【観劇レポート】3年の時を経て上演中のミュージカル『アナスタシア』キャストの魅力に迫る
革命前後の混乱の世の中をしたたかに生き抜いてきたリアリティがある。少し生意気そうにも聴こえるクセのある声質もこの人にしかない魅力で、生き生きとしたディミトリだ。ヒロイン目線の理想像も具現化しているような、ある種少女漫画のヒーローにもなり得るのが海宝ディミトリ・相葉ディミトリだとしたら、内海ディミトリは観客目線で共感していく少年漫画のヒーローだな、という感想も抱いた。
石川禅(中央)
ディミトリの相棒である詐欺師ヴラドは大澄賢也と石川禅。誰もが一目置く大ベテランふたりが、可愛らしさを爆発させている。その中でも大澄からは温もりを、石川からは優しさをより濃く感じた。また、2幕冒頭でパリに到着した際の大ダンスナンバー『パリは鍵を握ってる』では、石川のチャーミングなダンスからはパリに着いた浮かれっぷりが伝わって微笑ましかったのに対し、元来ダンサーである大澄ヴラドは隠しきれないキレの良さが見て取れたのも、ふたりの個性の違いとしてキュートで楽しかったポイントだ。
さらにアーニャ、ディミトリ、ヴラドのトリオの組み合わせによりその日の物語のカラーが決まってくる作品だが、筆者が見た組み合わせで言うと、葵アーニャ、海宝ディミトリ、大澄ヴラドだとディミトリが主導権を握る詐欺師コンビとケンカしながらも仲良く進んでいくアーニャという関係性に見え、木下アーニャ、相葉ディミトリ、石川ヴラドだと対等に肩を並べて笑い合いながら進んでいく三人、木下アーニャ、内海ディミトリ、大澄ヴラドだと、じゃれあう若者コンビを一歩引いたところで目を細めて眺めているヴラド、というような色の違いが見てとれた。