石丸幹二が円熟味を増した多彩な表情と歌声で魅了 音楽劇『ライムライト』上演中
また、同じく今回初参加のダンサー役・中川賢も、アンサンブルとして多くの役柄をこなしつつダンスシーンで本領を発揮。おおらかでしなやかな動きを見せつつ、リフトの安定感や堂々とした立ち姿も目を惹いた。
そして何より心に残るのは、円熟味を増した石丸のカルヴェロの多彩な表情だ。全盛期の舞台と、自分が人気スターであることを自覚しているが故の傲慢さと、その後の挫折による痛々しさ。長年の付き合いであるオルソップ夫人との息の合ったかけあい(実際に劇団時代からの長い付き合いであるふたりだからこその絶妙さが心憎い)や、テリーに見せる優しさとその反面の厳しさ、ネヴィルに対しても嫉妬を見せることなく彼を大切にする姿。カルヴェロは、年老いた自分が若い彼らに何をしてあげられるのかを考え、スポットライトから外れるかのようにそっと去っていこうとする。まさに人生の酸いも甘いも知った人間だからこそ、という奥深さが、ベルベットのような歌声にのせて届けられるのだ。このようにしみじみと心に染み入る感動を覚えるのは、音楽劇というあり方だからこそ。文字通り、石丸のはまり役のひとつだとあらためて実感した。
この先の人生を導く光と、人生の最後に見つけた光
作中に登場する「ライムライトは魔法の光、愛する君のため輝く光」