wapiti インタビュー|多様なルーツを武器に――異色編成の4人が明かす、メジャー1stアルバム『MOSAIC』制作背景と東阪ワンマンライブへの展望
Text:蜂須賀ちなみ
2023年に東京で結成され、2025年8月にメジャーデビューした4人組バンド、wapiti。彼らが完成させたメジャー1stアルバム『MOSAIC』は、ピアノとバイオリンを軸にした異色の編成、そしてバラバラなルーツを持つ4人が織り成すサウンドの多面性を凝縮した一枚だ。今回のインタビューでは、この4人が集まった経緯から、アルバム制作中の気づき、そして年末年始に控える東阪ワンマンライブへの意気込みまで、メンバーに語ってもらった。
―― この4人はどのように集まったんですか?
織田龍紀(vo)ハーマンを介して出会ったって感じですね。ハーマンと瑠莉ちゃんは元々友達同士だったらしく、ハーマンと健ちゃん(工藤)はドラムの先生と生徒で。僕はハーマンに就活の相談をしてたっていう、ちょっと特殊な関係性でした。そこから、月1でごはん会とスタジオセッションをするという関係性が生まれて。
吉村瑠莉(pf)私は元々音楽をやっていたものの、就職と同時に一度離れていたので、3人と一緒にセッションする時間が本当に楽しくて。
工藤健介(ds)でも最初の頃は、ごはん会メインだったかもしれない(笑)。ここまで能動的に活動することになるとはまったく思っていませんでした。
ハーマン・チャン(vn)だけど、途中から目標がほしくなって、カバーバンドみたいな活動をし始めて、ライブもやるようになりました。そしたら1年くらい経った頃、彼(織田)から「音楽の道へ進もうと思う」「ひとりじゃなくてバンドがいいと思ってる」という相談があって。最初は全力で止めました。そんなに簡単な世界でもないから、心配で。でも彼の意志は強かったから、やっぱり音楽の道に進みますということで、僕らをバンドに誘ってくれたんです。
織田自分はいっときソロで活動していて、そのときみんなにサポートをお願いしたんですけど、シンプルに楽しかったし、一緒にバンドをやるならこの人たちだなと思って。
織田龍紀(vo)
吉村「バンドやろうよ」と言ってもらったときはすごくうれしかったですね。
工藤僕は以前バンドをやっていたんですけど、誘ってもらった当時は自分のバンドはなくて、サポート+講師業という感じで。彼のソロ活動のお手伝いをさせてもらうなかで、だんだん熱量に感化されて。「自分もバンドで頑張ろう」という気持ちになっていきました。
――結成したときに、「こういうバンドになりたい」「こういう音楽をやっていこう」という話は4人の間でしましたか?
織田そういう話はあんまりしてなくて。というのも、ルーツが結構バラバラなんですよ。カバーバンド時代にやっていた曲も、本当にバラバラで……。
工藤例えば藤井風さんとか、葉加瀬太郎さん……「タッチ」(岩崎良美)とかもやってたよね。
織田当時人気のバラードとか、本当にいろんな曲をやっていました。瑠莉ちゃんとハーマンはクラシックがルーツで、健ちゃん(工藤)は80年代の洋楽ロックバンドが好き。僕は歌謡曲とか、ファンクやジャズなどのブラックミュージック系が好きなので、本当に多種多様というか。
ハーマン好きな音楽やバックグラウンドはバラバラで、楽器編成も特殊なので、“右も左も分からないけど、とりあえずやってみる”というところからwapitiは始まっていて。いざ曲を作ってみたら、そのバラバラな感じが意外とよくて。めちゃくちゃロックな曲もできるし、ジャズテイストの曲もできるというふうに、バリエーションが自然と生まれるというか。
織田そんななかで、ある日ライブハウスの店長さんから「wapitiのライブは劇場みたいだね」と言ってもらったのが、自分たちとしてもなんかピンときて。
工藤ライブの中でインスト曲メドレーをやっていたんですよ。
ディズニー映画で使われている音楽とか、誰でも聴いたことのある曲を楽器陣だけでカバーするみたいな。それもあって、「劇場みたい」という印象を持ってもらえたのかもしれない。
織田そこからは、「劇場的な」「舞台を観ているかのようなライブをする」というイメージで活動していくようになりました。
――映画音楽からは結構影響を受けていますか?
