ハンブレッダーズが、アルバム『はじめから自由だった』リリースワンマンツアーを完遂 地元・大阪では初の2デイズ開催【ライブレポート】
Photo:松本いづみ
Text:服田昌子Photo:松本いづみ
ハンブレッダーズが4thフルアルバム『はじめから自由だった』を携えて全国12カ所14公演を巡る『はじめから自由だったワンマンツアー』を行った。今回はツアーの11カ所目、バンドの地元・大阪で開催された自身初となるワンマン2デイズ。ムツムロ アキラ(vo&g)も「実質ファイナル」と表現したように、ツアー日程も大詰めとなり4人のパフォーマンスにも磨きがかかった5月31日Zepp Osaka Bayside2日目の模様を紹介する。
彼らにとって会場のZepp Osaka Baysideはワンマンでは初登場の場所だが、大阪はホームタウンとありチケットはもちろんソールドアウト。開演前にもかかわらず熱気に満ち、大歓声がいつものムツムロによる口上をかき消すほどだ。そして注目の幕開けはギターもべースもうなるイントロから、アルバム『はじめから自由だった』の最後を飾る曲「THE SONG」。シングル表題曲としてリリースした時からの人気曲とあり、フロアは一気にヒートアップする。さらに「全部 全部 全部」のコールも高らかな「ギター」と、痛快なギターと不敵なボーカルがクセになる「サレンダー」を連ね、わずか3曲で真夏の体感温度に。
ムツムロ アキラ(vo&g)
この盛り上がりにムツムロも「テンションがいいですね、大阪。帰って来たって気がする」と話し、次は“ハンブレ的”ダンスチューン「DANCING IN THE ROOM」へ。ミラーボールの光が降りそそぐなか、軽やかなプレイと歌声でリラックスした空気をつくりつつ、でらし(b&cho)とukicaster(g)の見せ場でも沸かせたら、直後は「ワールドイズマイン」という無限の上昇。今夜も耳に残るギターリフとキャッチーなサビが心をがっちりつかんで観客のバウンドも止まらないが、続くクラップを伴う「またね」でも甘酸っぱさをまとうメロディと、強い絆を描く浸透力の高い言葉でハートを刺激し、大観衆をますます夢中にする。
でらし(b&cho)
ムツムロは「ツアーをやってきて、全カ所でいい景色を見せてもらってうれしいなと思ってたんですけど、やっぱ大阪、ちょっと違う気持ちになるっていうか。ありがとうございます」と感謝を述べ、次なる着火は「見開きページ」。たくさんの拳を上下させ、「出会ってしまったんだ」と今宵の邂逅を脳裏に焼きつける。加えて「初めはこんなつもりじゃなかったんですよ。
遊び半分でバンドを始めたんで。でも、この人生でよかったなって心から思います」(ムツムロ)と鳴らしだす「ビートアディクション」では、バンドの歩みも感じさせて人々の歌う声もクレッシェンド。熱くなる会場に向けてムツムロが「俺たちはハンブレッダーズというバンドです。誤解のないように言っておきたいんですけど、邦ロックバンドじゃなくてロックバンドです」と落ち着いたトーンで矜持を示して「十七歳」へ。
青い時代の葛藤は、木島(ds)のシャッフルビートと、ムツムロとでらしとukicasterがご機嫌にリレーするようなアンサンブルで昇華され、ひと呼吸おいたあとの「約束」ではセンチメンタルな旋律とストーリーで聴く者を釘づけにして終盤に燃焼。だが、そんな集中のなかに放つスローでドリーミーな「ひらがな」は効果絶大となり、曲前にムツムロが口にした“とがってた気持ちがどんどん丸みを帯びてやさしくなっていく”という形容がドンピシャ。うっとりと聴き入る人も続出する。
木島(ds)
そして迎えた折り返し地点のMCは、通常どおりのアットホームな雰囲気。
