インタビュー~
その頃の僕は日本での活動に限界を感じ始めていて、外国で勉強したいなと思って、留学先を調べるためにニューヨークに行っていて。その合間に観たうちの1本が『N2N』なんですが、ミュージカルでここまでのドラマを表現できるんだ、と感銘を受けました。映画だと、2ミリくらいの感情の動きも、たとえば瞳だけを撮ったりすることで伝えることができますが、舞台だとなかなかできないですよね。でもこの作品は、小さな感情の動きを丁寧に繊細に、しかも音楽によってエネルギッシュに伝えていた。僕の中にあった、“ミュージカルってこういうもの”という固定概念を壊してくれた作品です。
――ではその時から、いつか日本で自分が演出したいと?
僕は、すごく好きな作品は、自分で演出したいとはあんまり思わないんですよ。演出込みで好きになってるから、自分がそれを超えられるとは思わない。だからダイジェスト版のお話をいただいた時も、この素晴らしい作品が日本でまた上演されることは喜ばしいと思ったし、ほかの誰かが演出してるのを観るのは悔しいからその意味でも嬉しかったですけど(笑)、やっぱりすごく怖かったですね。
シアタークリエの開館10周年を記念したコンサート『TENTH』(2018年)