ハーマンそうですね。僕は学生時代に映画音楽にハマり、サウンドトラックをたくさん買って聴いていた時期があって。例えば『レ・ミゼラブル』とか『スウィーニー・トッド』とか。当時はそういうシネマチックなものをよく聴いていたし、最近はハンス・ジマー(ドイツ出身の作曲家。『DUNE/デューン 砂の惑星』『ライオン・キング』『パイレーツ・オブ・カリビアン』『インターステラー』などを手掛けた映画音楽界の巨匠)とか、エバン・コール(アメリカ出身の作曲家・編曲家。
アニメ『葬送のフリーレン』の劇伴など、日本のアニメ・ドラマの音楽を多数手掛ける)とか、めちゃくちゃ聴いています。バンドの中にバイオリニストがひとりだけいるという状況で、じゃあどういう音を出すかというヒントはなかなか見つけづらいんですよ。クラシックやJ-POPはバイオリンだけじゃなくて、チェロやヴィオラがいたり、多人数で鳴らしている曲が多いし、自分たちと似たような編成のバンドもなかなか珍しいのかなと思うので。wapitiは曲調も幅広いからなおさら、クラシックともJ-POPとも違う弦の使い方を模索したい……というときに、映画音楽はかなり参考になるんですよね。
ハーマン・チャン(vn)
――なるほど。ピアノに関してはいかがですか?
吉村たっちゃん(織田)もピアノを弾けるので、彼が作ってくれたフレーズを弾くこともあれば、私が一から考えることもあって、やりとりを重ねながら作っています。私は元々クラシックピアノをやっていたんですけど、彼とは多分ルーツが違うんですよ。だから出てくるフレーズも違うというか。
織田僕はクラシックは途中でやめちゃって、ボーカロイドの曲をよく弾いていました。自分が作るフレーズには、そのときの名残もあるのかもしれません。今回のアルバムに入っている「もののけ」という曲のソロは、僕から瑠莉ちゃんに投げたもので。空港に行く途中の車の中で作ったんですけど、なかなか鬼畜なフレーズになってしまったなと(笑)。
吉村連打に次ぐ連打みたいな(笑)。
織田だけどいつも、完璧に弾いてきてくれるんです。
――だからこそ信頼して提案できるということですね。そしてこのたび、メジャー1stアルバム『MOSAIC』が完成しました。
この1年間の集大成のような作品になりましたね。
織田メジャーデビューからの1年は、本当にあっという間でした。メジャーデビューしてからは関わってくれるスタッフさんも増えて、音楽に一点集中させていただける環境になって。チームの方々が全力で自分たちと向き合ってくださるので、そこに対して報いたいという気持ちもあるし、「どうしたらファンのみなさんの人生にお邪魔できるだろう?」ということも、以前より深く考えられるようになりました。
工藤今までメディアで見てきたアーティストも、もう雲の上の人たちじゃなくて、ライバルなんですよね。ちゃんと勝負を仕掛けなきゃいけないという意識も芽生えました。
ハーマン「プロとしてやっていくには見えない努力がこんなにも必要なんだ」という気づきもたくさんあって、メンバーそれぞれが自分の課題と向き合って、戦った1年間だったと思います。そうやって戦っているときに相談できる人……今の自分の気持ちを理解してくれる人って、やっぱりバンドメンバーしかいなくて。みんなとは、結構いろんなことを話しましたね。
吉村この4人って、ケンカをしたことがないんですよ。それはなぜかというと、各々向き合うべき課題は違っていても、乗り越えようと努力しているという感覚は一緒で、同じ方向を4人で見られていたからなんだろうなと、今振り返って思います。だから「戦っている」という感覚もあるけど、同時に楽しさや、幸福感もあるんですよね。
吉村瑠莉(pf)
工藤その感覚ってきっとバンドにとっての宝だし、この1年はすごく大切な期間だったなと思います。
――完成したアルバムに対しては、どんな感想を持っていますか?
