2022年4月14日 07:00
やっぱり、天海祐希はカッコいいのである。 演劇ジャーナリスト・大島幸久が観た『広島ジャンゴ2022』【ネタバレあり!】
撮影:引地信彦
やっぱり、天海祐希は格好いい。様々な場面風景の中でもカッコ良かった。
耳が痛くなる轟音と共に開演した第1幕。そこは大きな牡蠣工場。牡蠣といえば広島。多くの男女が働き、広島といえばプロ野球の広島カープ。やがて応援歌、「カープ、カープ、カープ広島」の大合唱。ところが唯一、場違いのように黙々と牡蠣をむき出す作業を続ける女性、それが天海が演じる山本。
従業員仲間の誘いに耳をかさず、口数が少ない。天海は作業着で静かな佇まいからして、カッコいいのである。
撮影:引地信彦
「すいません、明日はせっかくの休みの日」。こんな台詞から始まった。娘がいるシングルマザーでパートタイマー。これまでの役柄と大違いのごく普通の主婦だ。しかし、そんな訳はない。天海本来の弾ける役どころがあるはずだ。
この女性は、亭主を殺したというのである。
作・演出の蓬莱竜太は主に等身大の家族、家庭、人物や集団を書いてきた。ただし、登場人物は心に一物、背に荷物を持つような背景がある人々だった。
母親の山本は突然、ガラリと別人になる。鈴木亮平が演じる工場のシフト担当・木村が見た夢の中に登場した。そこは西部の町ヒロシマ。