【ライブレポート】想像の遥か上を行く化学反応が起きたWienners×SPARK!!SOUND!!SHOW!!『びりびり!』東京公演レポート
混ぜるな危険。この言葉を腹の底から噛み締めたツーマンライブであった。Wienners×SPARK!!SOUND!!SHOW!!による共同企画『びりびり!』の東名阪ツアー。そのツアー初日はライブハウス「渋谷近未来会館」(※2021年12月にオープン)で行われ、香港の廃墟をイメージしたという内装は2バンドの音楽性にもマッチしており、キャパ300人のハコは完全ソールドアウト。
タナカユーキ(Vo/Gt)
「声出せるらしいんで、そういう曲やります!」とタナカユーキ(Vo/Gt)が言うと、SPARK!!SOUND!!SHOW!!(通称:スサシ)は「GODSPEED」で勢いよくスタート。電子音が飛び交う中、フィジカルを揺さぶる演奏に加えて、合唱パートでも会場を焚きつけていった。イチロー(Ds/Cho/169)のドラムが激しさを増すと、「SCAR」へ。タクマ(Syn/Gt/Cho)のヘヴィなギターも楽曲の邪悪さを際立たせ、こちらの意識を掻き回してくる。
イチロー(Ds/Cho/169)
タクマ(Syn/Gt/Cho)
「うるさくて、速い曲しかやらない」とライブ中に話していた通り、まさにそんな楽曲のオンパレードだ。真夜中の暴走族よろしくバイク音が鳴り響くと、「†黒天使†」をプレイ。アクセルを吹かすポーズでバンドと観客が一体化する光景は何度観ても最高だし、何度観ても笑いが込み上げてくる。また、タクマはスピーカーの上で弾く場面もあり、場内のテンションは右肩上がりに上昇。
チヨ(Ba/Cho)
ユニークなミクスチャーロックで迫る「かいじゅうのうた」を経て、「Wiennersが僕らとやるということで、気合いを入れてる」とチヨ(Ba/Cho)はコメント。その言葉からも、この2バンドがいいライバル関係を築いていることが伝わってきた。ラウドかつポップな「ダンザーラ」、久々にやるという「OEO」を経て、「次の曲、踊らないでください」と釘を刺すと、「踊らない」をプレイ。タナカはモンキーダンスに励み、チヨは荒々しいシャウトを決める様にもシビれた。
「今日一番静かな曲やります」と言うと、メロディアスな「ゆーれい」を披露。それから再び「ここからうるさい曲をやる!」と言うと、キャッチーな「Swinga!」、ディスコ調の「HAPPY BIRTH DIE」と繋ぎ、観客は手を上げてジャンプし、会場をクラブ化させていた。
SPARK!!SOUND!!SHOW!!
そして、Wiennersのアサミサエを迎えた新曲「SKIMMING ME!!」を投下。ポップな疾走ナンバーは痛快で、続く「YELLOW」ではタナカがマイクを向けて観客に合唱させる。ラストの「南無」ではイントロから激しいクラップが沸き上がり、タナカは天井のパイプに足をかけて宙吊り状態で叫んだりと、やりたい放題の爆発力を発揮した。
SPARK!!SOUND!!SHOW!!
この盛り上がりを受け、Wiennersはどんなパフォーマンスを見せてくれるのか。「渋谷、びりびりしてる?」と玉屋2060%(Vo/Gt)は呼びかけ、テクニカルなギターをイントロに「ANIMALS」で幕を開けた。ファスト&ヘヴィな曲調でフロアをいきなり着火。
「レスキューレンジャー」で演奏は加速度を高め、アラビアンなメロディを配した「YA!YA!YA!」も凄まじい盛り上がりを記録。ド頭の3連打から見事な攻めっぷりである。
玉屋2060%(Vo/Gt)
もはや箸休めという言葉はない。「MONSTER」においても前のめりのハイテンションぶりで、すぐさま「Kindergarten Speed Orchestra」に移る。玉屋2060%、アサミサエによる男女ツイン・ボーカルはもちろん、パンクとクラシックを融合させた曲調に心は弾むばかりであった。「Justice 4」に入ると、踊る人たちが増え、会場はパーティー感に彩られていく。プログレッシヴ・ハードコアの「Go Anti Go」をやり終えると、「オレらもうるさい曲しかやらない」と宣言。やはりスサシに合わせて、セットリストを攻め攻めの選曲にしたのだろう。
それこそが、ツーマンライブの醍醐味である。
アサミサエ(Vo / Key / Sampler)
「恋のバングラビート」では、スサシのタナカがラップで参加して援護射撃。その熱気を「MY LAND」で押し上げると、「BIG BANG」へ。玉屋2060%とアサミサエはハンドマイクでヒップホップ調の楽曲を乗りこなす。また、ここでは∴560∵(Ba/Cho)はギターを弾き、フレキシブルに編成を切り替える手腕も光っていた。
KOZO(Ds)
「ちょっとずつみんなの声が聴けてうれしい。3年ぐらい聴けなかったから。声があるとないでは、ライブハウスは違うね」と玉屋2060%もご満悦の様子だ。
「BRAVES」では「そう今日も明日もずっと先の未来を繋ぐ光へいざ行け」の歌詞がステージ背後にあるライブハウス名「渋谷近未来会館」の電飾とリンクし、高揚感を煽られてしまった。「TRY MY LUCK」を挟み、「SOLAR KIDS」ではフロント3人のボーカルが活かした灼熱サウンドで会場全体を照らす。
∴560∵(Ba/Cho)
本編を「GOD SAVE THE MUSIC」で締め括った後は、アンコールへと突入。けれど、ここでなぜかスサシのイチロックが現れた。どうやら玉屋2060%に曲を書いてもらったようで、そのソロ曲を披露(しかも2回!)。「いろんな曲を作ってきたけど、(フロアの盛り上がりを見て)こんなに手応えあるのは初めてだわ(笑)」と玉屋2060%。それからイチロックがドラムを急遽務め、「LOVE ME TENDER」を披露。賑々しいコラボにより、歓喜の向こう側に連れていく大フィーバーぶり。
Wienners
ライブを終え、想像の遥か上を行く両者の化学反応、相乗効果に驚きを隠せなかった。お互いに音楽性は違うものの、多ジャンルを織り交ぜた無二のサウンドという意味では相通じるものを感じた。少しずつライブハウスらしい活気が戻りつつある今、もっとも危険なツーマンライブに観客も大満足したに違いない。
Text:荒金良介Photo:Taka"nekoze photo"、かい
<公演情報>
Wienners×SPARK!!SOUND!!SHOW!!共同企画『びりびり!』
11月8日(火) 渋谷近未来会館