織田今できることは精一杯できたなと。元々「おもちゃ箱みたいなアルバムにしよう」と話していたんですけど、まさにそんなアルバムになりました。さっきルーツがバラバラだという話をしましたけど、それって武器にもなり得るし、弱点にもなりかねないなと思っていて。だから今回の制作期間は、各々の“好き”を徹底的に追求する時間にしたくて。なので、まずメンバーに「これまでの人生で感銘を受けた曲を10曲挙げてください」とお願いしたんですよ。
――へえ! それを踏まえて曲を作ったということですか?
織田そうですね。3人が挙げてくれた計30曲を全部聴いて、「やっぱりバラバラだな」とか「ここは意外と共通しているかも」みたいなことを考えていたら、「こういうジャンルの曲を作りたいな」とアイデアも湧いてきて。例えば1曲目の「パラレルライン」は、吹奏楽のとある楽曲とブラックミュージック系の音楽からインスピレーションを受けて作った曲です。最初はテンポがもうちょっと遅くて、グルーヴの方向性もピンときてなかったんですけど、みんなでアイデアを出しながら完成させて。この曲に関しては、僕の趣味嗜好を反映させた楽曲を、みんなに助けてもらいながら形にしたって感じですね。工藤僕は洋楽好きなので、「デジャヴ」の骨組みを作るときに「洋楽っぽい曲がほしい」という話をして。日本のポップスって、どんどん展開していくものが多いじゃないですか。それもまた情緒があっていいんですけど、そうではなく、リズムがわりと一定な、ずっと同じ感じでノリ続けられる曲をやってみたくて。
吉村「デジャヴ」は、私にとってはちょっと難しかったですね。自分の中にあるクラシックの感覚を崩し過ぎず、でもちゃんとこの曲調に合ったピアノを弾くっていうことが本当にできるのかな?と最初は不安で。たっちゃんからもアドバイスをもらいつつ、最終的にはいいものが作れました。
ハーマン「デジャヴ」は僕も一番悩みました。バイオリンアレンジを考えるときにパソコンとにらめっこしながら、「これ厄介だわ」と思っていたら(笑)、あるタイミングで「こうすればいいのかも」っていうのが見つかって。これまでのwapitiの曲にはなかった……いや、他のどの曲でも聴いたことのないバイオリンを入れられたので、自分としてはすごく手応えがあって、できた瞬間メンバーに自慢しました(笑)。アラビア風の音の使い方をしたり、結構チャレンジングなことをしてます。この曲は、アルバムの中でもダークホースというか。レコーディングしてみたら想像以上にいい仕上がりになったので、みんなで「めっちゃいいよね」と言い合った記憶がありますね。
――リード曲の「旅の唄」はいかがですか?
織田1年半前の制作合宿で作った曲なんですけど、4人の原点に繋がる、今のwapitiが詰まった楽曲になりました。タイトルの通り、これからもこの4人で、いろんな仲間に出会いながら、一緒にこの道を歩んでいこうっていう曲なんですけど、そのコンセプトをみんなでしっかり共有できていたので、制作もすごくスムーズでしたね。
吉村確かにこの曲はやりやすかったです。自分のルーツとも重なるところがありましたし。
ハーマンこの曲は正直、“降りてきた”系というか。デモを聴いた瞬間からどんどんアイデアが湧いてきたから、その中から一番いいものを選択するという贅沢な制作ができましたね。
工藤ドラムに関しては、レコーディングの日にその場で決めたものが多くて。リズムがどんどん変わっていくし、後半にかけて畳みかけるようなフレーズになっているんですけど、あれは事前に練っていたのではなく、衝動的に出てきたものなんです。血の通ったテイクになっていると思うので、ぜひ注目してほしいですね。
工藤健介(ds)
――アルバムを作り終えた今、どんなことを感じていますか?
