Apes、THE KEBABS、SEVENTEEN AGAiNが競演 『CLAPPERBOARD』第11弾のオフィシャルレポート到着
Photo:キセキミチコ
“シンクロ”をキーワードに、次のシーンを作り出す期待のニューアーティストが競演する音楽イベント『CLAPPERBOARD –Enjoy the weekend!– vol.11』が3月5日(日)、渋谷WWWで開催された。Apes、THE KEBABS、SEVENTEEN AGAiN の3組を迎えた今回は、爆音が爆音を呼び、観客を熱狂させていく熱い1日となった。
まず登場したのは、ヤブソン(Vo/Gt)を中心に結成した3ピースで、2021年にアルバム『世界は君たちを変えることは出来ない』をリリースしたSEVENTEEN AGAiN。「じゃ、やりまーす」と友人にでも挨拶するような口調でヤブソンはギターをかき鳴らし、「東京2021」でライブはスタートした。ピンスポットの元で、フロアに語りかけ、また問いかけるように歌い出す。人と会えない時期や閉塞した日常を経験した数年を経て、ようやく気兼ねなく友人と会い、またライブでの声出しもOKとなってきた今、この歌はその共に戦ってきた時間を労い、優しく包むように聞こえてくる。
SEVENTEEN AGAiN
挨拶代わりの握手となるようなその曲から、一気にノイジーなギターの音量をあげ、スピード感のあるドラム、ベースとともにシンガロングを響かせる「世界は君たちを変えることは出来ない」では、フロアを湧き立たせる爆音を轟かせる。アンセミックなコーラスに観客はコブシを突きあげ、それが再びバンドの勢いを加速させる。
いきなりのノイジーなサウンドに驚く人をも巻き込んで、「DANCING IN THE TRASH」ではビター&スウィートな80’S的メロディで踊らせ、また「絶対君じゃ嫌なんだ」のキャッチーなパワーポップチューンで切なさをバーストさせる。爆裂なパワーによる力技と、それでいて切なさの琴線にさらりと触れていく繊細さとのバランスが絶妙で、気づけばどんどん会場の熱気が上がっている。朴訥とした風でいて、おそるべしバンドである。
中盤には新曲だという「STAY GOLD」を披露。哀愁のあるメロディが冴え、突き上げたコブシにさらに力がこもる1曲は、これからのライブでの一体感をより濃くしてくれる曲になりそうだ。短いセットゆえ、多くを語るよりも曲をという思いもあっただろう。縁あってこのイベントに呼ばれたことや、「次はApesです。また、お会いしましょう」(ヤブソン)と飄々とした感じで伝えると、ラストに向けてアンサンブルはうねりをあげていく。
「リプレイスメンツ」でぐっとその歌を観客の胸にさしてからの「シュプレヒコール」の爆発感、アグレッシヴなパンクロックの叫びに感情が全解放されたように、フロアの温度もぐっと上がるのが感じられる。さらにまだまだとばかりに汗のほとばしるハードコアナンバー「Don’t Break My Heart」を叩きつけると、観客からワッと歓声があがった。心のど真ん中をてらいなく撃ち抜いていく全身全霊の3人のアンサンブルと、爽快な笑顔に会場は大きな拍手で包まれた。
青白いライトとスモークで柔らかに煙ったステージに登場したのは、坂井玲音(Vo/Gt)、アラユ(Gt)、村尾ケイト(Ba)による東京発バンド、Apes。アラユは準備運動のようにギターを持って飛び跳ね、またドラマーのもとに集まって4人で気合いを入れると、「よろしくお願います」(坂井)の言葉とともに、ギターとビートを鳴らしていく。
Apes
1曲目は2月にリリースしたデジタルシングル「Neighbor」。ギターのリフレインが印象的で、骨太なUKロックをルーツに感じさせるギターオリエンテッドなサウンドと歌心のあるドラマティックなメロディが冴える。続けざまに「Hesitate」で加速するアンサンブルに揺られているうちに、乗せギターふたりの音が密度高く絡み合い、そしてベースとどっしりとしたドラムが織りなす重厚なビートが観客を大きく飲み込んでいく。
一気に深みを帯びていったウォールオブサウンドと強力なストロボライトとが相まって、酩酊感が襲う。ロックバンドとしての引力のあるステージだ。
