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新作映画をネット上で封切る「仮設の映画館」オープン! 目標は、すみやかな「閉館」

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新作映画をネット上で封切る「仮設の映画館」オープン! 目標は、すみやかな「閉館」


文:平辻 哲也 (連載「発信する! 映画館」から)

新型コロナウイルス感染防止による緊急事態宣言下、ネット上にオープンしたのが「仮設の映画館」だ。Netflix、Amazon Prime Videoなど映画を配信するサービスは多数あるが、明確に違うのは、新作映画として劇場公開するはずだった作品を上映し、映画館と収益を分けること。5月2日からはドキュメンタリー作家、想田和弘氏の最新作『精神0』が初日を迎えた。


「仮設の映画館」は、『精神0』の想田監督と配給会社「東風」が協議の上、生まれた仮想映画館だ。コロナ禍で映画館の閉館が続けば、ミニシアターだけではなく、配給会社、製作者も窮地に陥ってしまう。そんな危機感から着想された。

通常、配給会社が配信権を持っていれば、収益は配給会社の取り分となるが、これを全国の映画館で上映したと仮定して、プラットホームの使用料などを引いた後に残る収益を、劇場と配給とで5:5で分配。実際の映画興行と同じ仕組みを採用。
独自のプラットホームではなく、オンライン試写などでも使われる映像配信サービス「vimeo」のシステムを使うことで、低コストかつスピーディーな“開館”を実現した。現在、ミニシアター救済のためのさまざまな取り組みがなされる中、ユニークな“映画館”として注目を浴びている。

「(クラウドファンディングで基金を募る)ミニシアターエイドは素晴らしい企画だと思います。既に2億円以上のお金が集まり、いくつかの映画館は潰れないで済むと思います。コロナ禍がいつまで長引くか分からない中、映画館をサポートできないかと考えました」。こう話すのは、このポータルサイトの運営会社「東風」の木下繁貴代表。これまで『人生フルーツ』や『さよならテレビ』など良質なドキュメンタリー作品を多数ヒットに導いた立役者だ。

4月8日にこの構想を発表すると、ムヴィオラ、ユナイテッドピープル、シマフィルム、ノンデライコ、ニコニコフィルム、サンディの7社が参加を表明し、福島県双葉郡広野町の人々の姿を追ったドキュメンタリー『春を告げる町』、マレーシアの名匠ヤスミン・アフマド監督の最高傑作『タレンタイム〜優しい歌』など11作品がラインナップされ、映画館も全国54館(5月1日現在)が参加。
作品選びの間口が広くなったことで、より多くのミニシアター映画ファンがアクセスしたくなる仕掛けになっている。鑑賞料金は映画館の一般料金と同じ1500〜1800円。利用者は上映劇場を選択することから始める。『精神0』の場合は、北は北海道のシアターキノ、南は沖縄の桜坂劇場まで35館。トップページには各劇場の外観、ロビー、ロゴなど写真が並べられていて、劇場名をクリックすると、vimeoの各リンク先に飛ぶ。各ページには、映画館の紹介文、所在地、座席数が掲載されている。支払いにはクレジットカードか、PayPalを利用。TV、PC、モバイル端末、タブレットに対応しているので、ほとんどの人が問題なく観られるはずだ。


公式サイト(http://www.temporary-cinema.jp)

プロフィール
平辻哲也(ひらつじ・てつや)

1968年、東京生まれ、千葉育ち。映画ジャーナリスト。法政大学卒業後、報知新聞社に入社。映画記者として活躍、10年以上芸能デスクをつとめ、2015年に退社。以降はフリーで活動。趣味はサッカー観戦と自転車。

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