柚希礼音がシャンソンの世界に挑んだ一夜限りのリサイタル『REON et Chansons』オフィシャルレポート
何より胸打たれたのは純白のドレスで歌ったクライマックスの「水に流して」で、エディット・ピアフの決して後悔はせず新たな人生に踏み出すのだ、という絶唱があまりにも知られている楽曲に、この先の人生への希望、明日にはきっと必ずまた良いことがあると信じさせてくれる、前途洋々たる未来の情景を乗せたことだった。こんなにも勇気をもらえる「水に流して」をはじめて聞いたと思える、これはこの一夜のリサイタル、柚希のシャンソンの白眉だった。
思えば、宝塚歌劇団で男役を長く務めたスターたちは、退団後、女声の音域としては限界に近い低音域の強化をし続けた男役時代と、男性と共に臨む舞台で求められる音域が全く異なることによる困難に直面することがとても多い。柚希にとってもその困難は容易なものではなく、試行錯誤の日々が長くあったそうだ。それでも歌うことに向き合い続けた柚希が、こうして新たな魅力、新たなシャンソンの世界に開眼している様は眩しいばかりで、終幕裸足のダンスで魅せた「愛の讃歌」、踊りによるシャンソンという斬新な表現と共に、リサイタルの幕は下りた。駆け抜けた90分とは思えない、色濃い時間だった。
鳴りやまぬアンコールの声に応えて、再び登場した柚希は、ミュージックビデオと共に先行配信されている「ろくでなし」