濱田めぐみ×大貫勇輔が語るミュージカル『メリー・ポピンズ』 三度目の稽古で見えた作品の魅力
(撮影:You Ishii)
1910年のロンドン、バンクス家に舞い降りて来た不思議な力を持つメリー・ポピンズは、煙突掃除屋のバートとともに子供たちに笑顔をもたらし、ちぐはぐだった家族の心を一つに繋いでいく。2018年日本初演、2022年再演で多くの観客を魅了した傑作ファンタジーミュージカルが、待望の再々演へ!メリー・ポピンズ役は濱田めぐみ、笹本玲奈、朝夏まなと、バート役は大貫勇輔、小野田龍之介、上川一哉の各トリプルキャストが実現。この豪華な出演陣においてひときわ信頼を集めているのが、初演からの続投で本作を支え続ける濱田と大貫である。絶賛稽古中に行われた対談取材で明かされたのは、もはや本番!?のクオリティで進む、刺激あふれる稽古風景だ。
三度目の稽古で見えてきた、作品の全体像
――おふたりには三度目となる『メリー・ポピンズ』の稽古場で、今の稽古の感触、三度目にして発見したことなどをお話しいただきたいと思います。
濱田いっぱいあるよね。
大貫うん、再演の時もなんだかんだバタバタしていたんですけど、今回は意外と俯瞰で見られるようになったな、落ち着いてやれているなと。
濱田ヌッキー(大貫)、そんなイメージある。
ドンって落ち着いて構えて、周りをしっかり見て、パン!と出てやっている……そういうスタンスでいるのね、って感じる。
大貫僕としては、再演の際に子どもが生まれたのですが、子どもとの月日を重ねられたことが大きな変化なんですね。それと舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』で一年間、ハリー・ポッター役をやったことがやっぱりものすごく大きな経験になったので、今回はどこか冷静な自分がつねにいて、いろんなものを引いて見られている気がします。新たなメリー・ポビンズの魅力というか、バートってこういう役割だよな、というのをあらためて体感しながら稽古に臨んでいるように感じていますね。
濱田私もまったく一緒。前はドップリとのめり込みながらも客観的なメリー・ポピンズをやっていたんですけど、今回は稽古場全部を俯瞰で見られている……というか、そうならざるを得ないというか。私たち、最初からそんな感じだったよね?初参加の人たちが入ってきて、ある意味指導者の目線じゃないですけど、これはこう言ってあげたほうがいいな、とか。で、自分たちの順番が回ってきても「いや、もう一回やったほうがいいよ」って譲ったりして。
全体的な稽古の流れをふたりして俯瞰して、すごい冷静に見つつ、って感じだった。私たちは久しぶりではあるけれども、やっぱり感覚が戻ってくれば出来る自信があったし。今ヌッキーが言ったように、作品の大きな塊を外からず〜っと眺めて、あ〜なるほどな!と冷静に分析しながら見ている感じがします。
信頼で築かれたメリーとバート
――今のお話にあった、キャラクターの役割についての再発見を教えてください。
大貫バートは出てきた時に、いかに空気をガラッと変えられるか、エネルギーをどれだけ出せるかだと。また狂言回し的なところがあるので、メリーが来ることを知っているのか知らないのか、メリーがこれから何を起こしていくかを知っているのか知らないのか、お客さんが「バート、どっちなんだろう!?」といった意識で見られれば、より楽しめるだろうなと思うんですね。「メリー側?え、バンクス家の家族側?それとも私たち側なの?」といったようにお客さんの頭の中でバートが行き来する、そんな存在になれば飽きさせることなく観ていただけるだろうなと。あとはやっぱりテンポを殺さないことですね。
音楽がかなりループする(繰り返される)ので、芝居でその心地いいループのタイミングを外さないように、いかにそのループを活かしていくかを考えます。台詞の間(ま)の取り方や身体の動きのニュアンスで、お客さんの気持ちをグッと引き込んでいく、バートにはそういう力があるんだなと思うので、そこをどうブラッシュアップできるか。『ハリー・ポッター〜』がやっぱりロンドンの演劇だなと感じるのは、台詞にリズム感があるんですよね。そのリズムを上手くつかむとどんどんシーンが転がっていくし、上手くいかなければベターっと流れていってしまう。その感覚を知ったので、今回も台詞のリズム感をいかにつかむかが肝心だなと思っています。
濱田私、今回初めて感じたことなんですけど、演出家も振付家も歌唱指導の方も、スタッフ全員ひっくるめてメリーの流れに飲み込まれるようにしていかなきゃいけないんだなと思ったんですよ。演出家さえもメリーに巻き込まれていく、それくらいのエネルギーを発しない限り、OKとしないんだなと。つまり稽古であっても、「自分たちさえも楽しませてくれ」ということ(笑)。
