名もなき人々の姿を生き生きと描き出す 文学座11月公演『五十四の瞳』開幕
映画『月はどっちに出ている』や『愛を乞う人』の脚本、また自身で映画化も手掛けた舞台『焼肉ドラゴン』などで知られる鄭義信(チョン・ウイシン)。彼の新作『五十四の瞳』を文学座が11月6日(金)より東京・紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYAにて上演する。
舞台は戦後間もないころの瀬戸内海に浮かぶ小さな島。採石業が唯一の産業であるこの島には学校がひとつしかなく、それは朝鮮人学校だった。そこで教師をしている柳仁哲(ユ・インチョル)と新しく赴任した女性教師、康春花(カン・チュンファ)の指導の下、日本人も朝鮮人も分け隔てなく学んでいたが、ある日、占領軍(GHQ)が全国の朝鮮人学校閉鎖を宣言する。これに対し大阪や神戸で大規模な抗議デモが巻き起こり、島の少年たちも神戸の抗議デモに参加するため、親や先生に内緒で飛び出していき・・・・・・。
日本生まれの在日コリアン三世である彼が描く群像劇は、自らの人生に裏打ちされた、たくましく生きる人々の笑いや記憶が満ちている。今作でも、戦争も貧しさも差別も超えて、教育を守ろうとした名もなき人々の生き生きとした姿を描き出す。
演出は、鄭義信作『冬のひまわり』(文学座アトリエの会)