初めての2デイズに関して、「どういう気持ちでいけばいいんだろうって戸惑わなかった?」とでらしが振ると、ムツムロが即答で「いや、全然」と答え、木島も「朝8時に起きて気持ち作ってきたよ!」と返して笑わせる。約7分かけて和ませ、でらしが、「初めて来た人はびっくりしたと思いますが、僕たちこれくらいMCがグダグダしてます(笑)」と解説すると、ムツムロが「キリッとやってみますか?」と逆転を試みるものの、すぐにくじけて「ダメですかね。今からシュッとした感じになるのは。無駄な抵抗でしたか…」と、間髪入れずに「無駄な抵抗」を投下。
その見事な伏線回収に感嘆の声が上がるうえ、ミュートをはさんでボリュームをアップ&ダウンするなどの遊び心を交えたアクトでオーディエンスはもれなく笑顔に。楽しさもマックスになるが、次はアグレッシブな「才能」でムードを変え、巻き舌気味のボーカルや切り裂くギター、ベーススラップで拳を突き上げさせると、曲後の歓声もひと際大きくなる。しかし、まだまだとばかりに続くのは木島オンリーのドラムソロ。高速の切れ味鋭いドラミングには客席もたかぶるばかりだ。
ところが舞台に3人が戻ると、より一層に疾走するかのごとく「ペーパームーン」と「ヤバすぎるスピード」をシームレスに展開。全開で直球のロックはせつなさでヒリヒリさせながらも、細かに刻むファンの手拍子が曲の一部になって一体感も。人気曲の「フェイバリットソング」で追い打ちをかければ、観客はビートに跳ねてコールも特大。4人の声がひとつになって音楽愛をダイレクトに届け、すべての人の思いも同じくひとつに。演奏後にはムツムロから「たのしー!」の声がもれ、でらしも思わず「あと1時間ぐらいやろうよ(笑)」のひと言。ムツムロは「やっぱもらうんですよね、ライブに来ると俺たちは。力をもらって、それを還元するために次の曲を作ろうって。だから今日のこともまた歌にしようと思いますし、また新しいアルバムを作ってツアーをするんで待っててください」と語り、いよいよラストスパートに突入。
まずはムツムロが「俺たちはいつだって曲を投げるんで、グーでキャッチして!」と呼びかけたなら、エモーショナルにシンガロングのサビから「グー」。きつく握られた手が頭上を埋める壮観な眺めが広がり、アルバム表題曲「はじめから自由だった」で最終へ。彼ららしいさわやかなギターロックが躍動し、みんなで声をそろえる“はじめから自由だった僕ら!”のフレーズとアンセミックなコーラスでひとり残らず明るい未来へ。まさに最高潮に達してフルスロットルのままゴールテープは切られた。
当然、客席には“アンコール!”のリフレイン。うれしい延長戦は「大阪の人にやっぱ好っきゃねんという気持ちを伝えるべく、新曲を持ってきました」(ムツムロ)と、新曲「ビリビリ(仮)」で爽快にリブートする。ムツムロの胸の内を映し出した新しいナンバーは、徐々に熱を上げて突き抜け、曲後の「ビリビリしましたか?」(ムツムロ)という問いへの答えは大きな拍手。リスナーの満足度がうかがえる。
「今日はみんないっぱい歌ってくれたんで、次は俺が歌います!」と、ムツムロが宣言して「BGMになるなよ」で締めくくり。曲に込めた強く生きるためのメッセージは熱量たっぷりの声とサウンドにのって観客の背中を押し、感動のフィナーレに。メンバーが立ち去りしばらくしても“もう一回!”のリクエストが続く、白熱の約100分全20曲となった。今ツアーを経てパワーアップした4人は、向かう所敵なしの様相。その姿は10月9日(水) の日本武道館公演「ハンブレッダーズ ワンマンライブ 放課後Bタイム ~15th Special~」で確かめてほしい。
<公演情報>
ハンブレッダーズ “はじめから自由だった” ワンマンツアー
2024年5月31日(金) 大阪・Zepp Osaka Bayside