メリーが持っているエネルギーや集中力、いわゆる人間離れしたテイストというのは、我々の4、5倍くらいのエネルギーを放出しないと表せないんだなって。
――そこは再演の時には気づいていなかったということでしょうか。
濱田気づいていたけれど、そこまでのエネルギー量は本番で出すものだと思っていたんですよ。今回はそうじゃなく、稽古からもう求められちゃってる(笑)。もちろんいろんな演出をつけてもらうんですけど、いざメリーとして演じる時は、もう頭の先から足の先まで100%メリーでやらないと、お稽古すらも海外のスタッフさんたちは納得したくないんだなとわかった。だから「お稽古だから歌や台詞のあのポイントをちょっと試しでやってみよう」というのが、もう通用しなくて。今更「稽古したものを見せてくれ」とかいうレベルじゃないところを求められてるなって感じた時に、ちょっとうわ〜っとなりました(笑)。
大貫そんなこと考えてるんですか(笑)。
でもそれこそ、稽古でも完璧だったじゃないですか。
濱田それでも後で言われたんだよ。「もっとチェリーブラッサムのふわ〜っとした風に巻き込んでくれ」って。
大貫そうでしたか(笑)。いやもう、めぐさん(濱田)の一発目の通し稽古の時に、キタキタキタキターッ!と思いましたもん。濱田めぐみのメリー・ポピンズが帰ってきたー!コレコレ!これが見たかったよ!と。
――初演、再演とともに歩んで来て、大貫さんが見た濱田メリー、濱田さんが見た大貫バート、それぞれの魅力を教えていただけますか。
大貫めぐさんのメリーはまさしくプラクティカリー・パーフェクトじゃないですか。
今回あらためて思ったのは、「この瞬間にこう思ったからこう動いた」という、全部その役としての理由がある。振付された動きの中でそこにちゃんと理由付けをするって、実はすごく難しいんですよ。するべきことだけど、結構見落としがちというか。なぜそれをやるのかをちゃんと理解している、その説得力。あ〜きっとメリー・ポピンズって本当に鏡の前ではこんな仕草を毎回しているんだろうなと、振付としてやっているのではなく感じ取れるんです。だから隙のないメリー・ポピンズ、完全無欠なメリー・ポピンズって感じです。
濱田ヌッキーは、一番自然体なバートなんですよ。存在のリアリティ、ナチュラルさというのかな。
バートは誰かと関わることが多くて、その動きが自然で素朴で、しっかり大地に足をつけている感じがするんです。私に言ってくれたこととまったく同じことを思っているかも(笑)。
大貫本当ですか!? いいこと聞けました、元気になりました(笑)。嬉しいなあ。
濱田ホントホント。バンクス家のお父さん、ジョージを変えられるのはバートしかいないとメリーも思うから、「バート、よろしくね」と託すんですよね。大貫バートは信頼出来るんです。
「誰でもないあなたのための言葉」を受け取って
――再々演を前に、あらためて本作のどんなところに心惹かれるのか、お伺いしたいと思います。
大貫ありすぎるなあ。まず、父親のジョージはやっぱりこの物語の中心人物だなと思うんですね。僕自身、共感できる部分が多いのもあると思うんですけど。メリーが現れたことで子供たちが少しずつ変化していき、次に母親が変化して、一番最後に父親が変わっていく。今とは違い、物語の背景となる1910年はやっぱり男が大黒柱と呼ばれる時代ですよね。その中で、父親が自らの失敗、選択のミスに気づいて変わっていくこと、それに向き合える強さ、家族への愛ってすごいなと思うんですよ。それが何とも寂しげで懐かしい音楽とともに綴られていって。父親の成長の物語なんだな、と思って見ていますね。
濱田一言で言うと、ポジティブなエネルギーしかないところですね。あとは、“気づく”って奇跡だと思うんですけど、その奇跡を起こす種をいっぱい植え付けて、「あれ!?」っていう気づきを誘発させてくれる、メリーやバートはそういう存在であると思っていて。その“気づき”の点と点が繋がっていくと、行き着く先は、自分がこう生きたかった、なりたかった人間で。ジョージは子供の頃に子守りによってすごく虐げられ、抑圧されたことで、自分の“子供の部分”を塞いでしまったんですよね。それを解き放ったのがメリーであり、子供たちであって、お客様はその流れを追いながら、だんだんに心が開いていくんです。終演後のお客様の顔を見てもわかるし、演者でさえもスッキリするので、この作品の持つ浄化のエネルギーは相当すごいな!と思いますね。気づかぬうちに閉めてしまった心の扉は、自分の力で開けられるんだと。そう気づかされるっていうのかな。
