ハンブレッダーズ、初のコピーバンドオーディションを開催したゆるトークとコア楽曲が連発したファンクラブ会員限定ライブツアー『帰宅部定期演奏会vol.2』東京公演をレポート
(Photo:マスダ レンゾ)
Text:森朋之Photo:マスダ レンゾ
ハンブレッダーズが8月6日、7日、14日の3日間、愛知・大阪・東京でファンクラブツアー『帰宅部定期演奏会vol.2』を行った。2023年以来、第2回目の開催となる“定演”から、最終日の東京公演(豊洲PIT)をレポート。メンバー4人、コピーバンドオーディションを勝ち抜いた“アメ民”、そして「帰宅部」(ファンクラブの名称)による親密にしてエモ熱いステージが繰り広げられた。
BGMはTHE BACK HORN、the pillows、銀杏BOYZなど、ハンブレッダーズのメンバーが学生時代コピーをしていた楽曲たち。この国のロックバンドの名曲たち。エモい選曲だな……と聴き入っているうちに開演時間の18:30になり、部活っぽいジャージ(ファンクラブ「帰宅部」の公式グッズ)を着たムツムロ アキラ(vo&g)、でらし(b&cho)、木島(ds)、ukicaster(g)が登場。「こんなにたくさんの方に来ていただいて、ありがとうございます!夏休みの学生の方か、無職の方ですか?」(ムツムロ)「そんなことない!お盆休みって知ってる?」(ukicaster)というトークで笑いを取り、まずはオープニングアクトの“アメ民”が晴れの舞台に上がった。
2年ぶりの『帰宅部定期演奏会』に合わせて今回初めて行われた《ハンブレッダーズ コピーバンドオーディション「出れますか?!定演?!」》。
高校1年生のとき、文化祭に出演するために結成されたハンブレッダーズ。軽音部で様々なバンドのコピーをしてきた彼ららしいこの企画は、バンドをやることの楽しさや、バンドを始めるきっかけにもなってくれたらと、ファンクラブ会員以外の応募も可能となっていた。つまりこの企画は、ファンクラブイベントの余興などではなく、ハンブレッダーズというバンドの本質や原点と真っ直ぐにつながっていたのだ。
「ハンブレを観る目と熱量でお願いします!それではよろしくお願します!」(ムツムロ)と紹介されたアメ民は、「ギター」「DAY DREAM BEAT」を披露。笑顔と必死さがたっぷり詰まった演奏からは“バンドやるの楽しい!ハンブレッダーズが好きすぎる!”という思いが伝わってきた。ボーカルの彼の「コピーして歌うときに、ハンブレッダーズを知らなかった中学時代、高校時代の自分に届けたいという思いでやってます。自分の孤独を肯定してくれる唯一無二のバンドです」というMCにもグッときた。
そして、ハンブレッダーズのステージへ。
「スクールカーストの最底辺から青春を歌いに来ました。日本のハンブレッダーズです。アメ民ありがとう!最高でした!今から本物がやります!」(ムツムロ)というMCからはじまったオープニングナンバーは「ギター」。〈錆び付いたギターでぶっ壊す/もう全部全部全部〉のシンガロングが響き渡り、ステージとフロアの距離が一気に近くなる。さらに「アメ民の演奏を聴いて、自分らがやってきたことは間違いなかったなと思いました」(ムツムロ)という言葉から「DAY DREAM BEAT」――もちろんここでも〈ヘッドフォンの中は宇宙〉の大合唱が生まれたーー「いつものごとく、コール&レスポンスとか、此処で盛り上がってくださいとかないんで、自由に盛り上がってください」(ムツムロ)というコメントを挟み、ロックンロール・ナンバー「ユアペース」へとつながる。
でらし(b&cho)
ライブを観るたびに思うが、ハンブレッダーズの演奏は本当にすばらしい。メンバーそれぞれの演奏能力が高くて、しかも巧さにはまったく頼らず、思い切り腕を振りまくる。衝動的なパッションとアンサンブルの気持ちよさが共存したバンドサウンドはまさに唯一無二だし、何よりも聴いててめちゃくちゃ気持ちいい。
