【Laughing Hick ライブレポート】終わりではなく始まりを刻んだツアーファイナル「最高を更新し続けた」過去一番の熱い空間
Photo:タカギユウスケ(LiveYou)
Text:ヤコウリュウジPhoto:タカギユウスケ(LiveYou)
Laughing Hickが7月10日、『ONEMAN TOUR 2026「ハロー ノットグッバイ」』の最終公演を東京・Zepp DiverCityにて開催した。5月に配信リリースしたEP『ハロー ノットグッバイ』を引っ提げ、5月16日千葉LOOKを皮切りにスタートした本ツアー。各地で大きな熱気を積み重ね、迎えたこの最終公演はバンド史上最大規模となるワンマン。フロアを埋め尽くした観客へ向けて、感謝を口にしながら繰り出した全21曲は現在の逞しさを知らしめるには十分すぎる内容であり、J-POPのど真ん中を射抜く力のある歌。ロックバンドとしてのサウンド強度を両立させながら、未だ見ぬ輝かしい未来へ向かう姿も見せてくれた。
定刻を少し過ぎたところで、会場の割れんばかりのクラップを受けながら、TAICHI(ds)、あかり(b)、そしてホリウチコウタ(vo/g)が登場。『ハロー ノットグッバイ』でも冒頭を飾る「ネガティヴ思想論争」からライブがスタートした。ネガティブな意見に顔を背けることなく、すべて受け止めて進むというメッセージを強度の高いロックサウンドと共に届けていけば、バンドの現在地を表すように会場中から大きな歓声と拳が上がる。
いきなりガツンと食らわせたようにも思ったが、まだまだこんなもんじゃいいスタートダッシュは飾れないとばかりに、ホリウチがフロアを煽ると、ドライブ感満載の「Local hero」へ突入。TAICHIの叩き出すグルーヴィーなリズムはもちろん、麗しいあかりのコーラスワークもいい。自らを鼓舞するように「もっとこいよ!」とTAICHIが叫んで放った「ランプ」、観客の浮き立つ心が投影されたようにあかりが軽快なステップを踏みながらベースラインを奏で、ロックのダイナミズムを浴びせた「ホンネ」と序盤から怒涛の展開だ。
彼らは日常で抱える葛藤や愛憎をストレートな言葉で紡ぐラブソングの名手ではあるのだが、サウンド面にフォーカスすれば轟音をぶっ放すロックバンドと言っていい。J-POPのど真ん中を射抜く歌、オルタナティブロックやグランジのみならず、ラウドロック的な圧力すらも飲み込んだサウンドというふたつを両立させる稀有な存在であり、その凄みを序盤からありありと見せつけてくれる。
「ツアーを回ってきて、ファイナルのZepp DiverCityにやってきましたけど、1カ所1カ所、最高を更新し続けてきました。今日が過去一番の熱い空間を作る準備はできていますか?」とホリウチが投げかけて始めたのは、クズな男の赤裸々な気持ちを綴った「愛してるって」。どちらかと言えば、しなやかに響かせるナンバーではあるのだが、ライブ特有のエネルギーに彩られグッと迫る力がある。
そこからポップパンク的機敏さを持つ「Cuz」、TAICHIが叩き出すリズムに観客も大きなクラップを合わせ、妖艶なムードの中で鳴らした「マラカイト」、ホリウチの歌い出しの強さにハッとさせられた「グッナイ、グッバイ。」と続け、常に観客を先導していく。
「愛する誰かを失ったときにもう一度、誰かを愛せるんだろうか。恋に落ちるんだろうか。そんな不安と戦った夜に書いた曲を」とホリウチが告げて始めたのが、「さよなら恋人、おかえり恋心」。深い夜へ沈み込むようなサウンドアプローチに祈りを捧げるような歌声が合わさり、どこまでも沁みるスローナンバーだ。終わりは何かの始まり、そんなことは言い尽くされているし、わかってもいる。ただ、すぐに頷けないのが人間というモノだろう。そんなときに寄り添ってくれる曲であり、想いを重ねて聴き入る観客の姿もとても印象的だった。