織田アルバムのタイトルにした『MOSAIC』は、アートの表現技法の言葉なんですけど、小さな断片が集まってひとつの大きな模様を形成するというのが、wapitiにぴったりだなと。
ハーマン作り始める前は「あまりにもバラバラすぎたら、wapitiらしさが分からないんじゃないか」という話もしていました。だけど僕らはメジャーデビュー1年目のバンドで、今は自分たちのできることを広げている最中。「これがwapitiの目指していくべき方向だ」という答えはまだ出せていないけど、それでいいのかもしれないとも思っています。
――年末から年明けにかけて、東阪ワンマンライブが開催されますね。
織田心を込めて作ったアルバムを引っさげたライブということで、今かなり気合いを入れて準備しています。ライブを観に来た人がちょっと興奮しちゃったり立ち上がったりしたくなるような……“聴く”よりも“浴びる”ような音作りを目指しています。
工藤生で演奏することに、よりこだわっていきたいなと。
織田その一環として、僕は最近、新たな相棒となるエレキギターを迎えました。今まではリードギターはサポートメンバーにお願いして、バッキングはシーケンスに頼るしかなかったんですけど、今後はそれを僕が担おうという決意とともに、ドンと買ってしまって。あとコーラスもちゃんと生の声で届けたいので、3人に「歌、上手くなっておいてください」と伝えました。
工藤なので、最近はスタジオに入るたびに、(織田による)歌のレクチャータイムがあって。
織田「腹から声出しなさい!」みたいな(笑)。
――wapitiの理想のライブとは?
織田自分らが音楽を楽しんでいる姿を見て、リスナーの人たちにも「ちょっと仲間に入りたいな」と思ってもらえるような、開放的で楽しい空間を目指しています。興味があればぜひ足を運んでいただけるとうれしいですね。僕のルーツは、親の影響で昔から聴いていたサザンオールスターズで。子供の頃からいろんなライブに連れてってもらったんですけど、元々は親の付き添いだったはずなのに、めちゃくちゃ楽しかったんです。周りを見渡したら、自分のような子供もちらほらいるし、60代以上の人たちもいたり、世代の幅が広くて。お祭りや遊園地から帰るときのような「寂しいな」「でも、幸せだったな」という感覚を、全世代の人たちが一緒に味わっているというライブ終わりの感覚を、すごく愛おしいものとして鮮明に覚えているんです。そんなバンドになりたいと、メンバーにも常々話していて。サザンオールスターズは神様みたいな存在なので、目標にするのもおこがましいけど、今は試行錯誤しながら自分たちらしい空間づくりを目指して、日々ライブをしています。
<リリース情報>
メジャー1stアルバム
『MOSAIC』
10月21日(水) 配信リリース
【収録曲】
1.パラレルライン
2.ロックスター
3.もののけ
4.Pussycat!!
5.春になれば
6.旅の唄
7.夕暮れの待ち合わせ
8.デジャヴ
9.はきだめ
10.君が見た世界
配信リンク: https://lnk.to/wapiti_MOSAIC
<ワンマンライブ情報>
『wapiti Live 2026-2027 〜MOSAIC〜』
2026年12月20日(日) 大阪・Music Club JANUS
2027年1月14日(木) 東京・渋谷CLUB QUATTRO
【チケット情報】
スタンディング:4,500円(税込・ドリンク代別)
▼オフィシャル先行:10月18日(日)23:59まで
https://w.pia.jp/t/wapiti-mosaic/(https://t.pia.jp/pia/artist/artists.do?artistsCd=P4250026&afid=P66)
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2026年10月24日(土) 23:59まで
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