「みなさんがいつも通学や通勤中に聴いている音楽が爆音で流れます」(ムツムロ)と日常/ライブをつなぐようなMCに導かれたのは「THE SONG」。そこから“人は独りだ”という大前提を叩きつけ、肯定する「アイソレーション」、無機質な電子音を取り入れたアレンジが〈無表情の君にも心がある〉というラインを際立たせる「AI LOVE YOU」と、このバンドの多様性を体感できる楽曲が続く。「君がいなくたって」は、2016年リリースの自主制作盤『RE YOUTH』の収録曲。普段のライブではあまり演奏されないレアな選曲もまた“定演”ならではだろう。
「改めまして『帰宅部定期演奏会vol.2』ありがとうございます!楽しんでます!“楽しんでますか?”って聞くのが好きじゃないんで、楽しんでまーす!」(ムツムロ)から2度目のMC。万博行った、楽しかった、アニメイトに行けなかった木島の元気がなくなった……とさらにユルいお喋りが続く。
ムツムロ アキラ(vo&g)
ここからもコアな楽曲を連発。まずは木島の16ビートとukicasterの華麗なギタープレイが刺激的に絡み合う「フィードバックを鳴らして」。
木島のドラムソロ(“教員免許持ってます”“アニメイト好きです”“ドラム上手です”とムツムロの合いの手が入る)から始まった「ヒューマンエラー」、〈君に全部を捧げたい〉というフレーズに豊かで複雑な感情を刻むムツムロの歌声に胸を打たれた「天国」。バラエティ豊かな楽曲のボトムを支える、でらしのベースプレイも絶品だ。指弾き、ピック弾き、スラップのすべてが高水準というベーシスト、実はなかなかいないと思う。
木島(ds)
ukicaster(g)
帰宅部限定ライブをこういう大きい会場でやるしかなくなったのは、うれしくもあり、寂しさもあり……というムツムロ。その言葉の背景にあるのはおそらく、どんなに大きいバンドになっても、聴き手となるべく近い距離にいたいという思いだろう。
「見開きページ」からライブは後半へ。“いつもはukicasterが弾くメインのギターリフをムツムロが弾く”というレアな演出にフロアが湧き立つ。〈君が生きてるだけで/涙が出そうだロマンチック〉というフレーズが響き渡った「ピース」も、この日のライブのハイライトのひとつ。
キレイごとと言われてもダサいと言われても、ロックンロールで“あなた”をキラキラと輝かせる。そのマジックもまた、ハンブレッダーズの大きな魅力だ。
「今がいちばんカッコいい状態でいたいなと思ってます。これからもいっぱい新しい曲を書こうと思います。〈昔に戻りたいだなんて一度も思ったことない〉って歌詞に書いたことがあるので、それをやります」(ムツムロ)という気合いの入ったMCからはじまったのは「ヤバすぎるスピード」。そのまま「バタフライエフェクト」に突入し、本編は終了。
アンコールは、帰宅部メンバーからの質問コーナーから。紙に書かれた質問(「こんな木島はイヤだ。
どんな木島?」「この夏やりたいことは何ですか?」「好きな動物は、だれ?」など)にメンバー4人がどんどん答えて、さらに親密な雰囲気が広がる。ここで披露された新曲では「僕は、みんなの孤独のために音楽をやっています」(ムツムロ)という言葉とともに、ミラーボールの眩い光のなかで演奏された。タイトル通り“孤独”をテーマにしたダンスチューンで今後のライブでも大きな役割を果たすことになりそうだ。
最後に「これからも僕たちは変わらず、弱者のための音楽を鳴らすことを誓います」(ムツムロ)という宣言から「弱者の為の騒音を」を放ち、2度目の“定演”はエンディングを迎えた。10月19日(日)には大阪城ホールでバンド初となる主催フェス『GALAXY PARK』を開催(出演/ハンブレッダーズ、岡崎体育、KANA-BOON、キュウソネコカミ、KOTORI、ズーカラデル、SEVENTEEN AGAiN、ナードマグネット、ハルカミライ、マカロニえんぴつ)。ロックバンドへの強すぎる思いを抱えたまま突き進むハンブレッダーズ。今回の“定演”で感じたのは「やっぱりこのバンドは信頼できる」という強い確信だった。
<公演情報>
『ハンブレッダーズ帰宅部定期演奏会vol.2』(ファンクラブ限定公演)
2025年8月14日 東京・豊洲PIT