ODD Foot Worksが2023年の活動を総括 年末恒例のLIQUIDROOMワンマン開催【ライブレポート】
写真:信岡麻美
ロック、ポップス、ラップ、ダンスミュージックと、様々なジャンルをクロスオーバーし、自身たちの音楽として染め上げた楽曲を発表し続けている3人組音楽ユニット・ODD Foot Works(以下OFW)。彼らの恒例となっている年末のワンマン公演が、12月21日、恵比寿LIQUIDROOMにて行われた。
ラッパー・Pecori、ギター・有元キイチ、ベース・榎元駿で構成されるOFW。2023年も「Love Is Money?」や「Feet Feet」、「あなたの走馬灯に出れたら」といった楽曲リリースに加え、『VIVA LA ROCK 2023』などの数々のフェスや『OFF-SIDE ODD Foot Works×SUSHIBOYS』『SHIBUYA CLUB QUATTRO 35TH ANNIV. “NEW VIEW”/RHYMESTER×ODD Foot Works』などのイベントを通して、その存在性を確かなものにしてきた。その意味でも「2023年のOFWの活動を総括する」という性格を持つ今回の『CHEERZ』には、当然のことながら大きな注目が集まり、年末の平日という条件にも関わらず多くの観客が会場に集った。
この日のライブでまず興味を惹かれたのは、ライブ冒頭の構成だ。12月リリースの「あなたの走馬灯に出れたら」からスタートし、2020年の「KEANU」、2018年の「Bebop Kagefumi」、2017年リリースのデビュー作に収録された「Tokyo Invader」へと、現在から結成当初までを、時間を逆流しながら楽曲を直列させ、展開させていく。その流れは、彼らが結成当時から現在までしっかりと通底させている「自分達の音楽の普遍性」を信じていなければ難しい構成だろう。
事実、その展開についてMCなどで全くエクスキューズをつけなくとも、オーディエンスがそこに違和感を感じずに踊っていた光景は、彼らのその意志と表現に間違いがないことを、ライブとして、音楽として証明していた。
もう一つ感じたのは「有機体としてのOFW」の凄味だった。結成当初からライブにおいてギターとベース、ラップは生演奏、ドラムやビート、エフェクトに関しては打ち込みで構成され、「DTM/シーケンスとバンドとの折衝」という形でライブを展開してきたOFW。実際、それによるいわゆる通常のバンドとは違う独特の鳴りや、人力とバンドが噛み合ったときのスリルが、OFWのライブの魅力だった。
そして、その「スリル」が以前よりも色濃くなり、ライブアクトとしての強さがパフォーマンスとして表出されたのが、ここ1年の、2023年のOFWだったと筆者は考えていた。そういった構造が「GIRAGIRA NEON」での有元の切なげなフックのボーカルとギターソロをはじめ、榎元のファンクベースと箱木のドラムの噛み合わせに、成田のキーボードが乗ることでさらにディスコティックな色合いを増した「Papillon」、Satoのトークボックスと、バンドとラップが緩やかに渾然一体となり、暖かなエンディングを迎えた「Arukeba Gravity」など、より深い形で立ち現れていたのが印象に残った。また、Pecoriのボーカルにオートチューンがかからなくなり(もしくは以前よりも薄くなり)、その独特のラップと声質が明確になることで、現在のダンスシーンの(均質的な)ボーカルワークから抜け出たことも、そう感じさせる要因として大きいだろう。
ライブの最後でのこれから発表されるという新曲も、完成の暁にはその有機性/生身が肝になるのではないだろうか。それはメロウな入り口から、ビートが倍速化し疾走感を生んでいく流れや、フックでの3声のユニゾンなど、OFWの持つ不定形さや変化という「生モノのダイナミズム」がしっかりと内包された楽曲構成からも感じさせられた。
……と、なにやら小難しいことをつらつらと書いてはいるのだが、スマホで諸々のメモは取っているものの、2時間のライブをずっと筆者は踊りながら見ていたわけで、彼らの「オーディエンスを踊らせる力」には改めて感動しながら、「OFWの2023」を堪能させて貰った。
音楽の最先端をポップに彩りながら、均質化する音楽の中で有機的な蠢きを根底に置き、音楽においてインベーダーであり、オルタナティブであり続けるOFW(そして、それが決して「単なるカウンター」ではないのも重要だ)。彼らの2024年はいかに明るいものになるのかをしっかりと予感させられる、充実のライブだった。
文:高木"JET"晋一郎写真:信岡麻美
<公演情報>
ODD Foot Works『CHEERZ』
12月21日(木) LIQUIDROOM