大貫今の話を聞いて思い出したのは「お金の価値というのは金額じゃなく、それをどう使うかによって決まる」というメリーの台詞。本当にそうだなと。考え方次第でどんなことでもできる、そう言っているんだと思うんですよ。そういう気づきが全シーンに入っているんですよね。
濱田すごく巧みに入れられているよね。私たちでも、あ、そういえば!って思うようなところがいまだにあるもんね。もう初演から8年も経っているのに。
大貫「曇り空の下でもメリーがいるから幸せ♪」って歌も、誰と一緒にいるかによって曇り空でも幸せだよ、と言っているわけですよ。台詞に歌詞に「全部考え方次第だよね、何を選択するかで人生はバラ色になるんだよ」ってことがちりばめられている。本当にポジティブなんです。
――ぜひ多くの方に、劇場でポジティブなエネルギーを受け取っていただきたいですね。
大貫僕自身に今起こっているように、初演、再演をご覧になった方も8年前、4年前とは見える景色が変わっていると思います。舞台を観て「こんな変化が自分の中に訪れているんだな」といった楽しさを味わっていただけると思いますし、まだご覧になっていない方はぜひ!これは老若男女が観るべきミュージカルじゃないかと。僕は今回、うちの子どもに初めて見せようと思っています。何て言うかな〜とすごく楽しみですね。
濱田自分のために、自分と対話をするために、この『メリー・ポピンズ』を観に、客席に座ってほしいですね。我々が舞台上で交流したり、投げかけているメッセージって、誰でもないあなたのための言葉なんです。大人数の中のひとりじゃなくて一対一でやっている、そんな気持ちになるから稽古場でも皆さん、のめり込んで見ちゃうんですよね。前回気づいたのは、公演の後半になると、ひとりで観に来られるスーツ姿の男性が増えて来ていたんですよ。ほら〜ジョージが増えているなと(笑)。大貫本当に、今回もきっとそうなると思う!
取材・文:上野紀子撮影:You Ishii
ヘアメイク=(濱田)Yuka Sumimoto /(大貫)荒木由希子
スタイリング=(濱田)Hiroko Ozeki /(大貫)立山功
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※当選後、お送り先メールアドレスについてご連絡頂ける方のみご応募ください。個人情報につきましては、プレゼントの発送以外には使用いたしません。
<公演情報>
ミュージカル『メリー・ポピンズ』
原案:P.L.トラバース
オリジナル音楽 / 歌詞:
リチャード・M・シャーマンロバート・B・シャーマン
脚本:ジュリアン・フェローズ
新規楽曲 / 追加歌詞&音楽:ジョージ・スタイルズアンソニー・ドリュー
共同製作:キャメロン・マッキントッシュ
翻訳:常田景子
訳詞:高橋亜子
【キャスト】
メリー・ポピンズ:濱田めぐみ/笹本玲奈/朝夏まなと(トリプルキャスト)
バート:大貫勇輔/小野田龍之介/上川一哉(トリプルキャスト)
ジョージ・バンクス:小西遼生/福士誠治(Wキャスト)
ウィニフレッド・バンクス:木村花代/知念里奈(Wキャスト)
バードウーマン/ミス・アンドリュー:島田歌穂/樹里咲穂(Wキャスト)
ブーム提督/頭取:コング桑田/安崎求(Wキャスト)
ミセス・ブリル:浦嶋りんこ/久保田磨希(Wキャスト)
ロバートソン・アイ:石川新太/DION(Wキャスト)
ジェーン・バンクス:市川桃子/久住星空/辻乃之花/室岡星愛(五十音順)
マイケル・バンクス:張 浩一/中西縁/中込佑玖/深澤統(五十音順)
ノース・ブルック:石川剛
ミセス・コリー:小島亜莉沙
ケイティ・ナナ:福満美帆
ヴォン・ハスラー:小林遼介
ネーレウス:高橋慈生
ミス・ラーク:吉田玲菜
ヴァレンタイン:東間一貴
<アンサンブル>
伊藤稚菜、工藤彩、齋藤信吾、高瀬育海、高田実那、高山裕生、水島渓
岩下貴史、小形さくら、熊澤沙穂、今野晶乃、
咲良、清水錬、白山博基、照井裕隆、中原彩月、
長澤仙明、西村実莉、廣瀬喜一、MAOTO、吉岡慈夢
【プレビュー公演】
2026年3月21日(土)~3月27日(金)
会場:東急シアターオーブ
【東京公演】
2026年3月28日(土)~5月9日(土)
会場:東急シアターオーブ
【大阪公演】
2026年5月21日(木)~6月6日(土)
会場:梅田芸術劇場メインホール
関連リンク
チケット情報:
https://w.pia.jp/t/marypoppins/(https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2563017&afid=P66)
公式サイト:
https://marypoppins2026.jp/index.html/