【ライブレポート】浪漫革命、6都市全公演ソールドアウトの『躍進』ツアーファイナル・渋谷WWW X
(Photo:橋本優)
浪漫革命、10月に地元京都・大阪・福岡・名古屋・長野・東京を回った初めてのワンマンツアー『躍進』の、追加公演。コロナ感染予防対策で、キャパの半分しか入れていないとはいえ、WWW Xのフロアは満員。コロナ禍ルールで声を発せないにもかかわらず、アンコールまで含めて全20曲・2時間強の間、フロアの温度は一貫して、とても高いままで、このバンドが今、いかに注目を集めているか、いかに多くの人を惹きつけているかを表していた。
後方上部には巨大な白暖簾、右側には白い提灯が吊るされたステージに、着物姿の女性が現れ、篠笛を吹き始める(自身の作品をリリースするほか、松尾スズキの舞台等、多方面で演奏している篠笛奏者・玉置ひかり)。メンバーが登場して配置につき、徐々にその篠笛の音色に音を重ねていった末に、演奏を終えた彼女が下がり、入れ替わりでボーカルの藤澤信次郎が現れて、和風テイストの「KYOTO」が始まる──。という、初手からオーディエンスを浪漫革命の世界に引き込むオープニングだった。
藤澤信次郎(Vo)
ライブ全体として、曲間を極力空けず、MCも最小限しか入れず、何か言う時はイントロに言葉を乗せるなどして、次から次へと曲を演奏していく構成。とにかく1曲でも多くやりたい、聴かせたい歌がいっぱいある、という前のめりな気持ちが伝わってくる。
2曲目「Lovely moon night」の頭に、ジャクソン5の「I Want You Back」のイントロをくっつけたり、3曲目「サマタイム」の途中で、ベース藤本卓馬がラップするパートに、はっぴいえんど「夏なんです」の一節が織り込まれていたりと、自らに影響を与えてきた音楽を明かしながら、ライブが進んでいくのも楽しい。
同期を用いる曲もある。全員でユニゾンで歌う曲もあるし、アカペラ・グループのようにハモリを聴かせてから始まる曲もある。前述の通り、ラップがはさまる曲もあるし、藤澤信次郎以外のメンバーがボーカルをとる曲もある。8曲目「ベイベ」は、曲の後半でバンドの演奏が「ジェフ・ベック?」と言いたくなるような方向へ展開していく。
大池奏太(Gt/Cho)
中盤で、初めて普通にMCを挟んでから「後日配信するけど、CDで販売するのは今日だけです」という紹介から、「ひとり」と「ふたりでいること」の新曲2曲が続けて披露された。「ひとり」は、1コーラス目は普通に演奏されるが、2コーラス目はドラムのTOYがパッドを叩くことで、曲のテイストがガラッと変わる。
「ふたりでいること」は、波の音のSEで曲が始まり、それにギターふたりの音が加わってイントロになり、藤澤信次郎ひとりの弾き語りに切り替わり、そこに途中からバンドの音が加わっていく──。
というふうに、60年代〜70年代のルーツ・ミュージックの魅力と、それをアウトプットする際の多彩さの両方で、オーディエンスを魅了し続けていくステージだった。
後藤潤一(Gt)
藤本卓馬(Ba/MC)
本編のラストは「あんなつぁ」と「ふれたくて」。このバンドの最初の名刺になった曲と、最新アルバム『ROMANTIC LOVE』の1曲目で締められた。
「次でラストの曲です、イヤだー!」「また絶対会おう、これからも! 約束ですよ!」と、終わることを惜しんでいたメンバーは、アンコールを求められて再登場してからも、「イヤだよ、終わりたくねえ」「もう一回する?」「ありだな」などと言い合う。
以前にPK shampooと『共闘』というツアーをやった、彼らに助けてもらった、結成してからの4年間でいろいろ仲間ができた、『共闘』を終えて次は『躍進』をやろうということになった、6都市を回って全公演ソールドアウトした、ありがとうございます、これからも躍進していきたい──。
と、この日二度目のMCが入るが、その間、メンバーはギターやベースを持つ気配なし。「なんでみんな楽器持ってないんですか?って話やろ?」という言葉から始まったのは、ザ・おめでたズとのコラボレーション曲「ハイレグBIKINI」。音源はサビと演奏が浪漫革命、ラップがザ・おめでたズであるこの曲を、演奏はバック・トラックに任せて、全員ハンドマイクで、それぞれのラップと歌で聴かせていく。
歌い終えると、『共闘 vol.2』の開催が決まったこと、2022年4月4日大阪、4月6日名古屋、4月7日東京で、3会場ともCLUB QUATTROであることを発表。そして、12月から発売されたすき家の新メニューの「石原さとみ出演のCMに曲を書き下ろした、その曲をやります」という紹介から、新曲「フーアン」を披露する。演奏する前に「この曲だけ、撮影NGでお願いします」。つまり、他の曲はOKだった、ということだ。
そして、全20曲のラストを飾ったのは、「♪大人になったって 忘れてたまるものか 僕らの熱がずっと騒いでる」と、メンバーみんなで声を揃えて歌って始まる「青い春」だった。コロナ禍でなければ、今ここにいる全員で大合唱になっただろう。という空気を察したのか、曲を終え、「ひとり」のMVができたのでこれから上映する、と告げた後、藤澤信次郎は、メンバーに言った。
「バンドって5人でできるもんだと思ってたじゃん。
違うね。今日、300人ぐらいじゃん。305人でできるもんだね」とても実感がこもっていた。
Text:兵庫慎司 / Photo:橋本優
<公演情報>
浪漫革命 ワンマンツアー『躍進』追加公演
2021年12月4日(土) 東京・渋谷WWW X