その余韻を引っ張りながらホリウチがアルペジオを奏で、絶妙なタイム感で歌い出したのが別れた恋人への未練と葛藤をこぼす「カフェオレ」。バンドインしてから広がるスケール感、繊細かつ力強いTAICHIのドラム、体をしならせ足を踏み鳴らしながら弾くあかり、ホリウチは張り裂けそうな気持ちを歌に込める。中盤戦において実に鮮烈な1曲だったと触れておきたい。
モノクロームな世界に色づく様がライティングにも反映され、観客がステージへ向けて手を伸ばした「モノクロセカイ」、ブルージーな歌声が胸に響く「ラストネーム」と続けた後、TAICHIがテクニカルなドラムプレイで繋いでから披露した「ogorareya」は彼らならではの切り口の曲であろう。“奢り奢られ論争”と真正面から向き合ったというか、金だけ払わされた男の怒りや悲哀を描写。そんな混沌とした感情を表現するようなアレンジも施されており、その塩梅もまた良かった。
改めてツアーの手応えや喜びをあかりとTAICHIが口にしてから始まった後半戦は、命を捧げたいと思えるほどの深い愛を歌う「コラソン」をまずは響かせた。「Zepp DiverCityを壊す準備できてますかー?」とTAICHIが、「今日、ファイナルですけど、アガっていけますでしょうか?」とホリウチが投げかけて「休憩と宿泊」を投下。
怪しいムードも広がる中、大きなジャンプを繰り返す観客。そこからシームレスに「愛なんて嘘は置いといて」と繋ぐアッパーな流れも秀逸であり、ステージとフロアが共鳴し、どんどん盛り上がりが加速していく。
そして、過去イチの解放を全員で、と促してプレイした「女だから」。キレの良い歌声、巧みなリズムワークに観客も引っ張られ、止むことがないクラップに《しまおうか》の大合唱が起こり、会場の揺れっぷりも尋常ではない。そんな凄まじい熱気が充満する中、「間違いなく、過去一番でっかい声でした……終わりたくない!」とホリウチがこぼし、この空気感を噛みしめるような空白から「きっと恋って結ばれたから幸せ、結ばれなかったから不幸せ、そんな簡単じゃないと思っています。恋をすることによって昨日の自分よりも他人に優しくできたり、少しだけカッコつけられたり、自分のことを好きになれたりする。例え、この恋がいちばんじゃなかったとしても意味があったと、そう思いたい」と伝えてから鳴らしたのが「glee」。恋の不条理さを受け止めながらまっすぐな愛を願うバラードだ。
削ぎ落としたアンサンブルがよりそのメッセージ性を浮き立たせ胸を打つ。そこから彼らを押し上げた名曲「カシスオレンジ」は壮大さが素晴らしく、もっともっと大きな会場で浴びてみたい、素直にそう思わされる瞬間でもあった。
ライブは最終盤に入ってきたが息切れどころか、さらにボルテージを上げるように「Bye-Hi」をエネルギッシュにプレイし、ラストナンバーとして「ライラ」をセレクト。サッカーの応援歌(チャント)のような高揚感のあるコーラスも華麗で輝かしいロックナンバーだ。「オレと君の歌だ」というホリウチの言葉もあったが、共に歩いていく為に必要な行進曲によって決して小手先なんかじゃ生まれない高揚感が会場全体を満たしていく。この1曲で何日分、いや何週間分のエネルギーを蓄えられるのか。そんな熱い思いが脳裏を駆け巡っていくフィナーレだった。
傍から見れば非の打ち所がなく、EPのタイトルに込めた“出会った瞬間がこれからの始まりになる”最終公演だったと言い切っていい内容ではあったが、初めてツアーファイナルが完売しなかったことには悔しさを滲ませていたホリウチ。
そんな胸の内を物語るよう、また会える日を楽しみにしている、という花言葉を持つ"DIAMOND LILY”をタイトルに掲げたワンマンツアーを10月から開催。ファイナルは同じくZepp DiverCity。確かな日々を積み重ね、ロックバンドとしてより頼もしくなる彼らの未来に期待が膨らむ夜にもなった。
<公演概要>
Laughing Hick『ONEMAN TOUR 2026「ハロー ノットグッバイ」』
7月10日 東京・Zepp DiverCity