ゲスの極み乙女。とindigo la Endによる特別な一夜、川谷絵音の誕生日に行われた『馳せ合い vol.2』レポート
Photo:鳥居洋介
ゲスの極み乙女。とindigo la Endによるツーマンライブ『馳せ合い vol.2』が12月3日に東京・東京国際フォーラムホールAで行われた。
この2組によるツーマンライブは、2019年に新木場STUDIO COASTで開催された『馳せ合い』以来約2年ぶり。当日は両方のバンドのフロントマンを務める川谷絵音(Vo/Gt)の33歳の誕生日で、それぞれのバンドが2022年のスペシャルな告知を行うなど記念すべき一夜となった。
開演時刻を過ぎると、まずはメンバーのコメントをフィーチャーしたindigo la Endの紹介映像が流れ、これから始まるライブに向けての期待が高まる。そしてメンバーが登場し、1曲目に披露されたのは、メジャーデビューアルバムから「ワンダーテンダー」。後鳥亮介(Ba)のベースがグルーヴを引っ張るアッパーな幕開けで、中盤のコーラスパートでは場内から一斉にクラップが起きる。
川谷絵音
続く「乾き」も長田カーティス(Gt)のトリッキーなギターフレーズや、佐藤栄太郎(Ds)による手数の多いプレイが際立つアグレッシブな曲で、こんなロックなモードで始まるindigo la Endのライブは久しぶりかもしれない。
この後も比較的バンド初期の楽曲が演奏され、構築的なアレンジの「忘れて花束」に続き、今の季節にピッタリの「冬夜のマジック」では、青と白のオーロラのような照明が楽曲の雰囲気を引き立てる。
この日のライティングによる演出は実に効果的で、「チューリップ」では照明の色が赤から白へと変化することにより、歌詞の物語性に寄り添ってみせると、圧巻だったのがインディーズ時代の楽曲である「大停電の夜に」。川谷のモノローグと変拍子を交えたプログレッシヴなリズムが特徴の曲だが、そこにめまぐるしく変化する照明が加わることで、非常にスリリングなパフォーマンスとなった。
「“大停電の夜に”はindigo la Endに(ゲスの極み乙女。の)休日課長がいた頃に作った曲で、昔は変拍子がはみ出しちゃったりしたけど、きれいに終われるようになった」と笑って話し、両バンドの関係性が垣間見えると、続いて「夏夜のマジック」を披露。この曲もすっかりライブの定番曲となって、サビではフロアから一斉に手が上がり、アウトロで川谷が栄太郎を煽りまくるのもお馴染みの光景となった。
さらには、ライブ当日に配信がスタートした新曲「邦画」も初披露。《泣いたり笑ったり》というコーラスが耳に残るミディアムチューンで、思い思いに体を揺らすオーディエンスの姿が見て取れた。
ここで再び映像が流れて、2022年11月にバンド初の日本武道館公演を行うことが発表されると、場内からは盛大な拍手が贈られる。「気負わずに、いつも通りのindigo la Endのライブになると思うんですけど、楽しみにしていただけたらと思います」と川谷が話し、最後にインディーズ時代の楽曲である「楽園」が久々に演奏され、この日ならではの貴重なセットリストのライブが締め括られた。
総勢9名による特別なセッションも
後攻のゲスの極み乙女。もドキュメンタリー風の紹介映像から始まり、メンバーが登場するとアッパーな「crying march」からスタート。映像内でも語られていたように、今年の彼らはほな・いこか(Ds)の女優業をはじめ、それぞれの活動が多く、ライブもひさしぶり。だからこそ、この4人で演奏することの喜びがありあまるほどに伝わってきて、メンバー全員のテンションが非常に高い。
「はしゃぎすぎた街の中で僕は一人遠回りした」では、そんなステージ上の雰囲気がしっかりとフロアにも伝わって、サビではオーディエンスが一斉に手を振り、序盤からかなりの盛り上がりを見せる。
クールな印象のジャズファンク「マルカ」、トラップ風のビートに生ドラムを組み合わせた「ドグマン」といった曲では、バンドの進化を感じさせつつ、「ユレルカレル」では川谷がメランコリックなメロディーを歌い上げ、この「せつなさ」もゲスの極み乙女。
の真骨頂。さらには「ひさびさに叫ぶ曲をやります」と言って始まった「某東京」では、えつことささみおのスキャットのようなコーラスとともに、川谷が思いっ切りシャウトをしたりと、この曲調のふり幅も彼らならではだ。
ライブ後半にかけては再びアッパーな曲を続け、休日課長(Ba)、ちゃんMARI(Key)、ほな・いこかがそれぞれソロを披露し、「えのぴょん、誕生日おめでとう!」という掛け声を合図に始まった「パラレルスペック」では、川谷と休日課長が向き合ってジャンプをしながら演奏したりと、やはりこのメンバーで演奏する喜びが伝わってくる。
続く「キラーボール」では、お馴染みとなっている間奏のピアノソロで、川谷からの「インディゴやゲスのメンバーをピアノで表現して」という無茶ぶりにちゃんMARIが見事に応えると、「ゲスの極み乙女。と一緒に遊びませんか?」という呼びかけから「アソビ」へと一気に駆け抜けた。
「国際フォーラムでやるのは毎回特別なので、こうやって集まっていただいたみなさんに感謝します」と挨拶をして、最後に演奏されたのは、美麗なストリングスが印象的な「アオミ」。せつなさと表裏一体の清々しさが何とも心地よく、最後はステージに1人残ったちゃんMARIがメランコリックなピアノソロを聴かせ、厳かに本編が幕を閉じた。
アンコールでは打ち込みのトラックに乗せて、川谷とほな・いこかがデュエットを聴かせる新曲「ドーパミン」を初披露し、バンドの新たな側面を届けると、さらには「ファンクラブの投票で1位になった曲」という「ルミリー」を演奏。
このせつないメロディーの曲が1位になるというのが、やはりバンドの本質をよく表している。
最後はindigo la Endのメンバー3人が全員ギタリストとして加わり、両バンドのメンバーにコーラスの2人を加えた全9人による「song3」。indigo la Endの3人がソロを弾いたり、お祭り騒ぎで曲を終えると、ちゃんMARIのピアノと後鳥の歌で「ハッピーバースデー」が贈られ、ステージにはケーキが運び込まれる。川谷がロウソクを吹き消すと大きな拍手が起こり、場内は親密なムードに包まれた。
メンバーがステージを後にすると、来年結成10周年を迎えるゲスの極み乙女。が5月に初のベストアルバムを発売し、6月には10周年記念公演を初アリーナワンマンと同じ会場の幕張メッセで開催することを映像で発表。『解体』というライブのタイトルが告知されると、一瞬場内が静まったが、川谷が映像の中で「解散じゃないよ」と笑ってコメントをする一幕も。特別な一夜は、来年へのさらなる期待を募らせる一夜にもなった。
Text:金子厚武
Photo:鳥居洋介
<公演情報>
ゲスの極み乙女。×indigo la End『馳せ合いvol.2』
12月3日(金) 東京・東京国際フォーラム ホールA