【サンダンス映画祭2026レポート】暴力に立ち上がった女性たちの物語
昨年のアワードシーズンに大健闘した『エミリア・ペレス』は、オペラ的メロドラマの中で、メキシコで起きているバイオレンスにも触れた。同作品でエミリアの恋人を演じたアドリアーナ・パスが主演を務める『The Huntress』は、実話を基に、その部分のリアルに焦点を当てる。
2013年、アメリカとの国境の街フアレス。映画の冒頭で、バスに乗り込もうとした女性客が、突然運転手を射殺した。犯人は、工場に勤務するごく普通の中年女性。彼女がそんな大胆な行動に出たのは、自身や同僚、知人の女性が男たちから暴力を受けてきたからだ。そんな彼女は、14歳の娘をなんとしても悲劇から遠ざけようとしている。だが、実際に娘に危険が迫った時、彼女は自分の無力さを知らされた。
自分に絶望した彼女はどうするのか?
『エミリア・ペレス』では助演だったパスは、この映画でその実力を完全に見せつける。だが、目の前の危機に加えて過去のトラウマにも悩まされる主人公を演じるのは精神的に相当辛かったらしい。プレミア上映後の舞台トークで、パスは「健康上にも影響が出た」と告白している。
さらに、この映画の撮影は『エミリア・ペレス』のプロモーションツアーと重なっていて、肉体的にもきつかった。それでも、フアレスを変えた実在の女性についてのこの映画に主演として呼ばれたのは「最高の光栄」だと、パス。サンダンスで初めて完成作を見ながら、ずっと泣いていたとも明かす。
監督のスザンヌ・アンドリューズ・コレアは、メキシコ系アメリカ人の女性監督。この映画のためにフアレスで時間を過ごした彼女は、悲劇的な話の中でも希望を感じさせたいとの思いのもと、映画を作った。
プロデューサーのひとりはまた、暗い歴史を見つめるものであるにもかかわらず、メキシコの政府が出資に賛同したとも語っている。
文:猿渡由紀
Courtesy of Sundance Institute
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