この日坂井はややハスキーなボーカルでそれもまた一興とでもいうか、個人的には青白い熱量を持った曲にさらなる陰影を加えていく味が出ていたり、ヒリヒリとした感覚もあっていいなという瞬間も多かったが、「今日はこんな声だけど、めちゃくちゃいいライブをするので」と言ってサウンドの馬力をあげていく。その真骨頂と言えたのが、「Sing for you」に続いた、「Goodbye sea」だろう。フィードバックノイズからザクザクとしたギターリフでキャッチーに観客を曲に引っ張り込んだかと思いきや、曲が進むにつれて甘美なシューゲイザーサウンドで痺れさせ、またエクスペリメンタルに曲が広がっていく。“バンド”ならではの呼吸感とドラマ性、導火線に火をつけその日その場限りの間合いや空気感でジリジリとクライマックスへと上り詰めていく緊張感に会場が息を飲むのがわかる。
キャッチーでコンパクトかつわかりやすい曲がもてはやされる世にあって、そこに逆張りするようにギターが咆哮を上げ、ドラム、ベース、歌ともに瞬間、瞬間を音にして編み上げていくタペストリー的なロックサウンドを、堂々とかき鳴らすApes。そしてその頼もしいばかりの音を、観客もまた前のめりで掴み取っていく空間となっていることが嬉しい。
そしてこの双方の熱が味わえるのがライブだからこそだと、改めて感じる。ラスト「Boying」で鳴り響くおおらかなビートに合わせて、観客とさらに濃密な空間を作り、ともに歌い上げていくような高揚感のあるメロディを紡ぐ。そのカタルシスが最高だ。
ロックバンドの楽しさを見せつけたTHE KEBABS
この日のトリを飾ったのは、2018年に活動をスタートしたTHE KEBABS。佐々木亮介(Vo/G/a flood of circle)、新井弘毅(Gt/ex.serial TV drama)、田淵智也(Ba/UNISON SQUARE GARDEN)、鈴木浩之(Ds/ex.ART-SCHOOL)というスーパープレイヤーがそろい踏みのバンドに“期待のニューアーティスト”というのは憚れるが、しかしそれぞれのバックボーンも活かしながらも、ここでしか鳴らせないアンサンブル、ハジけたユーモア、大人の戯れを存分に感じさせるその音楽は、新鮮であり、常に何が起こるのかわからないワクワクにも満ちている。期待、しかないバンドである。
THE KEBABS
盛大な手拍子に迎えられた4人は登場から元気で、「やさしくなりたい」「THE KEBABSのテーマ」、そして「すごいやばい」と、ボリュームを上げて突き進んでいく。佐々木は時にアルコールを嗜みながら、しゃがれ声を響かせ、その両サイドでは歪んだ低音で会場を足元から揺らすようなベースと、華やかな色味をほとばしらせるようなギターがせめぎあっている。
「オーロラソース」では、快活なドラムビートとロックンロールなギターリフでドライブし、またスピードをあげた「枕を変えたら眠れない」では田淵と新井が向き合って、互いにテクニカルな音で押し合いへし合いする。シアトリカルだが、音を重ね合わせる醍醐味を味わい、圧倒させる。ドラマーの目の前で繰り広げられるその光景に思わず笑みが漏れたのだろう、鈴木はエネルギッシュにビートを刻みながらも満面の笑みである。普段のスタジオでもこんな感じなんじゃなかろうかという、4人の空気感が伝わってくるシーンでもある。ロックバンドって、最高だなというのをそのままこの場で見せてくれる、そんなステージだ。
佐々木は、「これでまだ19時でしょ?いかれてるよ」とステージと会場の盛り上がりに笑顔を見せ、「あと3時間くらいやってもいいんじゃない?」とフロアを沸かせる。そして「あとちょっと、ぶち上げて帰ります」と3月15日リリースのEP『幸せにしてくれいーぴー』から、「THE KEBABSを抱きしめて」を披露。すぐさま会場が一体となる、これまたキラーチューンだ。
ここからも怒涛で、「恐竜あらわる」「てんとう虫の夏」、そしてラストは大合唱必至のメロディアスな「うれしいきもち」へと、笑顔を加速させていく。バカバカしいくらいの爆音をかき鳴らし、ギターフレーズまで大合唱したくなるようなキャッチーさで、大団円を迎えた『CLAPPERBOARD -Enjoy the Weekend!- vol.11』。まさに最高の1日の締めくくりだ。
Text:吉羽さおりPhoto:キセキミチコ
<公演情報>
『CLAPPERBOARD -Enjoy the Weekend!- vol.11』
3月5日(日) 東京・渋谷WWW