年間維持費は数億円!?『ダウントン・アビー』完結編、専門家が明かす貴族生活の過酷な実態
1月16日(金)に公開される映画 『ダウントン・アビー/グランドフィナーレ』。その劇中で描かれる貴族たちの生活についての、英国アンティーク博物館(BAM鎌倉)土橋正臣館長による解説が公開された。
20世紀初頭のイギリス・ヨークシャーを舞台に、貴族クローリー家とその屋敷で働く使用人たちの人生を描くドラマシリーズ『ダウントン・アビー』。2010年9月の放送開始以来、2015年のシーズン6までの全52エピソードをもって幕を閉じた本シリーズは、2019年に劇場版として復活し、社会現象となった。完結編となる本作では、ついに時代は1930年代に突入し、近代社会に足を踏み入れたクローリー家と使用人たちのドラマが描かれる。
これまでシリーズを観たことがない人にとっては、優雅で煌びやかな世界というイメージが強いと思われる本作。しかし、土橋館長の解説では、その華やかさとは正反対の「タフでハードな裏側」が明らかとなった。
土橋館長は、広大な屋敷と領地を維持する貴族の生活を“まさに家族経営の企業そのもの”と定義する。
食器や家具のメンテナンス、修復、そしてそれらを担う多くの使用人を雇い続けるコストは、現代の価値で年間数億円単位にのぼる。その膨大な維持費を捻出できなければ家が滅びてしまうという、常に没落の危機と隣り合わせの切羽詰まった実態があった。
『ダウントン・アビー/グランドフィナーレ』(C)2025 FOCUS FEATURES LLC.ALL RIGHTS RESERVED
劇中で描かれる厳しいマナーやドレスコードの数々も、単なる贅沢ではない。土橋館長は、規律が緩むことは現代でいう「ブランディングの崩壊」を意味し、価値を失えば誰も見向きもしなくなるため、彼らは自らの誇りを保つための「武装」として自分たちを律していたのだと分析する。
物語を支えるもうひとつの主役である「使用人」たちの日常も、現代の想像を絶するハードなものだった。指紋ひとつ許されない銀食器(シルバー)の輝きを保つだけでも、執事たちが自らの誇りをかけて挑む、過酷な肉体労働を伴うプロの仕事が必要となる。また、水洗トイレが普及していない時代、主人が用を足した「おまる」を取り出して捨てるのは、献身的な使用人の日常的な業務であった。主人の秘密をすべて握りながらも、決して口外せず「見えない存在」として振る舞う彼らのプロ意識が、貴族の優雅な生活を下支えしていた。
また、本作が映画ファンを惹きつける最大の要因のひとつとして挙げられる、その圧倒的な本物志向。土橋館長は、その凄さを「再現ではなく、本物を使っていること」だと語る。舞台となるハイクレア城に代々伝わるアンティークや、歴史を表す希少な「ピリオド品」(アンティークを超えたアンティーク品のこと)がそのまま使用されており、そこには年月を経て得られた美しさ「パティナ(古艶)」が宿っている。
完結編となる本作では、1930年のイギリス社交界を舞台に、伝統が新しい時代の波にさらされる姿が描かれる。豪華な衣装や宝石の美しさの裏にある、人間の泥臭い努力とプライド。土橋館長が語る「歴史の裏側」を知ることで、初めて本作に触れる人も、そのドラマチックな世界に深く没入できるはずだ。
<作品情報>
『ダウントン・アビー/グランドフィナーレ』
2026年1月16日(金)公開
公式サイト:
https://gaga.ne.jp/downton_abbey_the_grand_finale/
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