初演から50年、松本白鸚が『ラ・マンチャの男』に4年ぶりに挑む
一番憎むべき狂気とは、あるがままの人生にただ折り合いをつけてしまって、あるべき姿のために戦わないことだ……。そんなメッセージがずっしりと胸に響く骨太のミュージカル、『ラ・マンチャの男』。スペインの国民的小説『ドン・キホーテ』を原作に、1965年にブロードウェイでミュージカル化され、翌年のトニー賞に輝いた。日本では1969年より、松本白鸚の主演により断続的に上演され続け、今年でなんと50周年。1970年にはブロードウェイの舞台にも立った経験を持つ白鸚が、喜寿にして4年ぶりのドン・キホーテ役に挑む。
舞台は16世紀末のスペイン。セビリアの牢獄では、セルバンテスが従僕ともども投獄されようとしている。セルバンテスが申し開きのために思い立ったのは、囚人全員を配役した即興劇。
その主役である、本の読み過ぎでとんでもない計画を思いついた田舎の老人アロンソ・キハーナが扮する男こそ、遍歴の騎士ドン・キホーテだ。悪を滅ぼさんがため、従僕のサンチョを連れて旅に出たキホーテの求める夢とは、そして真実とは……。現実世界と劇中劇の世界が交錯する重厚な物語が、ドラマティックな音楽とともに繰り広げられていく。
松本白鸚の圧巻の熱演が見逃せないのはもちろんのこと、今回は宝塚歌劇団を2009年に退団以降、女優としての力量と存在感を増し続けている瀬奈じゅんが、ヒロインにあたるアルドンザ役に初めて挑むことも話題。注目の公演は、本日10月4日に東京・帝国劇場にて開幕する。
文:町田麻子