新しいギリシャ悲劇=若きふたりの”ロードムービー“、『オレステスとピュラデス』開幕
KAAT神奈川県芸術劇場プロデュース『オレステスとピュラデス』が本日11月28日(土)に開幕する。
2018年にはラップをふんだんに取り入れ、3人の役者が8役を演じ分けた『オイディプスREXXX』、2019年はトロイア戦争を軸に描いた、実に上演時間10時間にわたる大作『グリークス』。これまで2年にわたり、ギリシャ悲劇を斬新なかたちで上演してきた演出家、杉原邦生。彼が今回挑むのは、「失われた(現存していない)」物語だ。
『グリークス』でも描かれた、トロイア戦争でギリシャ軍大将を務めたアガメムノン。その息子・オレステスが父の仇をとるために姉・エレクトラとともに母親を殺す場面は度々演じられている。しかし、母殺しによって死刑を言い渡され、さらに女神の呪いに苦しめられているオレステスが、殺しを手伝った従兄弟で親友のピュラデスとともに呪いを解くためにタウリケを目指すという、この道中の物語は現存しない。今回の『オレステスとピュラデス』では、ギリシャ悲劇の戯曲として残されていない部分を、「新たなギリシャ悲劇」として紡ぎ出すのだ。
脚本を担当するのは、ミナモザの瀬戸山美咲。ギリシャ悲劇『アンティゴネ』をもとにした現代劇『始まりのアンティゴネ』を手掛けたこともある彼女が、ふたりの若者が旅を通じて成長する姿を“ロードムービー”的に描き出す。